星の彼方に
あれからほぼ毎日の様にフルナーゼ王女に逢いに城に向かい絵を描き続けていたけど、そのせいもあるのかウイレムには全然会えない。
もうあれからだいぶ経つのに音沙汰ないしどうしてるんだろう。
何だか腹も立って来る 少しくらいは思い出してくれてるのかな?
男爵の事も気にはなるけれどいっぺんにアレもこれもは失敗に繋がりそうなので今は絵の方に集中している。
それに何と言ってもフルナーゼ王女様と話すのもとても楽しかった
「あかり さん、もし良ければ私の事はナーゼと呼んで下さいませんか?出来れば友と呼べたらとても嬉しいのですけれど」
「良いのでしょうか?私なんかが友達になっても…でも、良ければ私の事も呼び捨てで構いませんので」
「はい!では あかりと呼ばせて貰いますね。それで2人の時はもっと普通に話して下さい その方が親しみやすいでしょ?」
「不敬罪だと、ロイドさんには怒られそうですよね(笑)」
「ふふふ、あの者はいつも怒ってますから気にしたら負けなのです。私はこの頃この時間が楽しみで仕方ありません町の様子、人々の暮らしどれもわたしが今まで知らなかった事ばかりで毎日ドキドキするのです 城の中に居ながら外の人々の暮らしぶりがわかるなんて なんて素敵なのでしょう」
「今日はポラリス洋品店の家族を描いて見ましたが如何ですか。」
王女様には自画像だけでなくいろんな物を描いて欲しいと頼まれた。
外の世界を知らない私に見せて教えて欲しいと。
私が描いた絵をいつも瞳をキラキラさせながら楽しそうに見てはこれはなぁに?と聞いてくる
そして時間が来るといつも残念そうにしながらまた来てねと言い大事そうに絵を抱きかかえながら部屋を後にする王女様
この頃はロイドさんも「王女様があの様に明るく表情を変えられる姿を久しく見ませんでした。この頃は食事も良く召し上がられる様になりお顔の色も良く、あかり様のおかげですな{毎日とても楽しそうで、幸せそうで良かった}」
「いいえ、こちらこそ拙い絵なのに喜んで頂けて嬉しいです。また来ますとお伝えください」そう言って城を後にした。
王女様の絵を描く事が知れ渡り出したお陰か何人か絵を描いて欲しいなんて依頼も入る様になりやっとお父さんや、メアリーに宿代を渡せるように成ったから凄く嬉しい。
その点はピアソンさんにも、キレフさんにも有難いなと正直感謝しかない
最初はそんな事は気にしないでと言われたけれどお願いだから受け取って欲しいと言うと普通は喜んで住むものなのに律儀だねと でもね
良い人達だからこそ肩身が狭かったんだよね、ウイレムの事では嘘ばかりで騙してるって負い目も有ったから。
お城に行って気が付いたんだけど何故私の絵がこんなに評価されるのか
それは、この国の絵描きさんの描く絵が抽象的な物が主体で人物や静物的な物が見当たらない事折角あんなに色が有るのに全部使い切って描かれた絵には出合わない ……… 勿体無いな。
描けない訳ではなのでしょうけども、城に飾ってある絵も町で見かける絵も抽象的な物ばかりなのだから私の絵が受けるのも今の所描く人が居なくて見た事が無かったってだけなのかもしれない。
悲しいけど本格的に美術を習った訳でも無いし、どちらかと言うと我流だし本格的に習った人には到底叶わないとわかってる。
でも、ナーゼ様が喜んでくれるのだからそれで充分だと思う。今まで私が描いた絵であそこまで喜んでくれた人は居なかったんだもの………
こんなに描くことが楽しいのも久し振り。
夕食を食べながら今日有った出来事を家族で報告しあう
「今日も来たわよ」 「え?今日も?」 「うん、今日もよ」
この会話でわかると思うけれど、そう 毎日のように来てるのは あの キレフさん
「で?今日はなんですって?」
「いつもと同じよ、あかり さんはご在宅でしょうか〜?いつ頃お帰りになりますか?いつなら逢えますか?ってね」
「はぁ……で、メアリーは何て答えたの?」
「さぁ?いまは王女様のご要望で毎日のように城に出向いてるのでわかりませんって答えたわ」
「困ったなぁ、私に何の用が有るんだろう?」
「用事なんて有る訳ないじゃ無いの、ただ あかり に逢いたいだけよ」
「私そんなに好かれる要素無いけど…」
「きっとあれよ、あかり は兄さんやキレフさんみたいに一風変わった人に好かれるのよ」
「人を変人みたいに言わないでよ…それに私キレフさんの事は何とも思ってないわよ」
「うん、わかってる あかり は兄さんが好きなんだものねあの葬儀の時や病室の時のこと思えば 本当に兄さんが好きなんだってわかるわ 兄さんは幸せ者よねぇ」
「あ〜あれね、思い出すのも恥ずかしいから忘れてね」
[何の話ししてるの?俺が幸せ者ってなに?]
(うわっ、お帰り急に話しかけないでよびっくりするじゃないの)
[ハハ、ただいま いや〜幽霊の身体って便利だよね、お腹は減らないしさ何処にでも入り込めるし 普通にしてれば誰も気付かないしね]
(楽しそうで何よりね、お疲れ様でした。色々聞きたいところでは有るけどごめんね今日は疲れたから明日聞くのでも大丈夫かな?)
[え?うん、大丈夫だけど何か有ったの?あかり こそ大丈夫なのか?]
(………)
「お父さん、メアリーごめんなさい今日は疲れたから先に休ませて貰いますね」
「おぉ、おやすみ あかり気にせずゆっくり休め」
「おやすみなさい あかり」
私は自分の食器などを片付け二階のウイレムの部屋に入る
(ウイレム、明日話すねごめん今日は寝るね)
[あぁ、おやすみ ]
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俺は食堂にいる家族の元で2人の会話を聞いている
この何日か俺の居ない間に何が有ったのか あかりが何故あんなに素っ気ない顔をしてたのかその訳を聞いた時何故だろう 胸の中でぞわぞわとした思いが湧き上がって来てどうしょうもなかった。
こんな気持ちは初めてだ 妹とお気に入りのおもちゃを取り合った時の気持ちにも似て居るけれどそれよりもなんだか………
あかり 良く眠れると良いな、俺の事でも大分嫌な思いさせてしまってるし……
[ごめんよ あかり ………あかりは そのキレフって奴のこと好きなのかな?………イテッ なんだ?胸が痛いな幽霊なのにな]
今の俺は眠気とは縁遠くて皆んなが寝静まった夜一人きりなんだなと思い知らされる 今外を歩いてる殆どは俺と同僚なんだよな
家の屋根の上から町を見渡しながら 身体は生きようとしてるのに何故俺は今もここに居るんだろう目覚める事は出来ないのかな?。
どうすれば戻れるのかな?そんな事ばかり考え出してる
でも、答えが無い。
さっきの話を聞いてからイライラするな 俺どうしたんだろう?
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どの位ウイレムと離れると私の考えてる事がわかるのかわから無いけれど、部屋を隔てると聞こえない事はこの間の些細な喧嘩の時にわかった。
今ウイレムはこの部屋に居ないから私の考えてる事はわからないでしょう?
別にウイレムに聞こえても困る事ではない筈なのに何故か聞かれたく無いなと思ってしまう。
(キレフさんの事私の勘違いだと良いんだけど、考えてる事がわかるのは良い事なのか悪い事なのか 知らなければ済む事も有るし 知った事で助かる事も有る でも、今は知らない方が良かったな。キレフさんも良い人みたいだし友達ならなれそうなのに)
そんな事を考えながらいつのまにか眠りについていた