未来のために
「ラルフ。お前、あのお嬢さんに何を言ったんだ?」
公爵家が帰ったあとに、僕は父上と母上に呼び出されて、さっきのことを聞かれていた。
公務で忙しいだろうに・・・
「特には・・・ただ、僕の気持ちをサラに伝えただけですよ。」
「本当か?」
「ええ。まあ、多少やりすきだかもしれませんが・・・」
「あらあら、あの様子だと、結構情熱的に言ったのかしら?うふふ・・・ラルフたら、本気であの子が好きになったのかしら?」
「ええ。母上。政略結婚でも、僕はあの子以外にはあり得ないと思いました。」
「まあ・・・!」
僕の台詞に母上は嬉しそうに微笑む。
「そうか・・・」
父上も安心したような表情を浮かべた。
「お前は、昔からどこか大人しすぎる気がしたから、今回の婚約もどうなるかと、心配したが・・・よかったよ・・・」
「本当にね。仲良くやるのよ。」
「もちろんです。父上、母上。サラは絶対に逃がしません。必ず結婚します。」
安心したように笑みを浮かべている二人に僕は笑顔で決意を伝える。
すると、父上は、少し苦笑いで、母上は瞳を輝かせて嬉しそうにしていた。
「あらあら。そんな情熱的になるなんて・・・流石私の息子ね!」
「母上も父上との時にそうだったのですか?」
「ええ。私も昔は頑張ったわよ・・・。特にこの人は真面目すぎて、私の好意にも気づかずに・・・」
「ちょっ・・・その話はラルフの前では・・・」
楽しそうにいちゃつきはじめた二人をみて、僕はすぐさま部屋を出た。
何年経っても新婚のようなあまあまな二人はあの状態になると周りがみえないので放置が吉です。
部屋に戻ると、僕はサラのことを思い出してニヤニヤしていると、ふと、心配事に思い当たる。
それは、乙女ゲームの件だ。
まあ、似ているだけの世界だろうし、そこまで気にすることもないだろうけど、もし、変な力が働いて、僕がヒロインを好きになったら・・・今の僕の自我では絶対にありえない。でも、未来はわからない。
もし、僕が心がわりしたり、僕とヒロインとの関係に嫉妬したサラがあんな行動を起こしたら・・・
考えるとぞっとしてきた。
ゲームのヒロインの性格を思い出しても、僕があのヒロインを好きになる確率はないが、もしもの時には備えないと。
現状、サラとの仲を深めて、学園に行ってからも、サラには寂しい思いはさせずに、過ごすのと、何かのときのために・・・もし、僕の人格が乗っ取られたときの対策も講じないと。
あとは、何があってもサラを守れる力も必要になる。
やることは多いが、とりあえずは僕とサラの味方を増やすほうがいいかな?
勉強と剣術をして・・・魔法も頑張って、あと協力な味方をつくる。
僕はそう判断すると、真っ直ぐにとある人物の部屋へと向かった。