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癒しの村 プロローグ  作者: yuriko
10/33

10.散歩

 ナミの母から、癒しの村の住人の話を聞いたとき、うつ病を患う人たちがいることが気になった。


 重度の脳性麻痺の子をお世話しているという。うつ病だから、世話される側だと考えられるが、この村では違うらしい。


 玄関前でナミが掃き掃除をしていたので、


「うつ病を患う人たちは、どこにいるのか知ってる?」


 と、聞いてみる。


 ナミは掃除をする手を止めて、


「教会から、畑や田んぼ道をずっと上がっていくと、草原にでる。そこに、ぽつっと小屋があるから、すぐわかるよ」


 と、道を指差して言った。


 私が礼を言うと、ナミは笑顔で頷き、また単調な動作を繰り返すように、掃き掃除を始める。


 ナミの言う通り、教会を山の頂上目がけて登っていくと、田畑が広がり、小屋も数軒あった。きっと、田畑を耕す仕事をしている人たちが住んでいるのだろう。


 道をずんずん歩いて行くと、田畑がなくなり、急に草原が広がり始める。もしかしたら、ここら辺一帯は、もとは山頂近くの草原のような土地だったのかもしれない。


 草原には、大きめの集合住宅のような小屋が、ぽつんと建っており、すぐにわかった。


 小屋の戸を開けると、ベッドが並んだ大部屋が広がる。30畳程はあるだろうか。ベッドは等間隔に8台並び、そのうち奥の5台のベッドには人が寝ていた。


「どなた?」


 大部屋につながっている奥の部屋から、人の声がした。


「昨日、新しく住人になりました、田辺リサといいます」


 私は声を高くあげて、名を名乗った。


 すると、ショートカットを揺らし、溌剌とした笑顔を浮かべた、若い女がこちらにやって来る。


「あら。同じくらの年ね。私は、山辺サトミ。よろしくね」


 サトミはペコリとお辞儀をして、名を名乗った。


「はい、19になります。まだ、わからないことだらけです。よろしくお願いします。」


 私もサトミに、ペコリとお辞儀をする。


「あら。私は22だから、3つ下になるのね。ここまで来たのだから、下の世界では辛いことがあったのよね」


 サトミは顔を上げて言う。瞳の色が透き通った茶色の色素であった。


「境界性人格障害です」


 なぜだろう、サトミには真実を話せる。


「パーソナリティ障害は、何も信じるものがないから、生きづらいでしょう」


 サトミは、一瞬はっとしたように目を開け、全てを理解したように微笑んで言った。


「毎日死にたくて、藁にも縋る想いで、癒しの村に来ました」


 なぜか胸が苦しくなり、涙が滲み出る。


「聞いたかもしれないけど、私はうつ病なの。下の世界では、リストカットを繰り返していたわ。一筋の光を探して、ここに来たの。もう、6年になるかしら。時々、無性に全てが嫌になって、死にたくなるのは同じだけど、あの子たちの顔を見たら、なんとか耐えることができるの」


 サトミも何も隠そうとしなかった。今までのことを、そのまま伝えられる。


「あの子たち?」


 私は、サトミに聞いた。


「ええ。こっちにいらっしゃい。紹介するわ」


 サトミは頷き、にこりと笑って、私を中に招き入れた。


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