表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/19

妹と人を殺した・3

4

 ガタリと、荷の重量分、鉄製の車体は大きく上下動する。

 ふっと息を直すと、残りの荷物は妹に任せて、運転席にかける。乗り込み、エンジンをかけて、ヘッドライトを点灯させる。


 自動車。父親が今、個人的に使用する車の一世代前に使っていた車。母からは、維持費がバカにならないからさっさと売るなり、捨てるなり、してくれと口酸っぱく言われている遺物だった。


 金銭管理を一任されている母にとっては、パキリと分かりやすく数字上の無駄でしか無かっただろうが、がこう言う時に光るもので、この存在は助かった。


 捨てる前に、死体を捨てる役割が出来た車というのには同情するけれど。仕方あるまい。


 古い車種であるが、医者の父のお金を食っているだけあって、まだまだ使える状態であり、フロントガラスの上にかかる土埃つちぼこりを払いのければ、新品のようでさえある。


 女の子の重量であれば、8人くらいまでなら余裕そうな面持ち。実際の、今回の2人という数字ならば、ペーパードライバーの僕でさえ、運転に支障は出なそうである。


「では、行くか」と、一息つきたそうな妹に向かって、敢えて告げる。


 実際のところ、僕としては、この身内みうちの不幸中の不幸の事件が、火の粉として自己に降りかかる事だけが気がかりだった。

 所詮、妹の体力など、この場合試算の一つにさえ組み込まれていなかった。生き急いでいた。死なせ急いでいたとも言える。


 助手席に乗り込む妹はやけに青ざめている。青々として、冷気を排出していそうな位だった。そんな雰囲気ふんいきに耐えかねて、僕は口を動かす。


 出庫した車が鳴らす駆動音が、僕の言葉と混じって車内に聞こえる。


「隠さないと、まずい状況だろう?間違いなく、責任追及の目は向く事が考えられるし」

 そう事務的に言った。つくづく、自己しか見えていなかったと思う。対して、妹は恐る恐ると言った感じで口を開く。ミラーに映る彼女を見たが、まだまだ青みが強い。


「うん、うん……」

 妹は頷きを音にした。言葉の終始、下をうつむくばかりで顔を上げようとはしない。その姿にいらつきを覚えたが、震える手をハンドルに握らせて、抑える。


 ただ、すっとして言葉だけは続けた。


「特に、僕らの家は世間体せけんていが大事だ。お得意様が出来てやっと成り立つ部分もある。そして、何より、医者は関係が全てだ。お金では動かない。そんな部分で生き悩む人種では無いからだ」

 妹に、そして何より自分に問い責めるように言った。


「医学生のお兄ちゃんは医者になるんだもんね。将来は家を継いで、立派な町医者になるんだもんね」

 細々と妹は言う。


「そうだ。僕らの人生に石ころがあってはいけないんだ。つまずけば僕も苦心し、君も苦心する。親もする、それは困るだろう?」


「……うん」

 1テンポ空いての、小さく同意。間隙かんげき目掛けて、僕は焦って間髪かんぱつの言葉を挟み込む。


「だから、仕方ないんだ。薬品管理の手薄さは信頼を損なう。しかも、それを自殺の為にとは……」後半になるにつれて、完全に独り言として述べ変わっていった。それも分かってか、妹は何も言葉を返さない。


 ポツリと、緩く降っていた雨がまた足を早めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ