眠れぬ君に
「こんなところで、どうしたの?」
シャッカスは深夜の見回り中にふと廊下を動く気配に気付いた。ランタンでそれを照らすとフレデリクが廊下に立っていた。
半分眠りかけていながらも返事はいつものようにはきはきとしている。
「星を、見ていたんです。眠れないから」
ここ最近フレデリクが眠れないということは聞いていた。それは寝てる時に超常現象が起こるかもしれないという不安であると漏らしていた。
その時にカモミールティーや寝る前にストレッチをするといいなどは伝えたがやはり不安は解消されないようだ。
「エクトルに迷惑かけたくないからいつもここで星を見てたんです。他の見回りの先生はここまでこないから」
たしかにこの隅ならフレデリクはいくらでも隠れられるだろうなと、シャッカスはランタンで周囲を照らしながら思った。
秋とはいえ、この廊下は冷え冷えとしている。星も寒々しそうに瞬いていた。
「とりあえず、寒いから私の部屋においでよ」
シャッカスはそう言ってフレデリクの手をそっと握る。その手は予想通り冷たくなっていた。
二人はそっと音を立てないように歩く。
「そういえば、ここの学校って怖い話ないの?」
シャッカスは小声でフレデリクに問いかける。
「僕が怖い話みたいなもんじゃないですか?」
「そうじゃなくて学生の幽霊が出たり、ピアノが鳴ったり」
「そういうのは聞いたことないですけど、ここら辺の言い伝えで、天使と悪魔が出会ったとされる土地がここらしいですよ」
「詳しく聞かせてよ」
「昔、ここは天界とも地獄とも繋がる場所で、天使と悪魔が小競り合いを起こしていたらしいんです。
でも、ある時黒い翼を持った悪魔と真っ白い羽の天使と出会って恋に落ちたんです。それを知った仲間達は二人を引き離そうとしたんですけど、本当の愛を知った二人には無意味だったみたいです。
そして、本当の愛を証明するために二人は翼を捨てまた巡り合い、本当の愛を知る日まで彷徨い続けることになったんです。
そして、また二人が出会うのがこの土地だって」
フレデリクは目を輝かせながらそう語ってきたせた。シャッカスは興味深そうに相槌を打った。
ほどなくしてシャッカスの自室についた。
「さあ、ここでもう少しお話でもしようか。フレデリクはベッドで。今とっておきを出してあげるからね」
シャッカスはそういうと自室の冷蔵庫から牛乳を取り出し、ミルクパンにそっと注ぐ。それにたっぷりの蜂蜜とほんの少しのラムを垂らし温める。
「さあ、眠れない夜はこれが一番」
そういうとマグカップを差し出す。
「ありがとうございます」
フレデリクはふーふーとそれを覚まし、手を温めながらゆっくりそれを飲み干していく。
次第に目つきはとろんとして欠伸も多くなってきた。
寮の部屋のベッドよりは大きなベッドに身を預けうとうととし始めた。その横へシャッカスは寝転がるとそっと、子守唄を歌い始めた。
その落ち着いたバリトンボイスはそんな不安を拭い去っり、フレデリクは自然と欠伸の回数も多くなる。
「暖かで優しい感情を貴方が教えてくれた。安心して寝られます」
「僕もだよ。Mom ange」
二人は身を寄せ合い温まり合うようにして夜を過ごした。
https://shindanmaker.com/804548
お題お借りしました