販促しなくて良いって楽
アネッサが操縦桿を握り敵を見据えた直後、ヴァルクスの機体が青白く輝きだす。どうやら機体出力が上昇しているようだ。
(……ヴァルクス、動き出すみたいです!)
ルティシアがそう叫んだ直後、ヴァルクスはすさまじい勢いで戦士の頂の斜面を駆け下り、エクスブレイザーへの下へと向かう。その道中で、ヴァルクスの巨大な砲身がうなりをあげて、その砲身が赤い光を発し始める。直後、備え付けられた砲からまばゆいビームが放たれる。次の瞬間、駆け抜けた熱線がスケルトンの群れを焼き尽くし、爆発と共に骨片が四方に飛び散った。砲撃の余波で地面が抉れ、砂塵が舞い上がる。その砂塵を吹き飛ばすように旋風を巻き起こしながらヴァルクスは駆け抜ける。さらにヴァルクスは脚の関節を曲げ、身体を一瞬深く沈みこませたかと思うと勢いよく跳躍する。
(せ……戦車が跳んだぁ!?)
ヴァルクスの想定外の挙動にユウは素っ頓狂な叫びをあげる。しかし、そんなユウの叫びなど知らないと言わんばかりにヴァルクスは空中でバーニアらしきものをふかし始め、そのまま滑空する。そして、空中から地面にいる敵に対してミサイルや砲撃を叩き込んでいく。
(た……戦い方がアーマード〇ア!?)
ユウはどこか見覚えのあるヴァルクスの戦法に思わず叫び声をあげてしまう。そんなユウの叫びを他所にヴァルクスはさらに攻撃を続ける。今度はビーム砲をアンデッドドゥーマに向けて発射する。二発目のビームはアンデッドドゥーマに直撃するが、相手のドゥーマ細胞の一部を吹き飛ばす程度だった。
(ヴァルクス……高性能だけど、流石に攻撃力はエクスブレイザーほどじゃないか……)
ユウがそう呟くと、エクスが檄を飛ばす。
(ああ。だが、今の攻撃で敵の注意と拘束が外れた!今だっ!)
(了解です!)
ユウがそう叫ぶと、エクスブレイザーはスケルトン達の緩んだ拘束を振り切り、立ち上がる。そして、一旦跳び退り間合いを取り、アンデッドドゥーマとスケルトン達と対峙する。そんなエクスブレイザーの横に、ヴァルクスが停止する。
(なんとか助かりましたね……情けは人の為ならずとはよく言ったもんだ)
そんなことを言いながらユウは一人感心する。
(……けど……どうします?)
ユウはエクスに問う。とりあえずアネッサの助力で危機的状況は脱したが、多勢に無勢であることは相変わらずなうえ、時間的な限界ももう目の前だ。なにか打開の策は無いかとユウなりに考えたが一向に思いつかず、エクスに問いかける。
(そういうことであれば……あれをするか)
(……あれ?)
一体何をするつもりなのか分からずユウは疑問の声を上げた。
(んもう、嫌ですねぇユウさんったら〜。人がロボと車型メカが一体ずつ……こんなシチュエーションでアレと言ったら相場は決まってるじゃないですか〜)
ルティシアはユウを煽る。
(あー、ハイハイあれですか、アレ……って出来るんです?)
(もちろんだ)
納得しつつも挙げたユウの疑問にエクスは自信に溢れた様子で応えた。
――一方、ヴァルクスのコクピットの中でアネッサは驚きの声を漏らしていた。
「神の戦車……これほどの力とは……」
アネッサは先ほどのスケルトンの一団と、巨大なアンデッドを吹き飛ばしたヴァルクスの攻撃を思い出す。しかし、その高揚感に浸りすぎず、アネッサは冷静に戦況を分析する。
「しかし、スケルトンはともかく、あの巨大なアンデッドにはこちらの攻撃があまり聞いていないようだが……どうすれば……。何かそちらに策はあるのか、ユウ……?」
そういいながらアネッサはエクスブレイザーの方へと目線を向ける。すると丁度、エクスブレイザーが掌をヴァルクスの方へと向けていた。
「……?一体、何をするつもりなんだ?」
(アダプションビーム!)
ユウはエクスの言う通りに技名を叫ぶ。直後、エクスブレイザーの掌から眩い光の波動のようなものが迸り、ヴァルクスを包んでゆく。
「な、なんだ!?」
エクスブレイザーから発せられた光線を受けたことにアネッサは思わず驚きの声を上げる。直後、アダプションビームを受けたヴァルクスは、その機体からまばゆい白い光を発しはじめる。そして、ヴァルクスのコクピットのモニターには再び大量のメッセージが表示され始める。
「なんだ、この大量のメッセージは……合体?」
アネッサはメッセージを何とか読み取るが、合体という聞きなれない単語に首を傾げる。どうやらメッセージは『合体』という行為の概要と、その同意許可を求めるものであった。
「この状況において私に許可を求める……ということは、この『合体』をすることで何か意味があることが起きる……ということか……」
そして、その可否の判断が自分にゆだねられている。アネッサは直後、迷わずにコンソールを操作し『合体を許可する』を選択する。
「何をするのかはわからんが……この状況ならこちら一択だろう!」
直後『許諾完了』というメッセージがディスプレイに表示された。これから一体何が起きるのかと、アネッサはディスプレイの隅から隅まで目を走らせ始めた。
「ここは……」
――気が付けばユウは不思議な空間の中に立っていた。右手にはエクストラスターが握られている。
ユウは呟きながら周囲を見回す。最初にルティシアやエクスと会話した空間とどことなく似ている。そんなことを思っていると、その空間の中にルティシアが現れる。さらによく見ると、エクスも自身を見下ろしている。
「なんです、これは?」
前回の戦いとは異なる様相にユウは困惑する。
「いえ、折角ですからちょっと演出面も強化しようかと思いまして。ホラ、よくあるじゃないですか、インナースペースとか」
「ああ、ウルトラ的なアレですか……」
そんなことを言いながらあきれ顔をするユウの左手の掌にどこからともなく温かい光が集まってくる。
「これは……」
驚いたユウが左手の掌を見ると、光が凝縮されて交差細長い筒のようなものに変わる。筒には交差すると剣と人の腕を交差させたようなエンブレムがあしらわれている。
「さあ、ユウさん!その筒……クラスカプセルをエクストラスターの柄に下のスロットから装填してください!」
「ああ、はい」
ユウはルティシアに言われるがまま、クラスカプセルをエクストラスターに装填する。
「それからトリガーを引いてください!」
「合点」
ユウはルティシアの声に応じてトリガーを引く。
『クラスチェンジ!エクスブレイザー!バトルマスター!』
――直後、エクストラスターからフォームチェンジ用のものと思しき音声が鳴り響いた。
「あ、クラスチェンジってもしかして……」
ユウがそんなことを言っていると、ヴァルクスが一際強い光を発し始めた。
というわけで強化フォーム登場回です。
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