秘密の策謀
執事さんに連れられてやって来たここはザックさんの私室に近い感じかな?二人掛けのソファーに座らされお茶を勧められる それを手に取り飲もうとしたら
『お嬢さんそれは飲まない方が良いぞ、彼奴の手だが何が入っておるかわかったもんじゃ無い。忠告だ』
(げっ、マジですか………なんて人だ)
『今回の茶に入っとるかはわからんが、彼奴は茶に睡眠薬を入れて手篭めにする事が有るからな……情け無い』
(男爵、申し訳ないですけど碌なお孫さんじゃ無いですね……)
『弟の方はまともなのだがなぁ、彼奴がアーデンハイム家を継ぐのかと思うと心配で成仏出来んのだよ』
頭の中で会話してると扉が開きザックさんが入って来た。
「ん?お茶は気に入りませんでしたか?直ぐに入れ替えさせましょう」
「いえ、喉は乾いて居ませんのでお気遣いなく。それで、話とは何でしょうか?」
そう私が聞くより早く隣に座って来て私の手の甲にキスをしようとするから慌てて引っ込めた。
(何て手も行動も早い男なの!危険!)
「私は貴女を始めて見た時から貴女から目が離せなくなりました、先程から心臓も早鐘の様に鳴って居ます。{この女さっさと眠ってしまえば早かったのに}」
「それは大変ですね、どうやらザック様はご病気の様子私はこれで帰った方が良さそうですね」
「は?いえ、貴女に恋してると遠回しにですが申し上げたつもりなのです、どうやら私の思いが上手く伝わらなかった様ですね{この女は馬鹿か?俺の顔、セリフに酔わない女など居やしないのに}」
(陳腐なセリフ過ぎて突っ込みどころがわかんないよこんな臭いセリフ、ウイレム以外にも言う人居たんだね。少し怒らせて私の拙い計画でも引っかかる様に持っていかないと)
「はぁ、そうなんですか。でも、私恋人居ますので他の方と何て考えられませんから わかりませんでした。すみません」
「な、恋人が居ても私は構いません。その者より私の方が貴女に焦がれている、私の心の深さをわかって頂きたい。貴女に恋い焦がれて昨夜は眠れぬ夜を過ごした程なのです{あり得ないだろう?俺だぞ?この俺の方から口説いてやってるんだぞ!それを、振るだと?}」
「あらま、それではお疲れで眠いでしょう?私は帰りますのでゆっくり寝てくださいね」
「い、いや、お待ちを 私を見て何も感じませんか?」
「と、言いますと?」
いきなり立ち上がり上から私を見下ろしながら彼は言う
「可笑しいだろ?お前は美意識が無いのか?絵描きなのだろう?美に疎くてどうするんだ?普通は俺が見つめて甘いセリフを囁けば頬を染め目を潤ませるはずだ!{なんなんだこの女は}」などと言いながら役者張りの動きで
(あ〜あ、本心出ちゃったよ、早すぎるんじゃ無いのかな?さてとどう持って行こうかな?)
「私に惚れて欲しいのでしょうか?だとしたら普通では私は惚れたりしませんよ。」
「ほぅ、どうして欲しいんだ?この俺に」
(あくまでも、上から目線か……煽りは成功したみたいね)
「そうですね………、私だけを愛してる、他の女など目に入ることなど決して有り得ないと証明してくれないと信用できません」
「フン!その程度の事で良いんだな?そうしたら俺の為に絵を描くと約束するのか?」
「えぇ、私に誓いを立ててくださればその美しさを絵の中に描き留めます」
「そうだろう?俺の美しさをこの世に残さなければ神に対して申し訳ないだろう?」
「そうですね、ただちゃんとザック様の気持ちの現れだとわかるようにして頂けますか。私だけのザック様なのだと思わせてくださらないならこのまま悲しいですが…………帰りますから。(てか、もう帰りたいんだけれどね、こう言う男って漫画の世界だけだと思ってた)」
「よかろう、ならば書面にしたためよう。今書くからそこで見てるが良い{ふっ、やはり女だな最後には俺に縋るのだから馬鹿は扱い易くて良い}」
(はぁ〜、どっちが馬鹿で扱い易いのかな。)
「ザック様、もし私が貴方の為だけにこれからも絵を描くと言ったら喜んで貰えますか?」
「!も、勿論だ、この先もずっと俺の美しさを書き留めると言うのなら俺はお前だけを生涯愛すると誓ってやっても良い」
「嬉しいです。これからは私が貴方の為に財産も全て捧げます(無いけれどね)でもその替わりにザック様は私に何を誓って下さるのですか?」
「お前は何を望むんだ?{これで、この女が俺のパトロンに成れば金は使い放題か……しかも俺の絵も嫌という程描かせられる}」
「貴方の美しさを私が描く権利を、その為にも私を安心させて下さいね。私は絵描きです紙の上の物しか信用できませんだからどうか、金輪際他の女性とは付き合わない、お金も私以外から受け取らないと」
「何故そこに金が絡むのだ?」
「私が他の国の人間だとご存知ですよね?」
「あぁ、勿論知っている{その産まれの神秘さも絵に着く付加価値なのだからな、今やこの女の価値は計り知れない物だ}」
「(ウッソ〜いつの間にそんな事に成ってたの?)私の国では男の価値は一人の女性から貢がれるお金の金額で決まるのです。多数の女性から貰っても価値など有りません
それどころか移り気な男として蔑まれてしまいます。卑しく!醜い男!だと思われます
女性は男に貢げたお金の額で愛の重さが決まるのです。私はザック様にそんな醜い!と蔑まれる様な事はして欲しく有りませんし男の価値を下げて欲しくないのです。だから私がどれだけ貢げるかで愛の証明をします。(醜い強目に連呼してやったわよ!貢?そんな話は聞いたこともない作り話だけれどね、有ったら嫌だし)」
「なんと!よかろう、その代わりお前も俺の許可なく描かないと誓うか?{俺が醜いだと!そんな事は誰にも言わせないこの女さえ居れば他の女の金など微々たる物この女を使って皇族や、爵位持ちからも金が取れる これで俺は安泰だ!}」
「えぇ、構いません約束します。」
そうして私はザックさんから誓約書を手に入れた。
その誓約書にはザックさんから私へはザックさんの許可無く絵を描かない事
私からザックさんへは私以外の女性からお金は受け取らない事。
もし受け取った場合この誓約は無効となる。
そして最後に生涯あかりだけを愛し抜く。
と書かれてる。その事を確認して両者サインを書き込んだ。
許可なく描かないなんて別に構わないわ、ナーゼ様の絵はもう描き終わってるし
私が本当に欲しいのはウイレムとの 時間なんですもの。
それにこの誓約書には穴があるのよね彼は気がついて居ないけれど
お金は私以外からは受け取れないのよ!
貴方が他の女性達から受け取った時点でこの誓約書は私のみ有効になるのよ。何故なら『もし受け取ったら誓約は無効』であって私が勝手に絵を描こうがその事で無効になる事は無いのだから。
誓約書などの書類はちゃんと読んでからサインしましょうね!
私にとって必要だったのは最後の一文のみだから。
後はどれだけお金がない生活を我慢出来るかしら?
(ベルガー様お願いしますね)
『お前さんが我が男爵家の本当の嫁だったら安心だったのに、誠に残念だよ』
(お孫さんもう一人居るのでしょう?その方に期待しますね。)
家に帰るとホッとする。ザックさんが美に執着するだけの人で良かった私程度の知恵でザックさんから誓約書を掠め取るなど普通は出来ないでしょうね。
それにしても、どの世界にも愛を食い物にしてしまう人は居るけれど悲しい
だからこそこれに懲りて反省してくれると良いなと思う私は甘いのかな?
次の日早速ザックさんからローバート邸に行けと連絡が来た
まぁ、そう仕向けたのだけれど
私は向かい、マーガレット様からザックさんがどの様に私の事を話したか聞くことにする。
「見てこれ」私はマーガレット様から渡された手紙を見る
そこには[宮廷画家とされるあかり殿は我がアーデンハイム家と契約する事となり私ザック・アーデンハイムの許可なく今後一切勝手に絵を描くことが出来ません。これからも、私ザック・アーデンハイムと画家あかり殿を何卒宜しくお願い申し上げます」
(私いつの間に宮廷画家に成ってたんでしょう??)
「アーデンハイム家も良い笑い物だわね」
「そう仕向けて仕舞ったのですけれどね。ザックさん以外のアーデンハイム家の方々には申し訳ないです」
「気にする事は無いわよ、今迄放って置いたツケがここで出ただけなのですもの。でもこれで、アーデンハイム家現当主のブラニック様も動かざるおえないでしょうね。そうなると、ザック様は慌ててお金をかき集め補填しようと動くでしょう?」
「はい、それが狙いでも有りましたけど」
「さぁ、どう動くか楽しみだわね。安心してね あかりさんの事は我が家がお守りするわ」
「すみません、ご迷惑をお掛けする事になりますがよろしくお願いします」
「良いのよ、私共の方からそうしたいと言い出したのですもの」
私とマーガレット様は二人して顔を見合わせ微笑み合っていた。