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ネットミーム知ってるけど原典ちゃんと読んだかどうかは人によりけり

 再び鳴り響いた鐘の音に、何事かとユウ達は周囲を見回す。そんな彼らの疑問に答えるかのように村長がグラウンドの中心に立つ。そして、一度大きく息を吸い込むとすさまじい声量で叫ぶ。


「地上最強の戦士おとこが見たいかー!!」


 それを聞いた瞬間、ユウは思わずずっこける。そんなユウと対照的に周囲の観客たちはすさまじい熱量の歓声を上げる。

「ど、どうした、ユウ!?」

 村長が叫んだだけでユウがずっこけた理由が理解できず、アネッサは思わず声を上げる。

「……あはははは、イヤ、なんでもないんです……なんでも……」

(なんでもありそうですねぇ!)

 明らかにユウの混乱ぶりを楽しんでいる色のルティシアの思念が飛んでくる。ルティシアが何故、祭りの詳細をここまで自身に告げなかったのかを察したユウは思わず彼女に噛みつくかのような思念を飛ばす。

(そらあるわ!大いにあるわ!なんで異世界の慰霊の祭りが出だしから東京の地下闘技場のアングラのトーナメントみたいな出だしなんですか!?)

(いいじゃないですか。どこかの海王だって異世界転生する時代です。異世界でどっかで見たようなイベントあったっていいじゃないですか)

 ルティシアの楽しそうな様子とは対照的にユウはげんなりとした顔で虚空を見つめる。

(俺の異世界転生ってこんなんばっか……)


「これより、全戦士入場!」

 定まらないユウの視線とは対照的な突き抜けるような村長の声が闘技場に響き渡る。それを受けてルティシアはユウを促す。

(まぁまぁ、それよりグラウンドの方、見てくださいよ。始まりますよ)

(始まる……どんなトンチキな展開が……)

 それを受けて、既にツッコむ気力が失せかけているユウは死んだ魚のような目線をグラウンド方へと向ける。すると、グラウンドに何人もの戦士が現れる。

「あの人たち……さっきの」

 グラウンドに現れた見覚えのある人物達にティキは思わず声を上げる。

「ああ……」

 アネッサも困惑気味に同意する。グラウンドにいる戦士達は、その誰もが先ほど神殿の入り口で集まり気炎を上げていた者達だ。


 一体、これから何が始まろうというのか?その疑問を押し流すかのように村長が声を上げる。


「龍殺しは生きていた!! 更なる研鑚を積み人間神器が甦った!!! 剣神!! ルークだァ――――!!!」

 村長の紹介を受けたルークが己の剣を天に掲げる。

「……なにをやっているんだ、あいつは」

 明らかに異様な祭りの雰囲気にノリノリになっているルークにアネッサはため息を漏らす。

(ちょっとちょっとちょっと!これ、元ネタみたいに人数分紹介するんですか!?)

 やはりどこかで見たようなノリで戦士の紹介を始めた村長に困惑し、ユウはルティシアに説明を求める。

(そりゃそうでしょ)

(そんなよく知らない奴ら三十二人紹介されても困るんですよ!大体、ガチで三十二人でトーナメントとか描写されても困るんですよ!そういうジャンルじゃないでしょこれ!?)

(大丈夫ですよ、まず紹介するのは十六人ですから)

(いや……人数の問題じゃ……って十六?)

 ルティシアの説明に疑問が脳裏を過ったが、その時には気が付けば村長の選手紹介は終わっていた。確かに想定よりも短い時間で選手の紹介が終わっている。とりあえずこのトンチキな展開が一刻も早く終わってほしいと思っていたユウは、冒頭の選手紹介だけでも早く終わってくれそうな状況に安堵のため息を漏らす。

(さあ、ここからですよ)

(え……まだ何かあるんですか?)

 しかし、ルティシアの一言から、さらにズレた展開がこの後押し寄せてくるらしい。そのことを言われたユウの表情は曇る。それに呼応するかのように、村の戦士達に対峙するかのように、突如十六本の光の柱が立ち上り始める。

「なんだあれは……」

 アネッサは驚きの声を上げる。しかし、その声をかき消すかのように周囲の歓声が大きくなる。

(みんなやたら興奮している……あれって一体……)

 ユウがそんなことを考えていると、村長が歓声の中でもかき消えないどでかい声をあげる。


「加えて彼らに対峙する超豪華な英雄の霊、十六名を御用意致しました!」


 直後、光の柱の中から一人ずつ戦士達が現れる。

「え……霊?」

 慰霊の祭りとは聞いていたが、本当に霊を呼び出すとは想定していなかったユウは呆気にとられる。ユウはちらりとアネッサのを見る。彼女はぽかんと口を開けて目の前の光景を見ている。どうやら心境的には自分と近いらしい。目の前で繰り広げられる光景をいまいち咀嚼しきれないままではあるが、村長による霊の紹介が始まる。

 

「剣術の本場は今やヅォーイにある!!オレを驚かせる生きている奴はいないのか!!デューク・ゴールドだ!!!」


(……いや、だからこのノリで良く知らん奴追加で十六人紹介されても困るんだって!!)

(まあまあ、こういうのは楽しんだもん勝ちですよー)

(……いや、なんか事情もある人達いるからいまいち乗り切れないんですけど……)

 ルティシアからのコメントに複雑な表情をしつつ、ユウはアネッサとティキの方を見る。二人とも先ほどから目の前で展開される事態に理解が追い付いていないことを表情が物語っている。しかし、その直後、ティキの表情が変わる。


「偉大な戦士が還ってきたッ あの世へ行っていたンだッ ジェネラルッッ 俺達は君を待っていたッッッ バルト―・グランツの登場だ――――――――ッ」

 そのアナウンスと共に光の柱から新たな戦士が現れる。身の丈は二メートルほどはあろうか。その体躯の長さに応じたしっかりとした筋肉がついている。自身の強さを示すかのように、その戦士には自信に満ち溢れた精悍な顔立ちをしている。そして、顔に生えている整えられた髭が、威風を発している。

「あっ……あっ……」

 そんな彼を見てティキは言葉を失っている。そして、ユウも先ほど村長が読み上げた名前に聞き覚えがあった。

「バルト―って……ティキの……」

 ティキはユウの言いかけた言葉の結論を引き取る。

「と、父さん……!」

(……マジで本人出てくるのかよ……)


 

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