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第96話  エルモアを救おう! その3



(レイカ…… れいか…… 麗華…… !? も、もしかして…… アパートの向かいに住んでいた若人妻の娘さんかっ!?)


「あのっ!?」

「大事なお話中ですよ?」

「……はぃ」

「……私の考えている事が妄想でなければ、ちょっと壮大過ぎるわね」

「そうですね。個人で出来るレベルを遙かに超えてしまっている」

「……だから助けてくれたの?」

「……」

「助けてくれた?」

「どうもこうも話がうますぎでしょ? お膳立てされているように、こんな施設が最近出来て、私たちがあんたと出逢う前に情報として知っている。そして案の定ここで恩恵を受ける。導かれるようにね」

「それに何か問題があるのか?」

「……踊らされてるならまだしも、それによって今回のようなアクシデントが今後、生きてる限り続いていったらどう?」

「……大問題です」

「でしょ? けどどうする事も出来なさそうね……」

「ネッピー? 私たちが何かの陰謀に巻き込まれているって事?」

「陰謀なのか横暴なのか分からないけど、無理矢理舞台に引っ張り出されてる。もしかして……(チラッ)」


(え…… 俺のせい……? 俺がこの世界に来たから……?)


「え? 俺が起因してるの?」

「でも、あんたと逢う前にこの施設は出来ていた…… でも、それくらいは先読み出来る存在となると…… はぁ……」

「ズーキくんのせいだ~!」

「ズーキさんのせいなのラヴ?」

「そうそう! あたしだってまさか精霊の国へ来る事になるなんて思ってもみなかった!」

「……勝手に付いてきましたよね?」

「それはラヴの行動の結果だね……」

「え~?」

「確かに知らないでいた方が良くて、知ってもどうする事も出来ないわね……」

「お分かり頂いて助かります」

「でも味方でいてくれるなら助かるわ」

「今はですけどね」

「……なに? 敵になるっての?」


(普通に恐いからね? その目はね?)


「いえ。そんなつもりはありません。ただ、ここから離れてしまうってことですよ」

「……正直敵にはなって欲しくないわ」

「光栄です。こちらもネピアさんのような魔法士とは事を構えたくありません」

「……褒められてるぞ」

「格上どころか雲の上の存在に褒められても、舐められてるとしか思えないわね」

「最強最高の魔法士ネピア様がそこまで言うとなると…… レイカさんはいったい?」

「最恐の中の最狂よ」

「……ちょっとヒドくありません?」

「褒めてるのよ」

「……そうですか」

「……ぁ……ぅ」

「どうしたのエルモア? お腹すいた?」

「……ぅぃ」

「ご飯が食べれるなら少し安心ね…… ほら……」

「(もそもそ)」


(だけど、寝起きと二日酔い以外で元気のないエルモアを見るのは嫌だな)


「少し彼と二人っきりでお話しても?」

「「「「「「 !? 」」」」」」

「おぉ~ そういう所は初めて見るわ~」

「やるね~ レイカぁ~?」

「……部屋の外に行きましょう」

「あ、はい」


 二人のクルーに冷やかされながら、誘われるまま部屋の外へ向かう。明かりの乏しい通路はもの悲しさと合わせて、これからの話の内容に不安を増させていた。


「もう少し離れましょう」

「……はい」

「……そんなに怖がらないで下さい。傷つきます」

「……すいません」


 来た道とは違う方向に進んでいく。現実に歩いてはいるが、幻のようにも感じる建物内の通路。


「この辺りでいいでしょう」

「……」

「お身体は大丈夫ですか?」

「え? いえ、特には問題ありませんが……」

「ふふっ。ならいいです。どうですか? この世界は?」

「そうですね。色々ありました。ここでも色々」

「反省しました?」

「……ネピアには申し訳ないと思っています」

「勢いがあるという事は大事な事です。ですが女性の気持ちも汲んであげて下さいね?」

「……はい」

「……これから色々な事があると思います。悩む時も苦しむ時も心乱される時もある」

「……」

「それでも一緒にいたいという気持ちがあれば……」

「……」

「……」

「その……?」

「ふぅ…… どうやらあまり肩入れし過ぎるのも駄目のようですね。自然のままと言いつつ、こうやって助けてあげる事が出来るという矛盾。だからこそ世界が回っているのかも知れませんね」

「え……と?」

「……以前の世界の事を思い出しても構いませんが、今いる仲間達の事をちゃんと見ててあげて下さい。今、生きているのは紛れもなくこの世界ですから」

「はい」

「大したお話も出来ませんでしたが、話せて良かったですよ」

「あの……」

「はい?」

「何か悪い存在が俺たちを狙っているんでしょうか?」

「大丈夫ですよ。社会派紳士ならやってのけますから」

「そう……ですか」

「さぁ。エルモアさんを助ける為に行動するお時間ですよ?」

「そうだ。エルモアを早く助けないと…… 行きましょう……」

「……エルモアさんの事が好きですか?」

「!?」

「どうですか?」

「だ、大事にしたいとは……思ってます」

「そうですか。なら大事にしてあげて下さいね? ネピアさんもですよ?」

「はい。もちろんです」


 皆の部屋に戻る時は来た時より短く感じた。この時間を過ぎればレイカさんとは、もう会えないような感覚さえある。


「以前の世界でお役に立った事はないのに、本当にありがとうございます。お世話になりました」

「……そんな事はありませんよ。ですが致し方ない事です。分からなくて当たり前ですから。会ってるんですが、会ってないんですよ。ふふっ」

「それはどういう?」

「さぁ。始まりです。エルモアさんを助けに行って下さい」

「はい」


 部屋の中にいた皆を呼び出したレイカさんは、ある部屋で魔方陣を展開させる。その魔方陣を見た時に俺は、元の世界で発動した三つの魔方陣を思い出す。


(聖夜…… 紺野さん…… 元気にしてるかな……)


 二人なら大丈夫だろうと思うも、今回のようなアクシデントに見舞われていないか心配になった。だが今は確認する術はない。


(今回の件が落ち着いたら…… 皆に話してみるか……)


 もしかしたら精霊の国にいるかもしれない。アドリード王国にいたのかもしれない。未開の地に一人佇んでいるのかもしれない。エルモアを助けたら情報を集める為に動いたっていいのかもしれない。


(だが、今やるべきはエルモアの為に動く事。これが最優先事項だ。絶対に助けてやるからな……)


 五匹が入る程の魔方陣に皆で佇む。それを見守る三人。別れの挨拶は成長の温泉前で既に済ませてある。真下から発っせられる光に身を委ね、光の洪水に飲み込まれる瞬間に見たのは、レイカさんの優しい優しい微笑みだった。











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