その日の夜
温泉を堪能したレーベン達は、酔っぱらったシュガーを家まで送りと届け、リアンの自宅に帰った。
「じゃあ二人とも今日はお疲れ様。うちは……すっごい眠い……のでもう寝るよ……」
パジャマ姿のリアンは、ウサギの人形を大事そうに抱えながら自分の寝室に消えていった。
「なんだか子供みたいだったね」
ツバサはそう言うとくすくすと笑った。
「ほんと、かわいいです」
つられてレーベンも笑った。
隣同士に並べられたベットの上に二人は座った。昨日は一言も話すことなく眠ってしまったのに、今日は一緒に笑い合っているのはなんだか不思議だなとレーベンは思った。
「お仕事って疲れるんですね」
「本当だよね! なんかお客さんと一杯喋って、一杯歩いて、一杯疲れた!」
ツバサは、その大きな身体をベットに投げ出し、うんうんと唸った。
「ツバサちゃんは……なんで郵便局で働くことになったんですか?」
レーベンは枕を抱きかかえ、顔を埋めながら聞いた。
「『赤魔女さん』の話したよね。あたし、小さい頃からずっと憧れてたんだ。凄くかわいくてかっこいいなって」
「かっこいいですか……」
レーベンはあまりピンとこなかった。確かに可愛い服を着て手紙を配ってはいたけれど、憧れるものなんだろうかと思った。
「今日は歩きの配達だったけど、フェンリルとかドラゴン、リヴァイアサンに乗ったりするんだよ! みんな小型だけどね。赤魔女はね、操る魔物で呼ばれ方が変わるの。フェンリルを操る地精霊、ドラゴンを操る風精霊、そしてリヴァイアサンを操る水精霊」
「伝説級の魔物ばかり……。」
「そうなの! リアンさんって本当に凄い人なんだよ。ネオ郵便局の赤魔女は、それら魔物を全て使役するの。かっこいいでしょ! だから、学校にリアンさんが働く人を探しに来た時は凄く嬉しかったし、直接頼み込んだんだ! 働かせて!って」
「はぇ……ツバサさんはすごいですね」
レーベンはそう言うと、少し考えてしまった。突然両親がいなくなり、ホームレス状態だったところを救ってもらった自分とは全然違うなと思った。寝る場所と食べ物がもらえればそれでいいと思っていた。
すごくキラキラしてるなと思った。そして羨ましくもあった。
「あの……温泉での双子ちゃんのママの話、どう思いましたか?」
レーベンはツバサに問いかけた。
リガルト温泉で双子の女の子の母親から頼みごとをされていた。
家族は観光客ではなく、最近仕事のために本島に引っ越してきた家族だった。後日ネオ郵便局に改めて相談に来るという話だった。
「あの話ね。フウドリアに住むお父さんに毎日手紙を出したいなんて可愛いよね! ただ……う~ん……」
ツバサの顔が少し曇った。
「お父さん、あんまりお金持ってないって言ってたね……」
「受け取った手紙のお金をパパが払えないと、配達出来ないですからね……」
レーベンも困った表情で言った。
「そうなんだよねー。きっと配達員さんが困っちゃうだろうしね」
二人は仰向けになり天井を見つめた。いい案はないかと頭を抱える。
「なんとかしてあげたいです……。絶対、絶対なんとかしてあげたいです。パパと毎日お手紙の交換をさせてあげたいです」
レーベンは双子の女の子とその母親の顔を思い浮かべ、強くそう思った。
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