番外編 Billet pour embrasser
フレデリクが綺麗な紙を手に入れたのでシャッカスにプレゼントするお話です
フレデリクは図書室の司書からたまたま綺麗な紙を手に入れた。手触りの良い黒い紙に金箔が押してありキラキラと輝いている。
「綺麗だなあ」
日本ではこれを思い思いの形に折って遊ぶらしい。しかし、完成形だけを見せられても全く分からずフレデリクはただいたずらに眺めるだけだった。
そこでふと思い立ってその紙を8等分し、"billet"と書き込んだ。
その紙をポケットに入れ数学研究室のドアを叩いた。聴き慣れたどうぞという声が返ってきたので入室すると、シャッカスがレポートに採点をしているところだった。
「やっときてくれたか。我が愛しの憂鬱くん」
シャッカスはそう言って笑い、伸びをする。
「レポートの採点ですか?」
「そうなんだ。自分で出しといて馬鹿なことをしたと思うよ」
シャッカスはそう言って冷たくなったコーヒーを啜る。
「そんな先生に今日はプレゼントがあります」
フレデリクはそう言って先程切った紙を渡す。
「君からのプレゼントなんて嬉しいな」
シャッカスはそう言って受け取る。
「綺麗な紙だね。ん、billet…?一体なんのだい?」
不思議そうにフレデリクに尋ねる。
「シャッカスっぽくていいなって思って。好きに記入してください。そしたらできる範囲でお手伝いします」
フレデリクは少してれたように言った。
「そうか。なんで魅力的なbilletだろうか」
シャッカスは少し考えた後、サラサラと赤ペンで書き込みフ1枚レデリクに手渡した。
見れば"billet“の後に綺麗な筆記体で"pour embless”と書かれていた。
フレデリクは意外そうな顔をした後、椅子に座っているシャッカスをぎゅっと強く抱きしめた。
「これぐらいならいつでもしますよ」
「本当かい?嬉しいね」
シャッカスもペンを置きフレデリクを抱きしめ返した。二人の抱擁は長い間続いた。
外では秋の冷たい風が吹いていたが二人はほかほかとあたたかい気持ちで満たされていた。