神無月 私の冬 2篇
神無月
シーンとした杜に神様はいない
出雲へ出張したと聞いた
さわさわと杜に風が吹いた
杜の上にぽっかりと空いた空の井戸
銀色の船が細い透き通るような雲の帆をつけて
過ぎて行った
出雲から遠い神社では
カラカラサラサラと落ち葉が駆け巡る
猫が一匹ふわりと賽銭箱に飛び乗って
鈴のついた縄に飛びつく ジャラジャラン
*** *** *** ***
わたしの冬
ぼんやりと半透明の白い月が薄水色の空に
幽霊のようにふわりと浮かんでいる
私の心は空っぽですっかりと凍てついてしまっている
かじかんでしまった感性は伸びきった弦のように生き絶えた
わたしは冬枯れ
言葉は絶滅を遂げた
何も感じず 何も思えず、何も書けず
失望と焦りが手を取り合う
冬から逃れることはできない
灰白色に塗りつぶされた朝
わたしの影は薄い
冬が来た