ラルフの力
「皆のもの、今日は良くぞ来られた。今日は私の息子・・・第二王子のラルフの6才の記念の日となる。存分に楽しんでくれ」
その国王陛下・・・父上の言葉で僕の誕生日パーティーは始まった。
参加者はこの国の主だった貴族逹だ。
顔見せ・・・という訳ではないが、貴族世界ではこういう行事事への参加はある意味必須とも言える。
特に王子の誕生日なんて行事は、国の行く末を担うかもしれない存在である王子への顔見せや、国への忠誠心・・・あとは、縁を深めるにはもってこいのイベントなのだろう。
開始して早々に、僕は何人もの貴族と挨拶をしていまだに落ち着けていない。
主役だから仕方ないとはいえ、こう何人も同じような相手に挨拶をされると流石に疲れてくる。
中にはスキがあれば娘を僕の婚約者に・・・という狙いを持っているような連中もいたようだが、それは隣のサラのお陰で大丈夫だった。
サラには申し訳ないが、パーティー中は僕に付きっきりで付いてもらっている。婚約したことを知らしめるためが主な理由だが・・・僕とサラの仲が良いと直接的に見せつけるうってつけの機会だからだ。
そのため、その手の狙いの連中にはわざとらしい程にサラを愛でる姿を見せつけてやった。
なお、その時の真っ赤になったサラが可愛すぎて、ますますあまあまになってしまったのは仕方ないだろうと思う。
そうして、和やかにパーティーが進んで行く中で・・・後半になり、それはおこった。
それは騎士団長の息子との挨拶の時のこと・・・騎士団長とは、何回か剣の稽古を頼んだことがあり、わりと親しかったので、息子も大丈夫かと思ったが・・・結論から言えば息子の方は結構面倒だった。
「はん!こんな軟弱なのが王子かよ!俺でも勝てるぜ!」
・・・騎士団長の息子であるリカルドはそんなことを平然と僕の前で言ったのだ。
その言葉に騎士団長は慌てたように僕に頭を下げた。
「ラルフ様申し訳ありません・・・息子はこの通り頭が足りないもので。ほら!お前も謝りなさい!」
「ふん!俺は強い奴にしか従わないからな!」
傲慢な態度だが・・・はて?ゲームのリカルドはこんなキャラだっただろうか?確かに実力主義ではあったが・・・ここまで馬鹿だったか?
いや、それはさておき、婚約者の前でカッコ悪いとこは見せられないよね。うん。
「なら・・・試してみるか?」
「試すって・・・」
「僕と君で、どちらが強いかをだよ」
その言葉に、会場はざわめく。
それはそうだ。いくら王子とはいえ、騎士団長の息子を相手にそんなことを言うなんて想定外もいいところだろう。
しかし、意外にもリカルドはその言葉にニヤリと笑った。
「いいのかよ?自慢の顔に傷がつくかもしれないんだぞ?」
「そっちこそ・・・牽くなら今のうちだぞ?」
「はん!上等だ!」
こうして決まった決闘・・・結論から言えば完勝しました。
うん、まあ・・・確かに年齢のわりにはそこそこ剣の扱いは上手いが・・・所詮は子供の力。対して強くはなかった。
本当に語るのも馬鹿らしいくらいに圧倒的に実力差を見せつけてあげましたよ。ええ。
「ぐ・・・・」
「もう終わりか?」
「くそ・・・なんで・・・」
地に伏せるリカルドから視線を・・・この状況をハラハラと心配そうに見守っていたサラに向けて、微笑んで言った。
「好きな人を守れる力が必要だったから・・・かな?」
そう告げるとリカルドは黙りこんで・・・サラはさらに真っ赤になりました。やっぱりサラは可愛い!
こうして、リカルドを圧勝したまでは良かったが・・・やり過ぎたと、後悔は尽きないことに、後日悩まされることになりました。