3.大切な少女
18歳になったティオルは立派な冒険者に成長していた
背は伸び、筋肉は付き、誰がどう見ても屈強な戦士にしか見えない
「ティオルー」
後ろから名前を呼ばれ、聞きなれた声にティオルは柔らかな笑みを浮かべながら振り向いた
そこには長い髪をふわりと揺らしながら駆けてくる、白いローブ姿の少女がいた
ティオルは彼女に向き直り、たどり着いた彼女を優しく抱き留めた
「どうした?」
ぶっきらぼうに問うが、彼女を見つめるひとみは優しかった
「ティオルが見えたから、一緒に帰ろうと思ったの」
屈託なく笑う彼女は、ティオルと1つ2つしか年は変わらないが、邪気がなく、幾分幼く見える
「そうか」
ティオルは優しく彼女の髪を撫でると、優しく手を引いて歩き出す
彼女、フィナは白魔法を使う冒険者で、1年ほど前からティオルの仲間になり
いつの間にかそれ以上の仲になっていた
ぶっきらぼうで言葉少ないティオルだが、その手や瞳はいつも優しく、まだ冒険に不慣れだったフィナをいつも優しくフォローしてくれて
フィナはすぐにティオルが大好きになった
ティオルも、自分にはない素直さで、まっすぐに好意を受けてくるフィナを好きにならずにはいられなかった
初めてできた大切な少女
隣に感じる暖かな温もり
自分に向けられる優しい笑顔
信頼しきって添えられる柔らかな白い手
彼女の全てが泣きそうになるほどの幸せをティオルに与えた
ティオルはフィナが大好きだった
愛していた
しかし愛していればいるほど
その暖かな幸せを感じれば感じるほど
失うことへの恐怖を感じずにはいられなかった
彼女もある日突然自分の前から姿を消してしまうのではないだろうか
2年前のクローのように
それはどんなに振り払っても、ティオルの頭から消えることはなかった