愛情は最高のスパイス
「お久しぶりです。ラルフ殿下。お会いできてうれしいです。」
公爵家に着き、中に通されると、サラと公爵夫人、公爵家の使用人に出迎えられた。
と、まあ。それはさておき・・・
「お久しぶりです。サラ。でも、殿下ではないでしょ?」
「あ、えっと・・・ラルフ・・さま。」
「うん。ありがとう。サラ。」
そう言うと少し頬が赤くなるサラ。
それを見て微笑んでる公爵夫人にも挨拶をする。未来のお義母様に失礼はあっちゃいけないしね。
「公爵夫人もお久しぶりです。本日は私の我が儘にお付きあいさせてしまってすみません。」
「うふふ・・・。大丈夫ですわよ殿下。それよりも、もう少し砕けて話して欲しいですわ。将来的には家族になるのだし、そうね・・・お義母様と呼んで欲しいわ!」
「はい。ありがとうございます。お義母様。」
そう返事をすると満足そうに頷く公爵夫人・・・もとい、お義母様。
ちなみに、そんな会話の側でサラはといえば・・・
「将来・・・家族に・・・」
何やら妄想の世界に入ってるのか、赤い顔でぼーっとしていた。
ヤバイ・・・可愛いぞ!
なんだあの可愛い生き物は!
もちろん僕の嫁だ!
・・・まあ、そんなこと思っても表には出さずに僕はにこやかにサラを見つめた。
せっかくだからお茶でもと、お義母様に案内されたのは綺麗に整備されている庭園を見渡される外のテラス席だった。
「いかがですか?ラルフ様。」
「ああ。とても素晴らしいね。うちとは違う自然な感じが好きだな・・・」
思わずみいってしまうくらいによい景色だった。
僕はサラに向かって顔を向けるととびきりの笑顔を浮かべた。
「ありがとう。サラ。」
そう言うと、サラは顔を赤くして硬直した。
熱に浮かされたようにこちらを見つめている。
・・・もしかして、僕の笑顔にやられたのかな?
そうだとうれしいという希望的観測をたてる。
ナルシストではないが、僕はラルフという人間の容姿を客観的に評価している。
そもそも、あの母上に似ていれば美形だろう。
そんなことを考えていたら、いつのまにかお茶の準備が整っていた。
僕は今だに硬直しているサラを促して席に座らせる。
「ああ、そうだ。サラは甘いものは好きかな?」
「甘いものですか?はい。好きですよ。」
少し落ち着いたサラからそう返答を貰ったので僕はミリーにお願いして、馬車から今日のために用意した秘密兵器を出してきてもらった。
「じゃあ、よければこれを食べないかい?今朝つくってみたのだけど・・・」
そう言って出したのは、今朝つくってきたクッキーだ。
とはいえ、前世のときの知識をもとに作ったクッキーなので、こちらのクッキーよりも美味しくできた自信はある。
僕がクッキーを出すとサラは驚いたようにこちらを見つめていた。
はて?
「これ・・・ラルフ様の手作りなのですか?」
「そうだけど・・・もしかして、気に入らなかったかな?手作り苦手なら下げるけど・・・」
「い、いえいえ!そんなこと!・・・ただ、その・・・驚いてしまいまして・・・」
まあ、王子が手作りクッキーとかなんの冗談だよって感じかな?
「毒味は済んでるし大丈夫だよ。何より、サラのために頑張って作ったんだ。サラに食べて欲しくてね。」
「わたくしのために・・・」
「もちろん。味はなかなかだと思うよ。何よりサラへの気持ちを込めたからきっと美味しいとおもうよ?」
いたずらっぽく言うとますます顔が赤くなるサラ。
可愛いな・・・
「で、ではその・・・いただきます・・・」
「うん。どうぞ。」
そう言うと、サラはひと口クッキーを食べて・・・ぱぁ!と笑顔になった。
「わぁ・・・!美味しい・・・」
「それは良かった。」
そう言うと僕の存在を思い出したのか恥ずかしそうにうつむいてからはにかみながら僕にお礼を言った。
その仕草があまりにも愛らしくて、思わず頭を撫でてさらに真っ赤になったサラを慈しんだのは仕方ないことだと思う。