好きなタイプ
「ナガスさんの好きなタイプってどういう人なんですか?」
前に年下の同僚からそんな事を聞かれた事がある。とはいえ同性。
なにコイツ、ナガスの好きなタイプ聞き出してどうするつもりだ? 30超えた男にそんな質問するのはキショいって。その質問をするのが許されるのは高校生までだし、その質問に答えるのが許されるのは、モテモテの男限定だって。オッサンの好みのタイプとかどこに需要あんねん。
とか思いながらも「頭のいい人」と答えた。すると「そんな感じしますよね」と言われた。お前にナガスの何がわかんねん。
とはいえ、コイツの思う「頭のいい人」とナガスの思う「頭のいい人」の定義はおそらく違う。博識だったり勉強が出来るっていうのは、ナガスの定義では「知識欲が強い」です。それはそれで素晴らしい事ではあるし、話も合うんだろうけど、それなら同性の友人でもいい。
知識ってさ、覚えて身につけていくうちに「反射時間」に近づいていくでしょ。例えば「1+1=2」というものは反射的に頭の中に「2」と思いつく。それは教えられてきたからそう思える。問題が複雑になっていくにつれて、頭の中で答えを探したり、計算したりして「反射時間」が増えていく。それをできる限り減らしていける人が、頭の回転の早い人。一般的にいう所の「頭のいい人」だと思うのね。
そうじゃなくて……新しい価値観を植え付けてくれる人。ナガスの常識の外にいる人。ハッキリ言ってしまうと、十八〜二十歳の時に付き合っていた彼女がナガスのタイプ。あの人と付き合った時から好きなタイプが固定されちゃったよ。ナガスが思いもつかない事を言ってきたりして、驚かせてくれた。「本当の頭の良さ」を教えられた。
ナガスみたいなタイプがいくら頑張ったところで「強い凡人」にしかならないけど、その人は「天才」と呼ばれるような、そんな人。勉強出来る出来ないでいえば、正直「そんなに」だったけど、そういうんじゃない。ナガスの知らない事を、知ってる人。
時々作品内でも「魂」を題材にするけど、その総量というか、質量というか、色というか、それらがまったく違うと思わされる。それを表現したくて書いてる作品もある。
ただ、そういうタイプが好きではあるけど、付き合いたいだとかは、もう思わない。関わってもいけないと思ってしまう。ナガスのような偏屈な奴と関わると、その人の「良さ」を殺してしまうような気がするんだよね。だから十八〜二十歳の時に付き合っていたあの人の幸せをただ祈り、そして出来れば、ナガスとの記憶を消してほしいと、そんな風に思うのです。
……というかさ、とある事件のあと、ナガスは「自身の遺伝子は後世に残したゃいけない」と思うようになったから、なんかもう、そういうのは別にって感じ。
ちなみに、顔とか体型の好みは特になし。だから芸能人とかアイドルとか、マジで興味わかない。じぇんじぇん知らない。
追記。
この人と付き合った事により「俯瞰視点」というものの本質を知ったよ。
別に「俯瞰的な観点から物事を見なさい」と言われた訳じゃない。ただ、身の程を知ったというか、この人と比べたら自分はなんて小さな存在なんだ……と思うようになって、もっと広い視野を持とうと思うキッカケになったよ。
自分が見えている世界が、世界の全てではない。本当にそう思う。




