家族の食卓
私はピアソン絵画店に向かった
ピアソンさんにお願いをする為に。
「ようこそいらっしゃいました あかりさん。いや〜今や飛ぶ鳥を落とす程の勢いで人気が出て来ていますよ。私も嬉しい限りです」
「有難うございます。ピアソンさんのお陰でナーゼ様とも親しくさせて頂いてます」
「そうですか!良かった。ところで今日は何か?」
「はい、図々しいとは思うのですがお願いが有りまして。」
「ほうほう、わたしでお役にたてますかな?」
「実はどなたか私に絵を描いて欲しいとか、描いた絵が見たいとか仰る方が居ないかと思って」
「ふむ、失礼ですがお金が要り用なのでしょうか?」
「いえ、そうでは無いのですけど。えっと私の描く絵がどれ程の物なのか評価して欲しいなと思いました」
「わたしの評価ではいけませんでしたか?」
「とんでもないです!ピアソンさんのお陰で今有るのですもの。そうでは無くてえっと、偉い方?はどんな絵とか好まれるのか知りたいなと」
「成る程、向上心ですな。宜しいです では丁度ローバート伯爵から貴女を紹介して欲しいと話が有ったところです。どうでしょう?」
「有難うございます!ピアソンさんにはご迷惑掛からないようにしますのでお願いします。」
「いやいや、頼って頂けるとはこちらこそ画商冥利に尽きますよ」
そう言ってその場で紹介状を書いてくれた。
私はその紹介状を手にローバート伯爵邸に向かう事にする
「凄い………伯爵と言うから凄いだろうとは思っていたけど。まるで東京駅ね。門から邸のドアが見えない………」
門横に警備の人が立っているので取次をお願いして待っていた
少しすると小さな馬車が門前に止まり馭者さんがドアを開けてくれて「どうぞ」と
(はわぁ〜屋敷から馬車でお迎えが来るなんて夢の世界だわ…それに何て綺麗な庭なんだろう。)
屋敷のドア前には執事さんかな?男の人が待っていてくれてドアを開けてくれた。
フロアで待っていると階段上から40代位の金色の髪が鮮やかな美しい女性が降りて来て和かに微笑んだ
「ようこそ御出で下さいました。本日は主人クリフト・ローバートがあいにく不在で申し訳有りません。わたくしは妻のマーガレット・ローバートと申します」
「急に前もってのアポイントも無くお尋ねして申し訳ありません。あかり と申します。こちらがピアソンさんからの紹介状です」
「まぁ、ピアソン様はこんなにも直ぐにお聞き入れ下さいましたのね。嬉しい事 セバス」
「はい、奥様用意は出来ております あかり様どうぞこちらへ」
そう言ってサロンに通された。
執事さんはセバスさんと言うのね、あ〜惜しい後チャン付いてたらパーフェクト!
「こちらの方が落ち着いて気負わず話せますでしょう?どうぞ、気楽になさってくださいね」
「お気遣い有難うございます」
「フルナーゼ様からお聞きしてましたのよ。絵も見せて頂いて是非私もお逢いしてみたいと思ってピアソン様にお願いしてましたの」
「若輩者で失礼がないか心配ですけれども」
「ふふ、とんでもないわ。私も普段はフルナーゼ様の事はナーゼ様とお呼びする事を許される程には親しくさせて頂いています…と、硬い話し方はここまでね。私実は身分は低い出なのよ准男爵なので」
「!」
「ふふっ、准男爵は一般市民だけど爵位を王家から頂いたと言う一代爵位の家柄なのよ。だからあかりさんと余り変わらないのよ 」
「一代爵位」
「旦那様が市井で私を見初めてくれてどうしてもと言ってくれたけど爵位が無い私とだと身分の差があるから婚姻出来ないの、だから王様に旦那様が頼んで私の実家に准男爵の位を下さったの」
「そんな事が有るんですね……」(うわぁ漫画にしたい)
「だから、私と話す時は普通に話してくれて構わないからね!」
「うわぁ、凄く嬉しいです、ここに来るまでお腹痛かったから!」
「そうよね、緊張しちゃうわよね。でも、ピアソン様ならそんな人とあかりさんを会わせたりしないと思うわよ。彼はとても良い人ですもの」
「はい!私もそう思います」
「旦那様もとても良い人よ、きっと貴女の事も気にいると思うわ」
「そうだと嬉しいです。それでマーガレット様は私に何を話したいと思われたんですか?」
「それはね、私がではなく あかりさん貴女が私と話したいのでは無いのかと頼まれて」
「え?私がですか?あ、もしかしたらナーゼ様」
「えぇ、ナーゼ様に頼まれたの。私が出ては大事でやりにくい事も有るだろうけど貴女の力にも成りたいと私に相談されたのよ」
「わ、わたし幸せですそんなに思って頂けていたなんて…何もお返しもできないのに」
「あかりさん、友にお返しを求める人は居ないと思うのよもしも今度ナーゼ様が困った時に貴女がお助けすれば良い事。私も歳は上ですけど貴女のお友達になれたら嬉しいわ。だから頼って頂戴ね」
そう言ってマーガレット様は嬉しそうに色々と話してくれた。
(お母さん、こんなに優しい人達に逢わせてくれてありがとう きっとナーゼ様も、マーガレット様も全て知ってるんだろうな。でも、あえて私が頼むまで待ってくれていたんだろう…わざわざピアソンさんにも私が訪ねやすい様にしていてくれたんだろうな。だとしたらお願いしてみよう 手を貸して欲しいと)
ローバート伯爵邸から帰ってこれから私がする事をもう一度考えてみた
マーガレット様が開くお茶会に招待してもらいザック様を紹介してもらう。
美しい物好きで、浪費家の彼だからきっと絵を描いて欲しいと言うと思う。
私は彼の絵を描く事で彼に近づき情報を探る。
出来ればサーシャさんとのお金のやり取りの証拠が手に入れば良いけれど欲張るのは止める!
だいたい漫画だと欲張り過ぎて主人公は危ない目に合うんだもの。
何か少しでも情報が手に入ったらラッキー位で考えて起きましょサーシャさんとかち合っても駄目だよね気を付けよう。
よし!後はマーガレット様からの招待待ちだよね
今日はメアリーにこっちの料理を教えて貰う約束をしているからキッチンに行きましょ
「そう言えばメアリーはいつアランさんと結婚するの?」
「えー急に何?兄さんの事もわからないのにまだ先だよぉ」
「そうなの?」
「アランもそう言ってるし…正直言って色々悩んでるんだよね」
「何を悩んでるの?」
「この店の事や、住む家とか、まぁ色々?」
「メアリーはこの店継ぎたいの?」
「ううん、逆。私ねデザインを形にするのは好きなのでも売り子とか、店を廻すとかそう言うのは苦手なのよね」
「縫製が好きなのね」
「そうそう、そうなのよ だから出来れば兄さんが継いでくれたら嬉しい」
「そっか、ウイレムがお店切り盛りして メアリーが作るのね。良いじゃない。ウイレムだってきっと良いと言うと思うわよ」
「そうかなぁ、兄さんそう言ってくれたら嬉しいなぁ」
[あぁ、俺もそれで良いよ]
(!また、ウイレムったら急に…心臓に悪いよ)
[ごめん、余り真剣に妹と話してたからさ 声掛けられなかった(笑)]
(これから夕食だよ、そっちは終わったの?)
[あぁ、はぁ〜 あかり俺早く退院したいよ]
(どうしたの?また何か有ったの?)
[俺新聞であんな事描かれてるなんて知らなかった。もっと強く否定すれば良かった……あれじゃ、サーシャと別れても俺もあかりも酷い奴だと思われる。俺は男だし何を言われても良い、でもあかりが酷い扱いを受けるのは我慢出来ない]
(ウイレム、私大丈夫だよ。わかってくれて信じてくれる人も居るから)
[そうじゃ無いよ、俺が嫌なんだ。俺のせいであかりがって考えるのも嫌だ]
(私幸せよね、こんなに思ってもらえるんだもの。 それよりもウイレム、退院したらサーシャさんの家に行くの?)
[はぁ?行くわけないじゃん。やっとあかりに本当の意味で逢えるのに邪魔されるなんてとんでもない]
(なら私は大丈夫、ウイレムが側に居てくれるならそれで良いよ)
食卓に家族と揃い食べ始めた私を楽しそうに見ているウイレムと幸せなひと時