新人達とお昼
一人、また一人とお客さんから手紙を預かっていく。レーベンとツバサの「いらっしゃませ」「ありがとうございました」が店内に何度もこだました。
最初は緊張からぎこちなかった二人の姿も、時間が経つにつれて様になり始めていた。
「あー、二人ともお疲れ。お昼だから一度お店を閉めるから。先に休憩室に戻ってて」
「はい! シュガーさん、よろしくお願いいたします。」
「お願いします……」
「ヴァーズちゃん忘れずに連れて行って。窓際で寝てるから」
「あ、そうだった。ヴァーズいくよー」
レーベンはヴァーズを抱きかかえた。ヴァーズは寝たりないのか、モチのように身体が伸びきった状態で運ばれていく。
シュガーにあとの仕事を任せ、二人は二階にある休憩室に向かった。休憩室は二人が最初にこの郵便局に来た時に荷物を置いた部屋でもあった。
「よ、お疲れさん」
机で作業をしていたのはリアンだった。二人を笑顔で出迎える。
「お疲れ様です。リアンさん、何してるんですか?」
「ああ、これね。レーベンちゃんは何だと思う?」
「魔法陣の紙……うーん、わかんないです」
「ツバサちゃんはどう?」
「もちろん! わかりません!」
「そりゃそうだよね。これはね、手紙が届いたことを通知する魔法が、ちゃんと発動したか確かめてんの。発動し終わってたら日にちごとに紙をまとめてノートに保管する」
リアンは魔法陣の紙を二人に見せた。魔法陣はぼんやりと赤く光っている。
「魔法、初めて見ました。よく見ると住所と名前が書いてあるんですね!」
ツバサは魔法陣をまじまじと見つめた。
「お、良く気付いたね。そうだよ。午後一緒に配達行くときに教えるけど、相手の微量のマナに反応して光るように組んであるんだ。これが赤く光ってるってことは、ちゃんと届けましたってことでもあるのよ。この状態になっている魔法陣の紙だけ通知の魔法陣に乗せると、差出人に届きましたーってお知らせが行くってわけ」
話を聞いていたレーベンは頭を抱えながらうんうんと考えている。
「む、むかしいですね……ツ、ツバサちゃん」は分かりますか……」
「……」
「ね、ねてる……」
「はっ! 難しすぎて固まってしまいました。レーベンちゃん何かいいましたか?」
「うん、大丈夫。解決した」
「あはははは!!!! あとでもう一回教えるから気にしないで。そろそろシュガーも戻ってくるだろうし、とりあえずご飯の用意しようか。行きつけのレストランでランチセット作ってもらったんだ。おいしいハーブティーもあるよ」
***
どのテーブルクロスをひくか三人であーでもない、こーでもないと論争を繰り広げたのちの、ハーブティーを準備をしている途中にシュガーは戻って来た。
シュガーは率先してヴァーズのご飯担当に立候補し、リアンがレストランからもらってきた魚を与えた。
「にゃにゃにゃ~(カタクチイワシか。海が近いだけあって新鮮でうまい)」
「おいしいか。もっと食え」
シュガーはヴァーズの頭を優しく撫でた。それにこたえるように、ゴロゴロと自身の頭をシュガーの指に押し付けていく。「もっとちょうだい」と伝えれば、すぐに魚が追加される。
「にゃ~(ここは天国か……)」
デブ猫の未来が確定的になった瞬間でもあった。
「あ、シュガーさん……お昼の準備できました」
「あー、レーベンちゃんありがとう。」
四人は椅子に座りテーブルを囲む。
「なにこれ! 分かんないけど、すごくおいしそう!! 分かんないけど!!」
最初に歓声をあげたのはツバサだった。言葉の通り、よく分からない状態ではあるが、とてもテンションが上がったことは確かだった。
「わぁ。お肉に、魚に、フルーツ。色鮮やかでとても綺麗でおいしそう。こんなに食べられるかな」
「まだまだ成長期。いっぱい食べて、ツバサくらい大きくなりなよ。うちは諦めたけど」
「そんなに大きくないですよ、あたし!」
「いや、でかいから。目線に入るのがすごくでかい。見ろ! 私の150年物のまな板を!!」
「そ、そんなこと。モグモグ、ゴックン。ないですよ! それに、女性の価値はそこじゃありませんし。モグモグ。胸がどうのこうのなんて……。モグモグ」
「ツ……ツバサさん食べるの早いですね。もう半分食べちゃってる。……私もたくさんたべようかな……」
「レーベンちゃん、無理してもいいことないぞ。自分の体とよく相談だ」
「そ、そうですよね……。シュガーさん、ありがとうございます」
「まあ、ツバサの大きさは、自分も少し羨ましくもある」
「そ、そんな! シュガーさんまで。モグモグ。ごちそうさまでした」
「も、もう……食べ終わってる……」
「今日の仕事後のお風呂楽しみにしとけよ~。みんなで勝負だ!」
「え! あたしの圧勝じゃないですか! 」
「そこは謙遜しなって! 悲しくなっちゃうぞ……。なあレーベンちゃん」
「そ、そうです!モグ……」
(な、なかなかご飯を食べる隙が無い……)
レーベンは、なんとか会話の隙を見つけながら、ゆっくりと食べていった。こんなに賑やかな食卓はいつ以来だろうと思った。
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