フルナーゼ王女
いくら言ってもピアソンさんが中々引いてくれない……
無理だと断っても「貴女しか居ない、助けてくれ」その繰り返し。
「私はこの国の者では有りませんし王女様に気に入って頂ける様な絵が描けるとは思えないです。もし、気に入られなかったら死刑とか……そんなの嫌です」
「は?死刑?王女様が気に入らないと死刑に成るのですか?いやいやそんな事は有りませんよ!その程度で死刑に成ってたらこの国に人は居なくなりますよ?{この人しか居ない承諾してくれるまでは帰らないぞ}」
と、少し笑いを堪えた様な顔でピアソンさんは言うけど
「そうですよ あかり さん大丈夫です貴女の描く絵の素晴らしさは僕が保証します!もし、心配でしたら僕も一緒に同行しますから取り敢えずお逢いして話して見るとかは如何ですか?{昨日初めて逢った時からこの人こそ僕の探し求めていた女性だと感じたんだ}」そう言った彼の視線が熱い気がするんだけど
(ん?キレフさんの吹き出しも怪しいんだけど?)
思わずメアリーをみるとゲッ!やっぱりメアリーもそう感じてるのね
{このキレフさんて人もしかして あかり さんの事好きなの?あかり さんは兄さんの彼女なんだからね!}
(これは、非常にヤバイ気がする漫画とかの見解だと絶対にアリスさんが絡んでくる気がするよ!これ以上キレフさんには関わりたくないかも!)
「あの、わかりましたお逢いするだけしますけど、キレフさんはお店もありますし私とピアソンさんとで行きますから」
「オォ!ありがとう御座います。昼食後にもう一度お伺いしますのでその時に一緒に城に参りましょう」
「え?今日?もう逢いに行くの?」
「はい!あかり さんの気が変わる前に行かねばなりませんからね。」
「あかり さん、やはり僕も一緒の方が良いのでは無いですか?{是非お供させて下さい!}」
「いえ、結構です。大丈夫です キレフさんはお店を」
「わかりました、あかり さん後日また報告を心待ちにしてますね{あぁ、何てお優しい方なんだ自分の事よりこの僕の事を気にしてくれるなんて}」
(どんどんヤバイ方向に向かってる、どうしよう はっきり言いたいけどまだ言われてもいない事を断るなんて出来ないよね……)
そう言い残して2人は取り敢えず帰って行ったけど、何なのよこの展開!
午前中頭の中はこの後どう成るのかその事ばかりで メアリーもお父さんも私に何を着せようかとそんな話で盛り上がっているし 今直ぐにでも逃げ出したい。
約束通りピアソンさんは午後一で私を迎えにやって来て、私はさらわれる様に馬車に詰め込まれメアリーとお父さんに見送られながら洋品店を後にした。
気分はドナドナされる牛の様………
前方に真っ白でそれこそ漫画の世界で描いたようなトンガリ屋根の宮殿が見えてくる(わぁ凄い本当に有るんだこんな素敵なお城って まるで夢のようってこの世界自体が夢の様なんだけど)
城に着くとすぐさま控え室に通されしばらく待つ様に言われた。
これこそメイドって感じの女性がお茶をワゴンで運んできて入れてくれるのだけど正直言って今は美味しいのかさえもわからない。
死刑宣告を待つ犯罪者の気分を充分に味わって居るから
どれ程待ったのかわからない魂が抜けて居る様だったから、外に控えていた男性がフルナーゼ皇女様がおいでになりましたと告げ
席を立って頭を下げた状態で待つ様に言われた。 それから直ぐ皇女様が部屋に入られて
「どうぞお座りになって気楽になさって下さい」と
私とピアソンさんは2人して席に着いたそして顔を上げたその先には「!」
「ようこそ私の我儘のせいでご迷惑お掛けしてしまって御免なさいね」
そう言った皇女様はとても美しい方だった。腰まであるプラチナブロンドの髪、サイドを編み上げ頭の上で束ねている 目も大きめの二重の翡翠色小さくまとまった口元は少し上がり薄いピンク色 これぞ ザ!プリンセスそのものだった。
(無理だろ!こんな美しい人を漫画調の絵で描けと言うのだろうか?怒られるよ)
「あの、私がこの様な場に来て良いものなのか今でも心臓が飛び出そうなのですけれど」
「これ、フルナーゼ様がお話しても良いと言うまで話してはなりません!」
「す、すみません!」
侍従さんらしき人に怒られた!
「もう、ロイド その様に言ってはせっかく来て下さったのに申し訳ないでしょう?御免なさいね。お名前を伺ってもよろしい?」
「ハッ、私は絵画商のピアソンと申します、そしてこちらが今朝ほどロイド様にお話しした画家の あかり さんであります。あかり さん挨拶を」
「あ!はい、あの あかり と申します。」
「あかり さんですのね、お年をお伺いしてもよろしい?」
「はい、17歳です」
「まぁ!同じ歳ですのね どうぞ仲良くして下さいね。私歳の近いお友達が居りませんの これから何度もお逢いする事に成るでしょうし沢山色々なお話が出来たら嬉しく思います」
(これって決定事項に成ってるの?もう断れないのね……)
「あの、私なんかの絵で良いとはとても思えないのですけど、まだ若輩ですし」
「私貴女の書かれた絵を拝見しましたのよ。とても柔らかく優しそうで綺麗な色使いがとても優しくて気に入りましたの。是非貴女に私の絵を描いて頂きたいとその時思いました でも、そう一言漏らしてしまった為に無理やり此処に連れてこられたのだとしたら本当に申し訳ないわ御免なさいね」
(あ、駄目だよねこんなに良い王女様にお願いされたら断れないよ…でも、背景と人物だと全然違うんだよね。漫画とだとタッチも何も違いすぎて上手に描ける自信が無いよでも…………。そうだよねダメ元で描くだけ描いて気に入らないと言うならそれまでなんだし!)
「わかりました。でも、もしも気に入らない時はご容赦くださると約束して下さいますか?」
「王女様に向かって何という」
「ロイド、お願いだからしばらく口を閉じていて!貴方が何か言う度に あかり さんが怖がってしまうじゃ無いの。こちらが無理を言って来て頂いたのよ礼を尽くすべきはこちらでしょう?」
「ハッ、申し訳ございません」
「あかり さん、どうぞ私の友達に成ったとお思いに成って気楽に接して頂いて構わないのです。私の方が無理を言って居るのですから。ただ、本当に貴女の絵が素敵だと思ったのです。{どうぞお願いです友達になって欲しいのです}」
(本心からなんだ、何だか嬉しい。この世界に来て心を許せる人に逢えるなんてウイレム一家の人達以外で初めて)
「私、背景は描けても人物は得意では無いのです。それでも構いませんか?描くだけ描いてみますけれどとても気に入って貰えるとは思えないと言うか何というか……」
「えぇ構いませんわ、話し相手になった気持ちで遊びに来て下さればそれで。気分が乗らない時はお話だけでも良いのですお待ちしてますから。ロイド、もし あかり さんがいらしたら粗相のない様にお通しして頂戴ね。」
「畏まりました。」
「あかり さん、次からは門番にでも言ってくださればロイドが案内してくれますから。また、近いうちにでもいらして下さいねお待ちしてますわ」
そう言って王女様は輝くばかりの笑顔を残し部屋を後にした。
残された私は只々溜息と夢心地の中にいたのだけどピアソンさんが頑張って下さいねと言った一言で現実に戻されたのでした。