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急に人の足元に穴をあけると危ない

 アンデッドドゥーマが杖を頭上に掲げる。すると、杖の先端から立ち込めた黒い瘴気のようなものが上空で鎌のような形となる。そして勢いよくエクスブレイザーへと振り下ろされる。

(だあぁぁぁぁ!今度は魔法まで増えたぁっ!?)

 エクスブレイザーは勢いよく側転をし、振り下ろされた鎌をかわすと、さらにバク転をし間合いを離す。そんなエクスブレイザーを逃すまいと、スケルトンや巨大な鎌が追いかけてくる。

(ああもう次から次へと……!)

 その一方でアンデッドドゥーマが再び杖を掲げる。再び黒い瘴気による鎌が追加で形成される。

(まずいですよ、ユウさん!このままじゃ本当にジリ貧です!)

 戦況の悪さにルティシアがらしからぬ悲鳴をあげる。

(分かってますけど……げげっ……)

 直後、ユウも悲鳴をあげる。エクスブレイザーの胸部のエナジークリスタルが点滅を始める。どうやら、戦える残り時間はそれほど長くないらしい。

(まさかドゥーマ細胞に感染した者がこの世界の魔法まで駆使してくるとはな……どうする、ユウ)

 エクスに問われ、ユウは相手の攻撃を回避しながら考え込む。

(ああもう、どうしましょうかね……)

 ユウはにっちもさっちもいかない状態に内心でため息を漏らす。

(でもまぁ……あきらめるわけにはいきませんからね)

(ああ、そうだな)

 ユウは、エクスブレイザーは敵の大群を見据える。そして、まだ消えぬユウの戦う意思にエクスは応える。


 アネッサは剣を構え、呼吸を整える。そして、現在の彼我の実力差を冷静に推し量る。

(単純な技量では、自分はまだ将軍には及ばない……)

 そしてこれまでの戦いを冷静に振り返る。

(そして、私の剣筋は全て将軍に読まれている……)

 かつて、何度も将軍と手合わせをした日々を思い出す。

(あれだけやりあえば、否が応でも向こうも覚えるか……)

 そう言ってアネッサは小さく笑う。

(だが、勝機はあるはずだ……)

 再び表情を引き締め、バルトーを見据えながらも彼女は脳内で自身の勝ち筋を探る。


 そして、目を閉じ、一度大きく息を吸い、吐き出す。そして緩やかに腰を落とす。アネッサが何かを仕掛けようとしてることを察したルークやティキ、観客たちは息を呑む。静寂に包まれる神殿の中で、アネッサの深い呼吸の音が静かに響く。


「……将軍……」

 直後、アネッサは目を見開く。

 

「参ります!!」

 

 そのアネッサの声にバルトーも力強く応える。

「来いっ!お前の力の全てを見せてみろっ!」


 その声を受けるや否や、アネッサは電光の如くバルトーへ突進する。そして目にもとまらぬ一撃をバルトーへと叩きつける。そして、甲高い剣同士がぶつかりあう金属音が鳴り響く。バルト―はやはり、アネッサの一撃を剣で受け止めていた。しかし、アネッサは止まらない。

「はああああああああああ!」

 アネッサは再び高速で移動しながら何度も攻撃を叩き込む。しかし、先ほどと同様に全てそれらの攻撃は防がれる。


(それじゃさっきと同じだ……どうするつもりだ、アネッサ!?)

 観戦しているルークは思わず強く手を握る。


(アネッサさん……!父さん……!)

 それは、ティキも同様だった。


「まだまだぁ!」

 アネッサはそう叫ぶと、自身の攻撃の勢いのままにバルト―の横を駆け抜け、そのままバルトーに対して半身になり、剣を握っていた右手を後ろにながら体勢を沈める。


(高速の連撃で攪乱した後、自身の身体で隠した剣で攻撃タイミングを読ませないようにしながら必殺の一撃を放つつもりか……だがっ!)

 バルト―はアネッサの策を看破する。そして、アネッサの所作・呼吸をよく観察する。そこから予測される攻撃……つまり渾身の突きの軌道、そしてタイミングに合わせて防御のための剣を構える。そんなバルトーに再びアネッサは高速で突進する。

「おおおおおおおおおおっ!」

 裂帛の気合とともに迫りくるアネッサ。その一撃を受け止めよとアネッサを待ち構えるバルト―。


「!?」


 しかし直後、バルト―の想定していなかった事態が起こる。バルト―の防御のために構えた剣に手ごたえが無い。直後、アネッサが攻撃をすることなく突進し続け、バルト―の身体をすり抜けていくのを視認する。


(……私が霊体であることを利用したフェイント!?しかし……剣はどこだ!?)

 

 一瞬硬直するバルト―。

 ――何故アネッサは攻撃をしなかったのか。

 ――アネッサが使っていた剣はどこに行ったのか。

 一体何が起こったのかわからずバルトーは困惑する。


 だが、その答えはすぐに提示されることとなる。バルト―の頭上からアネッサの目の前に剣が降ってくる。それをアネッサはその手に掴む。その剣は確かに先ほどまでアネッサが握っていたものだった。


(私の読みを外すために、連撃の最中で剣を上空に投げ、持っているふりをしていたということか!)


 バルト―は咄嗟にアネッサが弄した策を理解し、防御の体勢を取ろうとした。しかし、一瞬の戸惑いによって生まれた動作の遅れが致命的な隙を生んでいた。アネッサの一撃が防御の体勢が整っていないバルト―の剣に痛烈な一撃を叩き込む。

 直後、甲高い金属音があたりに鳴り響く。そして、バルト―の剣が宙に舞い、そして離れたところで地面に突き刺さる。

 アネッサはバルト―に剣先を突き付け、そして笑う。


「私の勝ちですね」

「そのようだな」


 バルト―もつられて笑う。


 そんなアネッサ達を見てルークが唖然としながらも言葉を発する。

「あ……アネッサが勝ったぁぁぁぁぁ!」

「すごいや、アネッサさんも、父さんも……!」

 ティキもまた目を輝かせて二人に賞賛の言葉を贈る。それをトリガーに神殿中から歓声があがった。

 そんな歓声を受けながら、バルトーはアネッサの肩を叩く。

「よくやった。よくぞここまでたどり着いた、アネッサ。一時の師として、お前に剣を教えたことを誇りに思う」

「将軍……ありがとうございます」

 アネッサはそういってバルト―の顔を見る。もはやその目線には迷いは一遍もない。

「これで、神の戦車の所有者はお前となった。この世界を守るため、その力を役立てると良い」

「はい!」

 アネッサは力強く頷く。

 

 直後、突如としてアネッサの足元に穴が開く。

「え?」

 そのまま足場が無くなったアネッサは穴の中へと吸い込まれていく。

「えええええええええ!?」

 アネッサの悲鳴もそのまま穴の中に吸い込まれて遠くなっていく。

 唐突の事態に理解が追い付かず、ティキとルークも顔を見合わせる。


「「え?」」


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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