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妹と人を殺した・1

『炎』、『破壊』、『見えない脇役』


1

 そうですね、確かに僕は殺しましたね。人を殺しました。


 めちゃくちゃにして、ぐちゃぐちゃにして、懇切丁寧に、骨骨と、切切と、やりました。


 動機ですか?そうですね。深くそれを考える事はありませんでした。ただ、そう。小説を読んでいるときにね。始まり出しが、痛烈というか、痛切というか、僕をそっと誘った気がしたんですよ。


 激怒ほど感情的じゃ無いし、名前が無い程センセーショナルでも無いけれど、僕などの心を揺らがせる程度には良かったのですよ。みたのですよ。


 変に盛り上げてすみません。それほど期待しないで下さい。別に、特別な小説でもなければ、有名な作品でも無いのですよ。


 この世界のありとあらゆるものに半可通はんかつうな僕でも、知ってる程度のそれです。


 僕が受けた一文。始まり始まりの一行は『妹が人を殺した』でしたね。そう始まったお話に僕は取り乱したのです。


 即座的に、本能的に、思いました。今となっては、不甲斐(ふがい)無く、甲斐性(かいしょう)もなく、しょうがない感性ですが、思いました。端的にね、僕も殺したいと。殺してみたいと、殺人をしてみたいと。


 だからこれが動機ですかね。申し訳ありません。殺してしまって、あなたの仕事を増やしてしまって。


 そう彼は証言した後に、滔々と内容を語る。


2

 妹が人を殺した。その一文から小説を27ページめくり、ふと、読むのを中断する。別に、殺人衝動がこの時に暴発して、完全犯罪の手練手管てれんてくだが、脳みそまで侵入した訳でも無かったのだが。


 読書中断に理由が無かった訳ではない。もちろん、再度重ねて、犯罪欲ではない。けれど、何のことは無い、ただ物音がしたから止めたのだ。


 よく犯罪が起きるような地域では無いからこそだろうか、動物がよく現れる。この僕の住む住居にも、壁の隙間を縫うように、アスレチックする動物たちが跋扈ばっこする事は多々ある。


 タヌキ、猫、イタチ、何でもござれの問屋状態の僕の住む家だったが、今日の物音はその類では無かった。


 初めは気の所為せいだと思ったし、地震の揺れを、トラックの揺れと勘違いする程度の感性的な、直感的な違和感だったのだが、だが、気になった。


 それは僕が読む本を中途でしおりを用意する羽目を作り上げる程に強力な直感でもあった。

 引き出し二、三段、栞を探した。


 紫の地の色を持った栞だったと思う。何と言っても、サッとだった、極めてサッと投げ挟む。


 ダッと、脱兎の如く、物音に向かう。若干の強い使命感を持って。

 と、そんな風に意志力を、往々《おうおう》に、赤裸々《せきらら》に放ちながらもそれは無駄ではなくとも、多いに余りを出すことになる。


 妹の部屋。そこには死体があった。横たわった綺麗な死体が。


 だからそうだな、この始まりだしは、これが良いのかな。


 『妹と人を殺した』


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