2.消失
その時は何の前触れもなくやってきた
いや、予兆とも呼べないが、ちょうどその頃嫌な噂が流れていた
若い冒険者の男が、突然姿を消す、と
まあ、冒険者なんて身元の確かな者でもなく、始めるのも辞めるのも自由だ
急に嫌になって辞めたり、急に故郷に帰ったり、急に他にいい金儲けを見つけていなくなる者もいる
なので、冒険者がいなくなるなんて別段珍しくもなんともなかった
しかし、その噂では
その突然姿を消した男たちは
何の前触れも無く
商売道具の武器も防具もそのままで
金目の物さえそのままで
誰に行く先を伝えるでもなく
むしろ翌日の約束を交わしてさえいたのに
ある日、突然姿を消すらしかった
酒の肴の戯言か、面白おかしく誇張されたどうでもよい話だと思っていた
なのに
ある日、朝起きると
クローは跡形も無く消えていた
昨日までいつも通り隣で笑っていた
明日は西のダンジョンに行こう
もう少し稼げるようになりたいから、お金を貯めて、もっと強い武器を買おう
と、いつも通り話していたのに
どこをどう探してもクローは見つからなかった
誰に何を聞いてもクローの行先に心当たりがある人さえいなかった
何の前触れも無く
何の痕跡も無く
その日クローはティオルの目の前から完全に姿を消したのだった
まるで、初めから存在しなかったかのように