序章 使いすぎた頭 02
やっと課題に取り組んだ葵だったが…
スマホで調べては書く、スマホで調べては書く。
普通の人間なら、飽きるだけでそのまま課題を終わらせることは可能だろう。だが、引きこもり人生を送ってきた葵にとってはあまりにもきつすぎた。
気がつくと、スマホでしていたのは歴史の課題のことではなく、「スマホゲーム」だった。
葵自身も、ゲームをしているのに気がつく、いや、ゲームを止めるのは、二時間後だった。
「ほう、徳川家康はこんなスキルがあるのか、ほうほう徳川家光は?ほうほう…って、俺なにしてんだ!?」
時計をみると時間は4時15分。そろそろ母親が帰ってくる頃だ。
「やべ、もう四時か、そろそろ勉強しないとやばいな…」
勉強机に向かう、スタンドの電気をつける。
勉強机に向かうと睡魔が襲う。
「まず、小学生レベルの問題からやってみよう、うん。」
ページをパラパラとめくる。
「なになに、邪馬台国の倭女となった人物を答えよ?そんなの簡単じゃないか、さすがの俺でもわかるよ。
えっと、ほら、あれだよ …って、誰だっけ。」
そんな時玄関からガチャ、と音がした。ああ母親だなと思っていたが、ただいまの一言もない。
「あれ、いつもならただいまの一言くらい言うのに、いや、逆にそれくらいしか声をかけてくれなかったのに。」
おかしいなとは思いつつ、まあ疲れているのだろうと、見に行かずにいた。
午後7時、自分でもよく勉強したな、と思えるほど勉強していた。
だがその間にもきになることがいくつかあった。それは、母親が帰ってきたのに 歩く音、ものを置く音、独り言、テレビの音、なに一つ音がしない。
「おかしい、何かがおかしい。」
引きこもり症の葵にもさすがにわかった、母親に何かあった、もしくは…
何かを察した葵は部屋のドアをゆっくりと開けた。
「やっぱりなにも音がしないよな。」
階段を降りてリビングへと向かう。
リビングでも音がしない、それ以前に人はいない。
「配達のものでもおきにきたんだな。」
そう思い、玄関へ向かう…
「ゴンッ.ドタッ」
何か重いものが何かにあたり、その何かが倒れた音がした。
よく考えてみれば、チャイムも鳴らさず、荷物を置くわけがないのだ。そもそも、いつも親が帰ってくる時間から長い時間が経っている。その後出入りする音がないのだから、誰かが家にいるのは確実だった。