表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/78

女神

「知っている」とはなんだ? それは「理解している」とはどう違う?

痛みや感傷、好意。意思。そして同調。それらを私は「知っている」が、どうしても「理解している」と言い切れない。


アイツは人間の世界を視ながら、こう言った。

「どうやら俺は、アイツの事が気になるようだ」

アイツが視ていたものは、かつてアイツが送り込んだ男だった。

伸ばしっぱなしの、泥にまみれた髪と髭。黒ずんだ肌に深く刻まれた肋の影。薄い布を一枚だけ羽織ったその姿は、かつての英雄と呼ぶにはあまりにも惨めである。

与えられた能力は、決して間違う事のない、完璧な細胞分裂。そのマジナイ(呪)により死ぬ事さえ叶わぬ男は、地の上で大の字に寝転がり、死ぬことはないのに死んだように動かない。

とうの昔に見放していた筈のその男を、アイツはただ、見つめている。

「俺はアイツの事ならなんでも知っている。しかし、理解が出来ていない。なんなんだろうな、これは」

アイツが最後に言い残した言葉は、有り得ない言葉だった。私達は、なんでも知っている筈だから。


そしてアイツは居なくなった。

この世界が出来上がり、同時に数多くの同胞が生まれ、不死であるにも関わらず無意味な争いの果てに数を減らし、いつしか我らは四柱となり、幾万年と過ぎた今、また一柱、居なくなった。

これはなんだろう。

これはなんだろう。

私の中で無限に広がる空間に、ほんの小さなヒビが入ったように感じた。


「知っている」とはなんだ? 「理解している」とはなんだ?

理解するという事を知るために、またひとり、別の世界から別の世界へと、人間を移動させる。

理解はまだ、出来ていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ