表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王の正体  作者: 咲起みずほ
1/5

1.始まり

 ティオルは物心ついた時にはすでに一人だった

 家族の記憶はない

 街の片隅の路上に一人立っていた

 微かに自分の頭を優しく撫でる


 街にはティオルのような子供は珍しくはなかった

 彼らは群れることはなかったが、時折敵対し、時折協力しながら、それなりに生きていた

 ティオルも常に腹を空かせながらも何とか生き延び、13歳で冒険者になった


 冒険者は強さ以外の身分はいらなかったから、ティオルのような少年が手っ取り早くお金を手に入れるのに都合がよかった

 初めは薬草取りや町の雑用を熟し、武器を手に入れ、小さな魔物を狩り、

 15歳になることには一人前の冒険者と言っても差支えのないほどに成長していた


 クローに出会ったのはその頃だった

 もっと田舎の町から流れてきた冒険者見習いで、冒険者を目指しているには穏やかで優し気な、どこか気の弱そうな少年だった

 ティオルとは年も近く、境遇も似ていた

 もっとも似た境遇の者なんていくらでもいたが、ティオルとクローは不思議とウマが合った

 出会って数か月で、生まれた時から一緒の兄弟のように仲が良くなり、お互いを信頼する相棒になった

 家族がいた記憶はなかったが、もし家族がいたらこんな感じなんじゃないんだろうかと密かにティオルは想像し、いつも隣で穏やかな笑顔を浮かべるクローになんだか胸が温かくなるのを感じていた

 このままクローと二人で冒険者を続け

 それなりに強くなって

 それなりに稼いで

 それなりに幸せになって

 もしかしたらいつかそれぞれ可愛い奥さんをもらったりして

 きっとずっと一緒に過ごしていくんだろう

 その時までは本気でそう思っていた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ