表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/85

脱がせたからってうれしいとは限らない

「あの巨人は……王都でも見た!」

 アネッサが驚きの声を上げる。しかし、彼女の表情には何かに納得したような色があった。

「やはり、彼が関係しているの?」

 アネッサはリーシェルトの問いに軽く笑う。

「どうだろうな。本人は否定すると思うが?」

「そう」

 アネッサの回答にリーシェルト変わらない。だが、ほぼ回答したのと変わらないアネッサの態度にどこか呆れのような色が混じっている。


 そんな会話を他所にエクスブレイザーは巨大ゾンビと対峙する。

(今からあの敵をアンデッドドゥーマと呼称します。速やかに排除しましょう)

(了解!)

 ユウは勢いよく返事をする。しかし、そこでふと一瞬考えこむ。

(アレ、素手でめちゃくちゃ触りに行きたくないですね、ビジュアル的に……)

(あー……)

 ユウの正直な感想にルティシアは納得する。

(光線技で行こう)

(そうしましょう)

 ユウはエクスの提案に乗り、構えを取る。エクスブレイザーの構えられた右手のエネルギー発振器官が青白く発光する。

(いっけぇぇぇぇ!エクシウムキャノン!)

 直後、大量のエネルギーの奔流がエクスブレイザーの右手から迸り、アンデッドドゥーマに直撃する。そして、アンデッドドゥーマは大爆発を起こし、大量の煙が巻き起こる。

(やったか!?は言っちゃだめですよ!絶対だめですよ!?)

 ルティシアに言われてユウは苦笑する。

(そんなありきたりなフラグ立てるわけないじゃないですか、はははやだなぁ)

(フラグ?)

 ユウは苦笑し、エクスは首を傾げる。そんなやりとりをしているをしていると、徐々に煙が晴れて視界が露になる。

 ――そして、視界が晴れた先には、ドゥーマ細胞を根こそぎ吹き飛ばされた巨大スケルトンの姿があった。

(ぬ、脱げてる……!)

 どうやら、ダメージは全てドゥーマ細胞の方で受けきったらしい。ただ、その衝撃のせいか、神殿よりも少し離れた位置に吹き飛ばされている。

(あ、見てください、ユウさん!)

 ルティシアがユウに注意を促す。直後、わずかに残っていたドゥーマ細胞が急速に大量増殖し、アンデッドドゥーマを再びゾンビのような姿に変えていく。

(フラグ関係なく駄目なもんは駄目かぁ……)

 ユウはそう言ってため息を漏らした。


 アネッサはそんな戦いの序幕を確認してから、改めてバルト―の方へと向き直る。

「将軍……どうやら、あの巨人がこの場を守ってくれるようです」

 そう言ってアネッサは剣を構える。

「なるほど。アレが彼のいう味方……というわけか。ならば……」

 バルト―は剣を構える。

「ええ……」

 アネッサはバルト―の言葉に応じて剣を構える。そして、周囲の人間たちは戦いの再開を察して距離を取る。バルトーは剣を構えたまま、叫ぶ。

「さあ、この戦いで己の迷いに決着をつけてみせよ……」

「はいっ!」

 アネッサは応じると、今度は初手から高速で移動しながらの斬撃を立て続けにバルトーへと放つ。しかし、バルトーは脚を一切動かすことなく、手にした剣で全ての攻撃を裁く。

(……やはり防御が厚い……!どうするか……!)

 打開策を脳内で検討しながらアネッサはバルトーへの攻めを続ける。

(……ふむ、心に迷いがあるとはいえ、斬撃のキレは昔以上。私が死んだあと、どれほどの研鑽を積み、激闘を潜り抜けたのか……)

 バルト―はアネッサの成長を実感し、感嘆する。

「これならどうですっ!はあああああああああっ!」

 アネッサはスピード重視の連撃では埒が明かないことを悟り、一度距離を取る。そして、構え、地を蹴り、自身の力と速度を全て乗せた突き技を放つ。目にもとまらぬその速さに、その場にいたルークですらも一瞬アネッサの姿を見失う。

「!?」

 直後、甲高い金属同士がぶつかり合う音が神殿内に響き渡る。気が付けばバルトーは両手で剣を握り、アネッサの渾身の一撃を受け止めていた。

「ふむ……なかなかやるな……」

 バルトーはアネッサを一瞥すると、にやりと笑う。それは、弟子の成長を喜ぶ師匠の顔というよりは、強敵を前にしたことを歓ぶ戦士の顔であった。


 その頃、エクスブレイザーと対峙しているアンデッドドゥーマにはさらなる異変が起こっていた。

(……!?なんだっ!)

 アンデッドドゥーマは気が付けば、ローブのようなものを纏い、杖を携えていた。その変化の意味が分からず、ユウは困惑の声を上げる。

 直後、アンデッドドゥーマは手にした杖を掲げる。杖の先から周辺の大地へと瘴気が迸る。直後、地面から大量の巨大スケルトンが現れ始める。

(げげっ!?数が増えた……!)

(どうやらあの巨大スケルトン、ヴェンフェルトという男の術によりアンデッドの中でも上位の存在へと進化したようですね……。グールロードやリッチのドゥーマ細胞による強化版という位置づけになります。ユウさん、気を付けてください!)

 ルティシアは悲鳴をあげるユウに注意を促す。 

(気をつけろと言われても……)

 困惑するユウに構わず、大量の巨大スケルトンが剣を持ってエクスブレイザーに襲い掛かってくる。

(だあぁぁぁっ!?来やがった!!)

 エクスブレイザーは次々と襲い掛かってくる巨大スケルトンの斬撃を身をひねり、いなし、かわしていく。

(このぉ!)

 エクスブレイザーは右手にいるスケルトンに手刀で反撃をし、さらに他のスケルトンにはブレイズスラッシュで反撃する。反撃を受けたスケルトン達は次々に粉砕されていく。

(……お、案外脆い?)

 ユウは拍子抜けした様子で漏らす。しかし、そんなユウにエクスが注意を促す。

(油断するな、ユウ!)

 直後、粉砕したはずのスケルトンが再生し、それどころか新手のスケルトンが地面から這い出してくる。

(嘘だろ……)

 目の前の事態にユウは唖然とする。しかし、すぐに気を取り直す。

(だったら……!)

 ユウは空中へと跳びあがり、そこからブレイズスラッシュ、そしてエクストリウムキャノンを勢いよく連発する。それを受けて地面にまたも大量の煙が上がる。

(これだけ攻撃したら……)

 ユウが肩で息をしながらつぶやく。

 ――直後、煙が晴れる。

(おいおいおいおい……勘弁してくれよ……)

 そこには、健在のアンデッド・ドゥーマと、さらに数が増えたスケルトン達がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ