30.アキヲとの対立
翌日、陽が登るとともに、宿を出発した。
紗羅さんは約束通り、教会の前で待っていた。紗羅さんは黒衣を身に纏っており、あの日、アキヲと見た怪しい人たちとそっくりだった。
「私と山田さんと、山田さんの弟子が2人で、時々下に降りて、繁華街に行っています。新聞記事の怪しい団体は、たぶん私たちのことをいっていると思います」
紗羅さんは、悲しそうな目をして言った。
私は、頷くことしかできなかった。
少しすると、あの日見た荷車を引いて、3人の黒衣をきた男性がやって来る。
「山田さんと、弟子の2人です。さあ、私たちも行きましょう」
紗羅さんに背中を押されるように、私は荷車の右側について歩き始めた。歩きながら、山田さんが挨拶をしてくれる。
「リサさん、あの日会いましたね。無事に山頂まで着いて良かった。少し心配していましたよ」
山田さんは、あの日と同じ優しい笑顔を見せて言った。
私も挨拶をし、それ以上何を言ったら良いのかわからず、ごにょごにょとお礼のようなものを伝えた。
森の入り口をずんずん進んでいく。
「お前ら、悪党だろ!」
後ろから、大声で怒鳴り散らした声が聞こえた。
振り向くとアキヲが、恐ろしい形相で、こちらに向かってくる。
「リサ、おまえはいつの間にこいつらの仲間になったんだよ!?」
私は、今にも紗羅さんや山田さんに飛びかかりそうな勢いをアキヲから感じた。
「アキヲ!聞いて、ちがうのよ。この中を見せてくれるの、説明もしてくれるのよ」
アキヲの昂った感情をなだめるように、和らいだ声をだして言った。
「少し二人の時間が必要ですか?私が話したことをアキヲさんにも伝えてください。私たちは、扉の向こうで待っています」
紗羅さんは冷静さを保ち、穏やかな声で言った。山田さんと目と目で頷き合う。
山田さんがプレハブの扉を鍵で開けると、4人と荷車はそのまま中に入って行ってしまう。
アキヲは寝ずにここで見張っていたのだろう。疲労感が顔にあらわれ、瞼は重く、顔色は青白かった。
何かを言おうとしたが、思いとどまるように、私のほうを向いた。
「何を聞いたんだ?」
アキヲは少しずつ冷静さを取り戻していく。私は安堵して、昨夜に紗羅さんから聞いた話をかいつまんで話した。
「それは、誘拐だ。救うという綺麗な言葉を使っているが、両親から子どもを引き離している。路上で生活をしている人たちの弱味につけ込んで、連れてきているだけだ」
アキヲは、私から紗羅さんの話を聞き、冷静になっていた。冷めた口調で、批判を口にする。
「でも、下の世界では、生きられない人たちよ。死んでいくのが、目に見えるようだわ。この村だから生きていけるという側面からも見るべきよ」
私は、明らかに誘拐だと決めつけるアキヲに、拒否的な気持ちが芽生えていた。
アキヲは、この村の全てが気に食わないのだ。科学から遠く離れた原始回帰の世界に、無条件に不信感をもち、拒否反応を示している。
「リサ、君はどちらの味方なんだよ!?あの新聞記事を読んだだろう?彼女彼らは、偽善を装った誘拐犯だ。犯罪者なんだよ!」
アキヲは、肩に力が入り、声を荒げて言った。
「でも、麻薬なんて栽培してない!」
私も口調を強めて反論する。
「わからないじゃないか!あの中に何があるのか!麻薬以外の犯罪めいたものかもしれない!」
アキヲは怒鳴って言う。
「じゃあ、行ってみましょうよ!」
アキヲと私は対立をしていた。アキヲと私の意見は、完全に分かれた意見だった。
「ああ、何が見えても後悔しないな?!」
「ええ!私は、犯罪ではないと思う!」
私とアキヲは、口々に罵り合うように、プレハブの扉を開けて、中に入って行く。




