ねぇ、いかないで
ガタンッ
授業中に居眠りをしていた生徒が椅子から落ちかけた音で意識が教室に戻った。
あの子と別れてから数年。
未だに僕はあの子の影を探している。
引越しする日の夜、駅のホームで僕と君は電車が来るまで沢山話をした。
電車が来る時間が近づくにつれて君は落ちつきがなくなってそわそわとしだした。
指先を合わせて手持ち沙汰のように弄んでいる。
その指先に僕の両手を重ね、君の少し茶色がかった目を見つめた。
君は泣きそうな顔をしてほろりと一雫の雨を零してしまった。
あぁ、泣かせたいわけじゃなかったんだ
君の両目からポロポロと零れ落ちる宝石のような涙を僕は優しく指先で拭って、そっと触れるようなキスをした。
君との別れを惜しむように、何度も。