ネオ温泉
都市ネオはメシ国内の大都市の例にもれず温泉多い街だ。今日レーベン達が訪れたのは、リガルト温泉という有数の浴場だった。
「わあ、とても広いお風呂なんですね」
「私も初めて来たけど、海もすごくよく見えるんだ!」
水着姿のレーベンとツバサは歓喜の声を上げた。
レーベンはリアンからもらったフリルが付いたお子様感がある水着を、ツバサはビキニタイプの上下が分かれた水着を着ていた。
百人以上が入れる石造りの露天風呂に、やはり水着を着た老若男女がのんびりと湯船に浸かっていた。
「男の人もいるのは……ちょっと恥ずかしいですね」
「すぐに慣れるよ。それに、そのための水着だからね。ネオは結構そういう浴場多いんだよ。観光客向けに商売している浴場が多いからね」
リアンはそう言うと、抱きかかえていたヴァーズをおろした。ちなみに、リアンの水着はレーベンと同タイプのフリル付ではなるが、セパレートタイプで少し面積が狭いものだ。
「にゃ~(リアン、ありがとな)」
「どういたしまして。あんまり遠く行っちゃだめだよ」
「ヴァーズ、嬉しそうですね」
レーベンはフリルを抑えながらしゃがむと、ヴァーズの頭を撫でた。
「あはは、ここまで風呂が好きな猫も珍しい気もするよ」
リアンはヴァーズの鼻をツンツンした。
「にゃにゃ!(やめろって!)」
「そういえばシュガーさんはやっぱりダメなんですか?」
その様子を微笑ましく見ていたツバサは、少し表情を曇らせリアンに問いかけた。
「ダメだね。下手に風呂に入れば死ぬよ」
「そう……ですか」
「調子に乗って飲み過ぎなんだよ。一杯くらいで止めておけばよかったんだ」
リアンは少し呆れた口調で言った。
シュガーは、この浴場施設にある休憩室で酔いつぶれていた。「だって待てなかったんだも~ん」というのがシュガーが言い分だったりする。
「困ったもんだよ。まあ、レーベンちゃんとツバサちゃんがいれば十分だよ。さ、入ろうか」
リアンは二人の手を引き歩き出した。
***
「あー……すっごい……気持ちいいですね……」
肩まで温泉に浸かったレーベンは蕩ける様な声を出した。
「やばいよね。ほんとやばい」
ツバサも、全身の肌がお湯に溶けるような勢いで口元まで沈んでいく。
「ねー言った通り最高でしょ?」
リアンは夕日で赤くなり始めた水平線を眺めながら言った。
「ここのお湯、海に近い色をしてるんですね。透き通った青がとっても綺麗……」
「うちの実家もですが、リアンさんの家の方だと赤っぽくないですか? ネオの中でも色が違うんですね」
「ネオも広いからね。ネオと言ってもいくつかに分けられて、よく言われるのは、うちの家がある内陸住宅エリア、交通の要所である湾岸エリア、ネオ郵便局がある本島エリア、小さな島々でなる小島エリアだね。全部色が違うよ」
「地元なのに全然知りませんでした!」
「そんなもんだよ。内陸は内陸で、ツバサちゃんの胸くらい大きな山脈に近い温泉はまた違うからね」
「む~、さらっとえっちですね!」
ツバサは顔を真っ赤にし、胸を手で隠しながら言った。
「ははっ、昼の威勢はどこにいっちゃたのか。勝負しないの?」
「実際に視線を向けられながらだと違いますよね!? し、しませんよ!」
「たしかに……。実際に見られてると……。恥ずかしい」
レーベンもそれに同調した。いつ勝負が始まるのかと、実はずっとドキドキしていた。昼間はツバサがノリノリだったこともあり、この大衆の中で勝負をすることも覚悟していた。
「気が向いた勝負しようね。手を使って、しっかり、隅々まで測ってあげるから」
「なんか勝負に勝って試合に負ける感があるので止めましょう!」
ツバサはレーベンも提案を勢いよく却下した。三人の笑い声が響く。
そばでずっと聞いていたヴァーズは、ちょっと際どいやり取りに戸惑ってしまった
(実際は言動以外でも、身振り手振り、接触を伴う行動があった)。わずかながら猫としての理性が上回ったので、なんとか温泉を堪能することが出来た。
「あ、赤魔女さん達だ!!」
声の先には、昼間挨拶を交わした双子の女の子とその母親が立っていた。
いつも読んでいただきありがとうございます。




