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新人と初めての仕事①

 シュガーが立ち止まった場所は手狭なキッチンだった。


「あー、まずはみんなとお客さん用の飲み物を作るから。ツバサちゃん、床下の扉を開けてみて」


「わかりました!」


 シュガーの気怠げな感じとは違い、ツバサの元気のいい返事がキッチンに響いた。


 ツバサは言われた通り扉を開く。古い木の扉のせいもあり軋む音がした。


 何があるんだ? とヴァーズが覗き込んだ。皮の容器にたくさんの水が入っているのが分かった。


(素材はドラゴンの皮か。天然物か? いいやつ使ってやがる)


 とヴァーズは思った。


 ドラゴンの皮には養殖の物と天然の物がある。どちらも柔らかく、それでいてとても硬い。加工がし易いこともあって

、大量の水を入れる容器として使われることも多い。


 天然物は過去の遺物であることが一般的で、希少性が高いため高値で取引されていた。


 「危ないよ、ヴァーズ」


 レーベンは覗き込んでいたヴァーズを抱き上げた。


 「そこに水が入ってるから、この容器に汲んで煮沸しておいて欲しい。もし皮に入った水がなくなりそうだったら、自分が汲んでくるから言ってくれ」


 シュガーはキラキラと光るガラス容器をツバサに手渡した。

 

 「あー、二人はコーヒーって知ってる? 最近ネオで流行ってるんだけど」


 「あたしはネオ出身なので知ってます」


 「ツバサちゃんは地元の人だったか。レーベンちゃんは?」


 「い、一度だけなら飲んだことがあります……。すごく苦かったです…」


 「はははっ! 慣れないと苦いよな。よし、それなら話は早い。あれってコーヒー豆をすり潰して作ってるんだよ。ここにコーヒー豆と豆を挽くため道具があるから。ーーーちょっと見てな」


 シュガーは引き出しからコーヒー豆と道具を取り出した。

 

 道具は風車を模したデザインとなっていて、家の部分に豆を入れ、風車部分を回転させて使う。手際よく準備をしたシュガーは、ゴリゴリという気持ちの良い音を立てながらコーヒー豆を挽いていく。


 「やってみ」


 シュガーはレーベンを手招きした。

 

 「少し力がいる作業だから気を付けて」


 「で、できるかな……」


 レーベンは恐る恐る風車型の取っ手を掴んだ。


 令嬢として生活していた時にコーヒー豆を挽いたことはない。さらに言えば、キッチンで作業をするということも初めての経験だった。


 手に伝わるコーヒー豆を挽いていく感覚は、今までの人生で経験したことがない感覚だった。香ばしい匂いが部屋中を覆っていく。


 「お疲れ。そのくらいでいいよ。どれどれ」


 道具から箱を取り出し、シュガーはコーヒー豆の挽かれた状態を確認した。


 「うん、上出来。レーベンちゃん上手だな」


 「ほんとだ! 細かくて綺麗!」

 

 ツバサも感嘆の声をあげる。


 ヴァーズもその出来が気になり覗き込んだ。たしかによく出来ていると思った。少しなめてみようかと思ったが、匂いを嗅いだ時点で命の危険を感じで止めた。猫が食べるには危険なようだった。


 「あー、ここからお湯の注ぎ方とか、それによってどう味が変わって、誰がどういう味が好みなのかって話もあるんだけど、明日またゆっくり教えるよ。今日は見てて。終わったら掃除! その後に窓口の仕事を教えるから」

読んでいただきありがとうございます。

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