ギルド
民間組織である冒険者ギルドを、違和感なく存在させるための歴史的根拠を考えてみよう! 存在する以上、説得力は必要だからね。
とはいえこれは、非常に難しいんだよ。なにせ超絶天才富樫先生もハンター協会設立についてや、どうやってあれほどの特権を得る組織に成り上がったのかを描いていない。
……たぶん、それほど面白くは描けないだろうしクソ長くなるから、描いてないだけだろうけどね。政治色が強くなりそう。世代交代を描かなきゃいけないし、その度にキャラは増えるだろうし、年号も飛び出してくるだろうし、対抗勢力や政治的圧力も登場するはず。そして内部分裂に利権に汚職に……いやぁー大変そぉー。。
……考えるの辞めない? あ、辞めないか。。そっか。。
まず、権威と信頼を得るためには、歴史が長くなきゃいけないよね。
魔物という存在がいる世界なら「国」という概念よりも先に「対魔物の武力集団」が居てもおかしくない。人間はサルやアリと同じく、長を持ち社会を構築するタイプの生き物だから、当然強い者がリーダーとなり集団の指揮をとる。人間は賢いので住処を防壁で囲み、その周辺にいる魔物を狩って人々を守る。それがギルドの起源……とはならんやろ。どう考えても「村」の典型であり「国」の起源よな。
やはりある程度、文明や国が発展して「自由」が認められてからでないと「冒険者(放浪者、自由人、無職、下手したら犯罪者)」の「ギルド(組合)」という、わけわからん組織が出来るとは思えない。もしかしたら建国のドサクサで作れないか? とも思ったけど、いくら「村の自治」を大義名分にしたところで、これから「国」を作り「法」で纏めようとしている組織が、武装した謎人間を放置するほど馬鹿な訳ない。そもそも魔物の居る世界において「国」の役割は「民の安全確保」でなければ建国すら無理だろ。重税かけてでも兵士を雇って派出所作るわ。
んー……建国してから数十年後に魔物の大量繁殖が起こり、無能な二世領主が、国からの援助金を横領してクソみたいな対策しかしなかった。無能国家は「金出したんだからええやろ。それぞれの領地で対処してやー」的な感じでいくか。監査もなしのザル国家って事にしよ。
だけど金無くなってきたな。このままじゃ国がぶっつぶれるで。って事で税金とるよー。整備された道歩くと税金とるよ。小麦挽くと税金とるよ。住民税のほかに、農地の広さに応じて税金とったろ。雇ってる奴隷の数に応じて税金とったろ。あ、君、生きてるね? 息してるね? 税金とったろ……と、こんな感じでどこかの国みたいに稼いだ分の48パーセントは国にとられるって事にしよう。
そうなると当然国民は怒り心頭よ。どうなってんだゴルァ! こちとら魔物の被害で年5万人死んどんねん! 国民の一割弱やぞ! そのくせ税金ばっか取りよってからに! 怒るでしかし! 国には任せてられへん! 自警団作るで! という感じで、国に反旗を翻すというか、身を守る事を目的とした団体が生まれても不思議ではないよね。それがブームとなり同時多発的に各地で起こり、国家もそれを黙認するしか無い。
それが冒険者ギルドの起源で、その後は「この国の夜明けですばい!」的なカリスマが現れ、薩長同盟ヨロシク、各地の団体が統合されていき、ひとつの大きな民間組織となっていった。
他国間における組織の統合は、しらねぇよ! もう疲れたわ! 文化も歴史も違うにも関わらず、いろんな国で似たような事が起こったんじゃね? それでギルド同士が国を超えてつながっていったんじゃね? いつの間にか強い勢力になってて、国民からの信頼も厚く、エリートギルド出身者が国政に関与出来るようになり、国といえども安易に手出し出来ないくらいになったんじゃね? 聖職者とは仲が悪いんじゃね?
はい。という事で見事に歴史的な違和感は払拭されましたね。続いては巨大組織を運用する資金についてですが、薬草を取りに行っていくらのお金が貰えるのだろう。現代でいう所の、薬の材料みたいなもんでしょ? なかなか高く売れるんじゃない? あ、でも賢人がいれば、いずれ栽培されるだろうな。というか、薬草だって無限に生えてる訳じゃないし、まずは栽培を試みるだろうな。その方が国益になるしな。
じゃあ魔物刈りや! 森にほど近い村が襲われた! 村中からお金集めてギルドに依頼してきたで! でも、そう頻繁にある訳ないよな。それに頻繁に襲われるなら国が黙ってる訳ないもんな。税金とっといて黙ってたら黙ってたで、大問題やしな。正規軍派遣されるやで。アルソック(民間)より自衛隊のほうが強いのは明らかやしね。
……じゃあ犯罪者! 賞金首! 盗賊狩りや! 憲兵に引き渡せばいくらか貰えるで! って、それは国が指名手配してる訳で、わざわざギルド介す必要なくね? 冒険者からすれば、無駄にマージンとられるだけじゃね? じゃあ直接憲兵に突出すやで。
身元不明でも受け入れ、教育なしで現場投入というガバ運営のおかげで組織はデカくなったけど、とてもではないが全員分の仕事はねぇな。仕事の取り合いやな。
……暴動か?
……もういいわ! 資金足りなくなったら国政に関与してるエリートギルド出身者が「あぁー戦争してぇーなぁー」とか宣って国を脅し金を引っばってくんねやろ! 人間、チカラを持ったらロクな事にならへんな! 利益追求ではなく組織を存続させる事が目的となった不自然な組織なんて、いずれぶっつぶれるわ!
うーんワグネル!
はい。えー、どう考えても歪で生産性が無いので、いずれ潰れます。これがナガスの結論です。
横の繋がりが無く、町単位、村単位、領地単位でほそぼそと運営するなら可能かも知れないけど、それじゃ権威も特権も得られないだろうね。冒険者同士の仕事の取り合いになるだろうし、常に貧乏。治安悪いだろうなぁ。街の嫌われ者になりそう。
ハンター協会って多大な影響力を持ってる超巨大民間組織だけど、メンバーは超絶厳選してるし、総勢300人も居ないんだよ。合格すれば悪魔でもハンターになれるとはいっても、自浄効果のある十か条を制定してる。それがどういう事なのか、考えてみたほうがいいよね。
転生してきた、どこの馬の骨とも知れん奴を囲うのは、ソイツがどれほど強くても辞めたほうがいい。組織の威厳に関わるよ。ひとりを優遇すると不公平感が生まれて崩壊していくのが目に見える。せめて身元だけはハッキリさせておかないとね。
天国大魔境で主人公二人が街に立ち寄った描写があったんだけど、身分を明かして帳簿に登録されなきゃ買い物も出来ないんだよ。そういうシステム作りは武器を携帯出来る世界観で治安上、絶対に必要。
ギルドが身分を保証するんじゃなくて、ギルドに入るために身分を確認する必要があるんだからね? 罪人匿う事になるかも知れんしさ。
とはいえこういった世界は大概、主人公(というか作者)に都合よく作られているもんだよね。「納得」よりも「快楽」が優先される。仕方ない。




