信じれる者
ひとまず、話を聞いてくれる人には簡単に説明をして、僕は部屋へと戻った。
正直、まだまだ味方は少ない。
迂闊に変なことを言うと、他の貴族からどんなちょっかいが飛んでくるか分からないし、僕の言動を誤解して「第二王子はおかしい」なんて言われたら最悪だしね。
ただでさえ、僕のスペックは兄上より劣っている・・・というか、兄上のスペックが年齢のわりに高すぎるから次期皇太子候補筆頭は兄上で、このまま順当に行けば兄上は王になるだろう。
しかし、それでは体の弱いマリー様が婚約者から外されてしまい、結果的に兄上の協力はえられない可能性が高い。
もちろん、政略結婚なんだから仕方ないといえば、仕方ないけど、僕としては、家族である兄上には幸せになって欲しい。
マリー様自身も兄上を心底慕っているのが分かるので、そんな人に兄上は任せたい。
なにより、兄上の協力は今後の計画では必要な要素になるのは間違いない。
サラを守るには・・・
「ラルフ様。どうぞ。」
「ああ。ありがとう。ミリー。」
気がつくと、手元の紅茶が飲み終わっていて、侍女のミリーがお代わりをくれた。
ミリーは、僕が産まれたときからの専属の侍女で、現在二十歳の女性だ。
実は、去年、僕の専属騎士のロベルト(25歳)と結婚しており、今でも幸せ絶頂な夫婦である。
ちなみに、兄上以外だと一番信頼のおけるのは、実はミリーとロベルトなのだ。
この二人は、幼い僕に対して、主として、また時に親のように厳しくも、優しく接してくれていて、何より何度も助けられている。
「ねぇ。ミリー。」
「はい?なんでしょう。」
「君は、僕の話を聞いてどう思った?」
先程、僕が兄上たちに話に言ったときに、一緒にいたのはミリーだ。
なので、ミリーは当然この話を聞いているのだが・・・
「そうですね・・・正直、他の方なら疑いますが、ラルフ様が嘘を言ってるとは思えませんし、何より・・・」
「何より?」
「ラルフ様が、懸命に何かをなそうとしているのなら、私は・・・私も夫もあなたの側にいて、支えます。私たちのために色々してくださった方のためです。」
「・・・・ありがとう。」
「当然のことです。」
優しい従者に感謝しかない。
正直ここまで言ってもらえるようなことはしてない。僕がしたのは、両思いなのにうまくいってない二人にチャンスを与えただけ。
でも・・・
「僕は・・守りたいんだ、あの子を・・・だから、僕は・・・いや、僕が間違ったときには正して欲しい。お願いできるかな?」
「当然です。いつか、離れる時がきても、私と夫はあなたの味方です。側にいるときは絶対にお助けします。」
「うん・・・」
守る。サラを絶対に。
そのためにも・・・。