星空と優しい人
このところ気分の浮き沈みが激しくて涙もろく成ってしまってるけど、いつまでもそんな気持ちでは居られない。
そう思わせられる事が次から次へとやって来る
ウイレムと、サーシャさんの事も有るし、ウイレムのリハビリが済み退院した後わたしが今まで通りこの場所にいる訳にもいかないから部屋探しを始めないといけないし、アリスさんの事も気になる
期限を言われた訳では無いけれどナーゼ様の姿絵も仕上げて行かないと……
あ〜もう、何から始めるべきなのか頭が痛い
部屋の窓を開けて暖かくなり始めた降る様な星空を見上げる
(今頃お父さんとお母さんは わたしがこの世界に来た事をどう思っているのかな?それとも知らないのかな?)
そんな事を考えて居ると不意に後ろから抱きしめられた
(!) [ごめん、ビックリさせた?]
(ウイレム……ビックリはしたけど、逢いに来てくれたの?)
[こんな時でも無いとまだ逢えないしね、もうすぐリハビリ終わるよそしたら帰ってくるから。こんな生きてるのか死んでるのかわからない状態じゃなく逢えるね そしたら今度はちゃんと父さんやメアリーに あかりを改めて 紹介するから]
(ウイレム、貴方が帰って来た時の事だけど私部屋を借りて出ようかと思ってたの。ここはウイレムの部屋だし お陰様で絵を描く事でお金も何とかなりそうだしその事も相談しょうと思ってた)
[その事は俺も考えてたよでも、あかりが一人暮らしするのは心配だ。だから俺がここを出て部屋を借りる事にする。そうすれば俺も安心だしね]
(そんな、ここは貴方の家なのよ!出て行くべきはわたしの)
その先を話そうとする私の口を不意にウイレムが塞いだ
余りにも急な事で目を瞑る事も無いキス最初のキスとは違いウイレムからの
[あかり 俺は君を寂しい思いでもう泣かせたく無い…少なくともここに居れば誰かが君のそばに居てくれる。本当ならいつだって俺が側に居たいけど夜こうして又君が一人で泣いてるのかもしれないと思うのはもう嫌なんだ。だからこれは俺の我儘だよ ね、あかり 俺の我儘なんだ]
(違うよね、それはウイレムの優しさでしょう?私から言え無いから貴方が言ってくれた)
[あ!あかり 流れ星だ見て]
(話し逸らしたわね…私の世界では流れ星が消えるまでに願い事を3回唱えられたら叶うと言われてるのよ)
[俺の世界では天の国から誰かが逢いたい人に逢いに来たと言われてるんだよ]
(こんなにも違う世界の二人が出逢えたのね)
[少なくとも俺はあの出逢いに感謝してるよ]
(凄く面白い出逢いだったけど、悪くは無いわよね) [あぁ、悪くない]
どちらからとも無く見つめ合う先に重なる口づけが今は優しい
朝眼が覚めると昨日より幾分スッキリとした自分に可笑しくなる
1つだけど問題が解決したのかな?
朝食の準備をしているメアリーに一声かけて顔を洗いに行くと病院に泊まっていたお父さんが帰って来ていて
「あかり、もうすぐウイレムが帰ってこれるかもしれないぞ」と
昨日聞いては居たけど「本当ですか?嬉しい!」と喜ぶ
「ただな、サーシャ嬢が自分の家にウイレムを連れて行くと言い出してな…」
「え?」(それは、聞いてない)
「彼女なんだし、うちの方が世話をし易いからと、言い出してな。医者の奴もそれに賛同して家族の俺らの言う事も聞かないんだ、おかしいよな?」
「ウイレムは?ウイレムは何て言ってましたか?」
「勿論とんでも無いと断ってたさ、サーシャ嬢は彼女じゃ無いと否定もな。だがサーシャ嬢はまだ、記憶が可笑しいやっぱり私が側で介護しますってな」
「そ、んな………」
「あかり、俺とメアリーで絶対にウイレムを連れて帰って来るだから安心して待ってろよ」
「はい………」
何故サーシャさんはウイレムに固執してるの?一体何がそうさせてるの?
(もう、ただ待って居るのは無理動けるのは私しか居ないのだもの まずは会えないけれど病院へ行ってみよう)
私はサーシャさんの周りに話せる人<幽霊>は居ないか探す事にした。
負けない、運命の人だと言われたんだもの ううん、彼は言われる前から彼氏だったのだから自称だけど。
そうと決めたらまずは朝ご飯をきちんと食べて出発よ!
待ってなさいよサーシャさん!負けないんだからね
病院に着くと案の定ウイレムの病室の前にはバンデロード家の方らしい人が入り口に立っていて逢わせてくれそうも無い
ならば!わたしはウイレムの病室の前にある椅子に座り辺りを見回す……(居た)
病室の閉まったドアから顔だけ出してこちらを見てるお爺さんが
私は考え話しかける(お爺さん、聞こえますか?) 『!!』
(貴方の目の前に居ます)
『こりゃビックリしたわい、お前さん儂がみえるのか!』
(はい、見えるし話せます。少しお話しさせて貰えませんか?)
『フム、もしやお前さんは中に居る男の本当の彼女さんじゃろ?』
(はい、わかるんですね。どうしてこう成ったのか知りたくて……教えてもらえませんか?)
『そうじゃろうのぉ、まったく孫にも困ったもんじゃ』
(お孫さんなんですか?サーシャさんって)
『そうじゃよ、小さい頃は可愛い子じゃったが、周りが悪過ぎた。あれを甘やかすだけ甘やかし 何をしても叱る事をせんかったから我儘放題に育ってしまった』
(何故こんな嘘をついてまで彼女はウイレムに付き纏うのですか?)
『そうさなぁ、あれがしてるのは見せつけみたいなもんじゃろうな?』
(それは、アーデンハイム男爵の息子さんにですか?)
『だろうのぉ、そんな事してもあの男はもう見向きもせんだろうに あんたにも迷惑掛けてすまんのぉ』
(それだけの事でしょうか?)
『と言うと他に何かあるのかね?』
(実は………)私はウイレムから聞いた男爵家の内情に付いて話した
『フム、なるほどのぉ 合点がいったわぃお前さん今新聞で何を言われてるか知ってるかい?』
(すみません、新聞は見ていないんですと言うより読めないんです)そう、吹き出しの言葉は心の声を私にわかるように成ってるお陰で読めるのだけど、只の活字の羅列だと読めない………文字教えてもらわないとだな。
『今新聞ではの、世紀の悲恋から幸せに成った恋人達と噂されとるんじゃよ あれがチヤホヤされ尚且つそこに金が絡んで来ておるのだからまだ当分お前さんの彼氏を離す事は無いかも知れんのぉ』
(な、何ですって?何故そこにお金まで?)
『それはの………』
それは、サーシャさんが新聞社に持ち込んだネタなのだと。
彼女を愛しながらも殺された男と、方や悲しくも男の死を嘆き一度は諦めた女性。
男は女性への思いを諦められず生き返り二人は今運命を乗り越え結ばれたと 毎回恋愛小説並みに盛り上がり新聞は売れに売れサーシャさんへは同情と新聞社からお金が入るという事らしい。
そしてそのお金はザック・アーデンハイム男爵の元へ
裏ではザックさんと、サーシャさんの密会は続いて居る………。
(あの、お孫さんを泣かせる事になるかも知れないですけどその事暴いても良いですか?)
『何を今更じゃよ、あれの我儘も可愛いものなら見逃せるがの 他所様を泣かせる事で通してはならんのじゃよ。バンデロード商会はお客様に対しては信用、信頼を第一にして儂が立ち上げた店じゃそれを、孫の我儘で終わらせる訳にはいかん働いてくれている従業員にも申し訳が立たん』
(すみません、ありがとうございます)
『なになに、お前さんは被害者じゃろ?謝る必要など無いわい。あれの眼を覚まさせてやっておくれ。人を不幸にして得る幸せなど無いのだとのぉ』
そう言ってお爺さんはまた病室の中に消えていった。
ありがとうお爺さん、ウイレム待っていてね。