1.始まり
ティオルは物心ついた時にはすでに一人だった
家族の記憶はない
街の片隅の路上に一人立っていた
微かに自分の頭を優しく撫でる
街にはティオルのような子供は珍しくはなかった
彼らは群れることはなかったが、時折敵対し、時折協力しながら、それなりに生きていた
ティオルも常に腹を空かせながらも何とか生き延び、13歳で冒険者になった
冒険者は強さ以外の身分はいらなかったから、ティオルのような少年が手っ取り早くお金を手に入れるのに都合がよかった
初めは薬草取りや町の雑用を熟し、武器を手に入れ、小さな魔物を狩り、
15歳になることには一人前の冒険者と言っても差支えのないほどに成長していた
クローに出会ったのはその頃だった
もっと田舎の町から流れてきた冒険者見習いで、冒険者を目指しているには穏やかで優し気な、どこか気の弱そうな少年だった
ティオルとは年も近く、境遇も似ていた
もっとも似た境遇の者なんていくらでもいたが、ティオルとクローは不思議とウマが合った
出会って数か月で、生まれた時から一緒の兄弟のように仲が良くなり、お互いを信頼する相棒になった
家族がいた記憶はなかったが、もし家族がいたらこんな感じなんじゃないんだろうかと密かにティオルは想像し、いつも隣で穏やかな笑顔を浮かべるクローになんだか胸が温かくなるのを感じていた
このままクローと二人で冒険者を続け
それなりに強くなって
それなりに稼いで
それなりに幸せになって
もしかしたらいつかそれぞれ可愛い奥さんをもらったりして
きっとずっと一緒に過ごしていくんだろう
その時までは本気でそう思っていた