レディアント・ロード 番外編 「エイプリルフール」
「今日はエイプリルフールだぞ」
突然、イクトに呼び出されたヒロム、ガイ、ソラはイクトの言葉を聞き流し、ため息をついた。
「ええ!?
反応薄くない!?」
「あのな、イクト……
エイプリルフールって正午まで嘘ついていいんだぞ?」
「そんなことは知っている」
「今何時だと思ってんだよ……」
ソラに言われ、イクトは携帯電話の画面を見て時間を確認した。
今の時刻は十二時半。
「大丈夫、世間ではお昼ご飯の時間。
つまり……」
「うるさい」
「人が話してるんだから聞いてくれるかな!?」
ため息交じりに話を遮ろうとするヒロムにイクトは嘆くように告げる。
ところで、とガイはイクトに今思うことを遠慮なく告げる。
「ただそれだけのために呼びたしたんじゃないだろうな?
返答次第じゃ……わかってるよな?」
「ふっ……オレを脅しても何も出ないぜ?」
「偉そうに言うな、バカ」
ソラに勢いよく蹴りを入れられたイクトは蹴られた場所を押さえながらヒロムたちになぜ呼び出したのかを説明する。
「呼び出したのは他でもない……
この一年に一度嘘をつける日に便乗するためだ!!」
「うざい」
「最後まで聞けよ。
大将、オマエに任務を与える」
「ああ?」
イクトは一枚の紙を取り出すとヒロムに手渡した。
ヒロムはそれを受け取ると、紙に何が書かれているかを確かめた。
が、それを見たヒロムは何故かため息をつき、そして同時にイクトの頭を勢いよく叩いた。
「痛い!!」
「馬鹿馬鹿しい……」
ガイはヒロムから紙を取ると、ソラとともにその内容を確認した。
ヒロムがイクトから手渡された紙には
「大将が姫さんに付き合ってる人がいるって嘘をつく」
と書かれていた。
「……」
「またベタなエイプリルフールネタだな……」
「やらねぇからな?」
「ノリ悪いな……
でも見たいだろ?
姫さんが慌てふためく姿を」
別に、とイクトの問いに対して三人は口を揃えて答えると、帰ろうとしたがイクトの影から現れた腕が三人の手を掴む。
「……離せ」
「頼むって。
一回だけで良いから」
「受ける理由が……」
「じゃないと姫さんもうすぐ来るから……」
イクトの言葉、三人は一瞬考え、そして思わず聞き返す。
「呼んだのか?」
「ああ、あと十分で来ると思うぜ」
「このためだけに?」
「天才でしょ?」
バカだよ、とガイとソラが順番にイクトに訊く中でヒロムは飛び蹴りをイクトに食らわせ、それを食らったイクトは大きく吹き飛んでしまう。
「……くだらねぇ」
「けど、やるしかないだろ」
「何もありませんでしたじゃユリナに申し訳ないしな……」
ガイとソラは気まずそうにヒロムを見るが、その視線を感じたヒロムはただため息をついた。
「……なんでオレがこんなことを……」
するとヒロムは何か閃いたらしく、ガイとソラに一つ頼み事をした。
「どっちかハルカ呼んでくれない?」
「別にいいけど……」
「オマエがアイツを名指しするって珍しいな」
ハルカ、それはヒロムに厳しいあの雨木ハルカだ。
というか、ヒロムが怠惰なため、ユリナがヒロムの身の回りのことをやるのだが、ヒロムはそれに対して何かするわけでもない。
ただそんな怠惰なヒロムの態度が気にくわないからこそハルカはヒロムに厳しく発言する。
「せっかくだしな……
オレもやる時はやるって教えとかないと」
((絶対に余計な事考えてるな……))
「お待たせ〜」
ガイとソラがヒロムの考えに呆れていると、ユリナが走ってやってきた。
が、なぜか一緒にハルカもいた。
「……なんでオマエがいるんだよ?」
「ダメかしら?」
「……ちっ」
「ちょっと?」
舌打ちするヒロムにハルカは文句があると言わんばかりの顔をする。
が、先程言っていたようにヒロムがハルカに何かするなら呼び出す手間は省けたとガイとソラは思っていた。
「それで……どうかしたの?
急に呼ばれたから……」
「あ……」
なぜ呼ばれたのかいまいちわかっていないユリナは恐る恐るその理由を訊いてきた。
が、ただエイプリルフールの嘘のために読んだと言うことも出来ず、ガイとソラは互いに顔を見合わせる。
が、すぐに言葉が思いついたらしく、二人はヒロムを指さした。
「……あ?」
「「この人があなたに言いたいことがあるって言ってました」」
「なんで他人みたいな言い方してんだよ…」
「どうしたの?」
するとユリナがヒロムの前に立つと、聞きたそうにヒロムを見つめる。
「あ……」
さすがにこうなったら逃げれない。
変に誤魔化したら怪しまれる。
だが、怪しまれないような適度な言葉もない。
となれば……
ヒロムは少し覚悟を決めると、深呼吸し、そしてユリナの肩を掴んだ。
「え……!?」
「大事な話がある……」
「う、うん……」
((言うのか!?))
ヒロムのその覚悟を決めた姿にガイとソラが思わず唾を飲み込み、蹴り飛ばされたイクトも起き上がると結末を見届けようとする。
「な、何が……」
静かにしろ、と何が起ころうとしてるかわかっていないハルカにソラは注意した。
妙に静かになり、沈黙とともに緊張が走る。
そして
「オレ……結婚することになった」
「……」
「ええ!?」
ヒロムが真剣な顔で口にした嘘。
なぜかユリナではなくハルカが大きな声を出して驚いていた。
「うるさいぞハルカ」
「だだだだ、だって……」
「ユリナの反応は?」
ユリナは驚いているのだろうか。
少し固まってるように見えた。
「……」
「……ヒロムくん」
ユリナは恐る恐る口を開く。
そして
「エイプリルフールの嘘だよって顔に出てるよ?」
「あ、バレたか」
「ええええ!?」
予想外のユリナの反応に提案したイクトは声を出して驚いた。
「何でバレたのさ!?」
「あの……ヒロムくんがそう考えてたから……」
「ま、こうなるよな」
「ユリナの得意技があるからな」
あっ、とイクトは何かを思い出した。
そう、ユリナにはヒロムにだけ発揮される力がある。
それは
「姫さん、大将の思考読んだでしょ?」
「う、うん……」
ユリナはヒロムの考えを仕草や表情、雰囲気だけで一語一句間違えることなく言い当てることが出来る。
つまり、今回もヒロムの表情などから読んだのだろう。
「……傷ついた?」
「だ、大丈夫だよ。
先に嘘つくってわかったから……」
ヒロムはユリナの肩から手を離すと、イクトを睨んだ。
イクトはそれに気づくとすぐに土下座して謝罪する。
「すいませんでした!!」
「……次はないからな?」
「わ、私は気にしてないから……ね?」
「なんだ……嘘だったんだ……」
「エイプリルフールは正午までだからな。
ただのイクトの悪ノリだ」
良かった、と自分の事のように安心するハルカに対してヒロムは話があると話し始めた。
「オマエにも大事な話がある」
「何かしら?」
「……オレはオマエが苦手だ」
ヒロムのハルカへの言葉。
それを聞いたガイとソラは思わず吹き出してしまう。
突然のことでユリナは驚いくとともにハルカになんと言おうか考えているが、言われた当人は気にしていない。
「大丈夫よ、ユリナ。
今日はエイプリルフール。
だからこれは……」
「もう一時だぞ?」
ガイは時計を見ながら時刻を告げる。
一時ということはエイプリルフールで嘘をついていい時間ではない。
ということは
「……ちょっと!!
どういう……」
詳しく説明させようとハルカはヒロムに言及しようとしたが、その時には既に遅く、ヒロムは勢いよく走り去っていた。
「待ちなさいよ!!」
「黙れ、バーカ」
挑発するように言い捨てると、ヒロムはさらに走っていく。
「アンタの方がバカよ、バーカ!!」
ハルカは走っていくヒロムに向かって大声で叫び続ける。
ヒロムとハルカ、二人のくだらないやりとりを見て、ガイは思った。
(今日も平和だな……)
「楽しそうだな」
「……そうだな」
エイプリルフール。
思ったような結果は見れなかったが、こういう日常も悪くは無い。
ガイとソラはため息をつくとヒロムを追いかけようと歩き始めた。




