第1章 弱肉強食 02
始まった縄文時代の生活。葵の楽しみな気持ちとは裏腹に、縄文時代ではあることが起こっていた。
村では、冬になる前に食料を貯めなくてはならないそう。現代とは違い、弱肉強食の世界であった。
「アオイ、イマカラカリニイクゾ」
「えっ、狩り?た、戦えるかな…」
そう思いつつ、タウロスには
「ツイテイキマス」
と答えた。
村の北側には、森があって、一度も近づいたことはなかった。
タウロス以外にも、狩りに行く時は他の村人たちもきていた。
腕時計では現在、午後3時半、でも、この世界ではかなり遅れているようで、暗さから見た時間と、冬前ということも考えると、おそらく5時くらいと言ったところだろうか。もちろん、腕時計だけでなく、スマホも同じ時間を指していた。
それから10分経たないうちに、タウロスが、
「ヨシ、イクゾ」
RPGゲームの世界かと思えるくらいテンプレ発言にクスリと笑う。
葵のそんな余裕は長くは持たなかった。
葵にはタウロスから森に入る時に弓と、骨製の剣のようなものが渡されている。
他のものは、現地で配るとのこと、仲間同士でも、盗みには、気をつけているようだ。
森で入ってから2kmくらい歩いたところだろうか、シカのような鳴き声が聞こえる。
葵は小声で、シカか、と言うと、タウロスが殴ってきた。
「いっ…」
葵に言葉を言わせるスキも与えず、タウロスが紙を出した。
「セッカクノエモノトリニガス、カンガエテコウドウシロ」
その紙を見た瞬間、自分は違う世界にいることを改めて実感した。
「スマナカッタ」その言葉だけ、紙に書いてみせた。
それからしばらくしゃがんでいると、草からシカが出てきた、これは絶好のチャンスなのだろうと思った。
タウロスが、「テホンヲミセル」
葵は返事もせずにシカをじっと見ていた。
その時、タウロスが他の仲間に合図をする。
すると、他の仲間の一人が、シカの足にロープを絡ませ、他の仲間のところに引き渡す。そしてその先にある落とし穴に落とす。そして落とし穴の近くで待機していた仲間が上から網をかける。その網の隙間から槍を刺し、シカを絶命させた。
葵にはわかった。「手本を見せる」の意味が。
これと同じことをしてみせれなきゃお前はさっきみたいに邪魔するだけ、つまり仲間ではない。
仲間ではなくなったら…
タウロスの言葉が頭をよぎる。