あかり幸せになります。
次の日ウイレムが病院に迎えに来てくれて、二人して洋品店に帰ると
「お帰りあかり、もう落ち着いたの?大丈夫なの?」とメアリーが出迎えてくれた。
「ごめんねメアリー心配かけてしまって」
「本当よ!一杯心配したんだからね!特に兄さんが…ぷっうふふ」
「ふん、当たり前だろ。か、彼女なんだからな」
「いや〜、こんな兄さん始めて見れたわ真っ赤よ」
「う、うるさい!早く家に入れ」
「はいはい」
「フフフ、二人ともありがとう。ただいま帰りました」
「お〜!あかり、お帰りもう良いのか?」
「はい、ご心配おかけしてすみません」
「何を言ってる、ウイレムの彼女はもう俺の娘みたいなもんだ、心配もするさ」
「娘………有難うございます……嬉しい」
「なんだなんだ?あかりは泣き虫に成っちまったな」
「暖かくてみんな優しくて涙腺が壊れちゃったみたいです」
「そうかそうか、とにかく中に入ってゆっくり休め!な」
「はい、そうします」
そうみんなで話してる後ろから
「あの………この前は済みませんでした。」
「え?」振り返るとそこにはバイオレットちゃんのお父さんが居た。
「まだ何か文句が言い足りないんですか?彼女は傷付いてる話なら俺が聞きます」
「いえ違うんです……」
「まぁ、こんな店先でも何ですからどうぞ中に」
「父さん!」
「ウイレム、話を聞こうじゃないか。それからでもいいだろ?」
「でも、これ以上あかりが辛い目にあうのは嫌だ」
「ウイレムありがとう、私はもう大丈夫だから…お話伺いますどうぞ中に」
「あかり…」
私達は家の中に入り話を聞くことにした。
「どうぞ、お掛けください」そうお父さんが言うと
「申し訳ありません!」そう言ってバイオレットちゃんのお父さんは頭を下げ
「あれから家に帰りしばらく放心状態で何も考えられなくて。
娘は妻が私に残してくれた私の生き甲斐でしたから……ですがベットの下の話を思い出し探してみたんです……そうしたらこれが出てきました」
そう言って少し古くなったクッキーの箱をテーブルの上に置いた
蓋を開けてみると中には 押し花の栞や、3人が手をつないでる絵、植物園の破れた半券などが入っていた。
「これはバイオレットちゃんが言っていた宝物?」
「はい、そうだと思います。この押し花は多分私と行った公園であの子が摘んだ花、この絵はわたしと妻とヴィオ、そして………この半券は私と行くはずだった植物園の物です。」そう言ってお父さんは半券を握りしめ涙をこぼした
「あの日大型の嵐が来ると連絡が来て船を移動しなければならなくなり私は約束していたにも関わらず船に急ぎました。まさかヴィオが後をついて来てるなど思いもしなかった………その日の夕方家に帰るとヴィオが居ない事に気が付き、あちこち探しまわりました。でもどこを探しても見つからず捜索願を出しました……それがひと月半前の話です。」
「あの酷い嵐の時ですか……」メアリーが呟く
「まさか、まさかあの時になんて………ヴぅぅぅっ」
「お父さん、バイオレットちゃんは言ってました辛かったね、痛かったねと言うと ううん、急だったからわからなかったって だからきっと苦しまなかったと思います。」
「ヴィオが……そうですか それが聞けただけでも救われます 本当に貴女には酷い事を言ってしまった申し訳ありません」
「いいえ、私も母を亡くしてますそれに………悲しい気持ちはわかります。誰かを責めたくなる気持ちも。だからどうかもう謝らないで下さい」
お父さんは何度も何度も頭を下げながら帰って行った。
私はウイレムの部屋に入って窓から外を眺め考えていた(どの世界も悲しみは同じ、愛する人が居なくなるほど辛い事は無い…私は愛する人をもうこれ以上失いたく無い)
コンコン
「はい」
「あかり、少しいいか?」
「うん、どうぞ」
「あかり、前にさ俺のプロポーズは最悪だって言ったろ?」
「最悪とは言ってないわよ、ただ、臭いセリフだなって………」
「フッ、どっちにしても酷いよな」
そう言ってウイレムは私の前に片膝をついてポケットから小さな小箱を出し私の手を取り、手のひらの上に小箱を乗せると
「あかり、出逢いは最悪だし君のタイプじゃ無いけれど、でも君とずっと一緒に居たいんだ。ナイトになれる程強くも無いしお金も無い……君にあげられるのは君の涙を拭う事だけ。だけどその権利を永遠に俺にくれないか?出来ればイエスと言って欲しいんだけど………また臭いセリフかな?」
「ウイレム……もちろん!もちろんイエスよ」
「あぁ、良かった、君の心にちゃんと届いたね まぁ、考えてたセリフとは違うけど本当の気持ちだから」
小箱の蓋を開けると中にはウイレムの瞳の色と同じ薄紫色のアメジストが付いた指輪だった。
「はめてくれるかい?」
「ウイレムがはめて?」
「うん、わかった………あぁ…良かったサイズ合ってたね、父さん達に報告してもいいかい?」
「うん、喜んでくれるかな?」
「何言ってんの、さっき父さんが言ってたろ娘ってさ。父さんの中で君はもう娘なんだよ」
そしてドアを開けると
「父さん!メアリー!何してんの!聞いてたな!」
「だってなぁ」 「ねぇ」
「だってじゃ無いだろ?あぁもう、勘弁してくれよ………」
「ふふふ、お父さん、メアリーこんな私ですけどこれからも末永くよろしくお願いいたします」
「んがー我が娘ー!」 「きゃー姉さん!」
「辞めろ!二人とも離れろ〜〜〜〜!」
幸せすぎて怖いけど、お母さん、お父さん あかりは幸せになれそうです。
あれから大変でした。警部さんはちょくちょく来て手伝ってくれと言うし、ウイレムはもう待てない早く結婚しようと騒ぐし……
でも、女性にとっての花舞台ですもの彼には待て!を発動して
今は、メアリーと私用のドレスの作成中。
漫画を書いていた時のドレスを「こんな感じのドレスを結婚式で着たいよね」とメアリーに見せたらこれをウエディングドレスにしようと言い出して私用とメアリー用とデザインし直し、裁縫大好きのメアリーが自分で縫うと張り切って。
そうなんです、どうせならと言う事で合同結婚式をする事にしたんです。
こちらの世界では式そのものが無かったから無理やり神官様にお願いする形に成ったけど最後は誓いの言葉の意味を話すと快諾してくださいました。
絵の方はやっぱり私には人物画は納得出来る物が描けないから諦めましたその代わり今迄の絵描きさんが、人物画に目覚めたのか描く方が増えたのでそれはそれで良かったのかな?
そして今日とうとうその日が…………
真っ白なタキシード姿のウイレムとアランさん、そして自作のドレスを着た私とメアリーが神殿に到着するとそこには………
ローバート侯爵夫妻、お忍び姿のナーゼ様とロイドさん、ピアソンさんにキレフさん、警部さんに、何故かシードリーさんまで
祭壇前で神官様が
「貴方達は健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、富める時も、貧しき時も、妻を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くす事を誓いますか?」と
その言葉の重みを知っている私達は「はい」と答える事の大事さを何よりも感じていました。
その時始めてウイレムが泣くのを見た私も、つられちゃった。
メアリーも、アランさんも会場に居る皆んなが暖かな気持ちに包まれました………………お父さんは号泣でしたけれどね。
そしてこの式がまた大きな話題になったんです。
新聞に私達の事が乗り神殿で結婚式を挙げたいと言うカップルが増え
今ポラリス洋品店は連日大盛況でお針子さんを雇わないと回らなくて……
私達が着たウエディングドレスを着たいって人や、あのデザインした人で他のドレスはできないの?とか言われたので、私は毎日デザイン作成と(漫画を描く事は諦めていませんけどね)、憲兵所通いで忙しくメアリーはアランの奥様として家事と大好きな縫製をし、ウイレムは毎回話題の中心にいた事で有名人に成り(生き返りとか、結婚式とかね)店に立つと女性客が押し掛ける。
素はハンサムだしモテても仕方ないけれどちょっと嫉妬。
本人は今迄モテた事無かったのにと不思議そう。でもね、ちゃんと最後にこう言うの
俺の最愛の奥様に、たとえ幽霊に成ろうとも付きまとうんだって!
END