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妹と人を殺した・2

3

 妹と人を殺した。僕は結果的にそうせざるを得なくなってしまったと言える。家内から殺人の証拠が、証人が発生するという事が如何いかがなものか程度の認識はあるからである。


 詰問きつもん


「これはどう言う状況なんだ?」


「いや、知らないよ。あたしは……こんなはずじゃ無かったんだよ」

 腰を抜かしている様相ようそう。動揺が妹を包んであるのが、透けて見えるようである。余裕の差異がそれをにじみ出しているだけで、本当かは未知だけれど、少なくともその場合では、僕はそう思った。


「誰なんだ。これは」

 不覚にも、すでに『これ』と扱いを粗雑そざつにした事を少しばかり謝りたい気にもなった。気になっている内に、妹より返答。


「友達。ガッコーの」

 短く答える。後、一度ひとたび、目線をこちらの眼球に直線したかと思えば、サッとれて、死体に向かい、またこちらに戻る。


 まだ、妹の言葉が続く。


「今日、遊ぶつもりだったんだ。遊ぶつもりで、この家に呼んだんだ」

 そう、言った。感傷的なようであるその姿からは、悲しみが分かる。


 だからこそ、何故こうなったのか。そこの疑問が強まる。


「この子はね。不登校だったんだよ。精神的にガッコーが受け付けなかったみたいで、高校に上がった時からもう限界ってカンジだったんだよね」


「ならば、何だ。自殺でもしたってのか?」

 この質問に、妹は苦虫にがむしを噛むように顔を曇らせる。青いそれを追い立てて、言葉を無理に発せようとしかけたが、止めた。


「薬の事を良く調べててさ。あぁ、あたしじゃなくて、この子がね。あたしも疲れてて、言っちゃったんだよね。それをどう使うか、分かってなかった訳じゃ無いんだけど」


「何と……言ったんだ?」


「それなら、家にあるってさ。そう言った。」


 家にある。僕の家は個人経営の病院である。情報はこれ以上、伏せるけれど。ここまでの情報さえ出揃えば、もう彼女のやってしまった事の重大さは分かるだろう。


自殺幇助(じさつほうじょ)にでもなるのかな」


 自殺幇助。自殺の手伝い。この国では、非合法のそれ。この状況で、どうなのか、浅学せんがくの僕としては判断の付けかねる所ではあるが。およそ、医師がその方法、情報を提供する事では無かったかと思う。


 そう説明すると、妹は、少しばかり、目の下のくらみが解けたような気がする。


「あぁ、そうなんだ。なら……」


 なら……、何だというのか。大丈夫だと、続けるつもりだろうか。続けるつもりだとすれば、この愚妹というのは。

 妹の言葉の端々《はしばし》の無頓着むとんちゃくがやけに気にさわった。気に障って、落ち着けてを内心繰り返す。


「どうするつもりだ?」

 短くそう言った。妹を責めるつもりで言った訳では無かったのだが、打って変わって、彼女はそう受け取ったようであった。表情は、怒られる餓鬼ガキのそれになり、蒼白そうはくというより、冷や汗のしどろもどろと言ったようであり、現実味げんじつみがあった。


 あったからこそ、このギャップにいきどおりりを感じない訳には行かなかった。


 改めて、認識を合わせる必要を感じた。


「僕らが扱うのは、ただの個人間での刑事事件って事じゃ無いんだぞ」

 低く、うなる様に言った。


「何?どう言う事。ケー察じゃダメって事?」


「ダメだ」


「どう言う事なの?」

 重ねてのこの妹の質問に、次第に説明のしようは頭の中で、形をとめど無く変質へんしつする。ひるがって、落ち着かないのは、この妹だけで無く、僕もなのである事を理解する。


 1秒も経たない間の逡巡しゅんじゅん優柔不断ゆうじゅうふだんの僕の脳内で説明の必要性を零落れいらくさせていった。話す気が失せた。


 目で訴えかける妹を一つ見て、次に死体を見る。


「一晩で片付けねば……ならない」


 ポツリと言って、時計を見れば、短針は9時を目指す。


「ガムテープを持ってきてくれ」

 この状況下で一番、困惑の表情を浮かべる妹に対して、そう言った。


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