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第93話  アミューズメントしよう! その12



「これでみんな魔法具を手に入れる事が出来たわね!」

「みんなもレベルアップ出来たしね!」

「まさか私も魔法具が手に入れるとは思わなかった!」

「うぇ~い! (ブン! シャキン! ブンブン! ビリリィィィ!)」

「(ギュッ)」

「タローもそれ気に入ったみたいね…… そんなに大事に握っちゃってまぁ……」

「よかったですね! タロさん!」

「(ギュッ)(ギュッ)」


(握っても握っても何も起きず、悲しみだけが漏れ出す…… うぅ…… 俺も役に立つ武器とかが欲しかった……)


「じゃあ目的も達成した所で」

「帰ろうか」

「そうだね」

「うぇ~い! (ブンブン! ビリリィィィ!)」


(気持ちを切り替えよう…… 成長はしたんだ…… それにエルモアとの距離も戻ったし…… ネピアとも分かり合えたし…… それでいいじゃなか……)


「よし! 行こう!」

「はい!」

「うん!」

「え~と……」

「クリっち?」

「フルオンに帰るの? それとも久しぶりに私たちの里に帰る?」

「……そうね。これなら許してもらるだろうし」

「そうだね。私も帰れるなら帰りたいかな。随分と逢ってないし…… 元気にしてるかな……」

「そうか。なら俺もエルモアとネピアの両親に挨拶したいしな」

「「「「 !? 」」」」

「ん? あぁ…… クリちゃんの両親にもだったな」

「「「「 !? 」」」」

「うぅ…… ラヴ姉さん…… 感動の現れ十手乱舞! (ブン! シャキン! ブンブン! ビリリィィィィィィーーー!!!)」

「ラヴ姉さんの魔法十手がちょっと恐いんだけど……」


 三段特殊警棒のように伸びる魔法十手を、ブンブンと振り回すラヴ姉さん。よく見ると、持ち手の部分から伸びた棒の先の部分まで、小さい小さい魔方陣が行ったり来たりして電撃が発生しているかのようにビリビリしている。


「じゃあとりあえず不思議な森一丁目の建物から出るか」


 最後に館長さんとクルーの二人に挨拶しようと思ったが、見当たらなかったので受付まで戻る。しかし受付にも三人の姿はなかった。


「どこ行っちゃったんでしょうか?」

「祝杯上げるって言ってなかった?」

「そう言えばそんな事を言ってたかもな」

「うぇ~い! (ブン! シャキン! ブンブン! ビリリィィィ!)」

「ラヴめっちゃ気に入ってるね…… せっかくだから私もっ! ていっ!(ブンっ! シュルシュルシュル!)(パシッ!)」

「「「「 おぉ~ 」」」」

「てへへ」

「じゃあ私も一発電撃でも飛ばしてみようかしら…… えいっ!(ビリリィィィーーーー! ドンっ!!!)」

「「「 おぉ~ 」」」


(え…… え? これ喰らったら…… 昇天して人生の終点へ……)


「じゃあ私も行きます! タクティカル装着!(スチャっ!)(シュッ!シュッ!シュッ!)」

「エルモアにはピッタリの魔法具ね。エルモアの体術と合わせれば無敵よ!」

「うん!(シュッ!シュッ!シュッ!)」

「……それはどうかな?」

「「「「「 !? 」」」」」

「あ、あんた達……」

「お前ら…… どうして……」

「お仕置きされたハズじゃっ!?」

「ほ~ん。どうしてか上手く逃げてきたみたいさね」


 不思議な森から現れたのは通勤快速マッドスピードの三匹。変わらず生意気な目をしているチビエルフもいた。


「どうしてここに?」

「ふん…… お前らと馴れ合う気はないんでねっ!?(ダッ!)」

「……ずいぶんと馬鹿にしてくれるじゃない。一人で私に…… なっ!?」


 何かの魔法を発動させていたのか、尋常じゃないスピードでネピアに猛進する通勤快速マッドスピードが一匹。そのスピードに驚いているともう一匹のエルフが逆方向から攻めてくる。


「こいつは囮っ!?」

「残念だったなぁ!?」

「ラヴ!?」

「大丈夫! この魔法十手で!」

「おっと!? あんたが狙いじゃないのさっ!?」

「なっ!? こいつも囮っ!?」

「はっはぁ~ 喰らいなっ!? クソキモ人間っ!?」

「タロさん危ない!? このっ!?(ダッ!)」


 左右から攻撃を展開してきた二匹のエルフは陽動で、本命は真ん中に存在していたチビエルフだった。そのチビエルフが持っていた瓶を俺の足下に目掛けて投げつける。そして任務は達成したかのように三匹は森へと逃げる。


 だが三匹が予想していた展開にはならなかった。彼女らはエルモアの身体能力を侮っていたのだ。エルモアは軽く上空へと浮かび上がるようなダッシュをし、投擲された瓶をタクティカルグローブで掴み、三匹が逃げようとまとまっていた所に振り下ろした。


 三匹の中心に落ちた瓶は粉砕するように割れ飛び散る。怪しい瓶が砕け散ったのを確認したエルモアは一定の距離を保ちつつ、三匹の動きを牽制する。だがその三匹は逃げるどころかその場で蹲ってから倒れた。


「エルモア駄目よっ!? 離れてっ!?」

「!?(バッ!)」


 これこそ不運。この不思議な森という深い森の中で、開けた場所に吹き込む突風。エルモアの反応速度も動きも見惚れるものだった。だがエルモアは風に乗ったそのモノに浸食されてしまう。その場に突っ伏すように倒れるエルモア。

 

「エルモアーーー!?」

「駄目よっ!? 二次被害を防ぐ為に今は近づいてはならないわ!」

「ふざけんなっ! エルモアを放っておけるかっ!?」

「待ちな」

「ラヴ姉さんっ!? 邪魔するなよっ!?」

「落ち着け社会派紳士よ」

「落ち着けるかよっ!? いいからどけっ!」

「そいつは聞けない相談だね」

「なら強制突破すんぞ!?」

「やれるもんならやってみな」

「ズーキさん!? 落ち着いて!? ステータス異常を引き起こす魔法や、毒薬だって考えられるんですよ!?」

「なら余計だろっ!? 一秒でも早くエルモアを助けてっ!」

「……落ち着きなさい」

「ネピアっ!? お前の姉さんだぞっ!? 何を悠長にしてっ!?」

「落ち着きなさい! あんたがうるさいと解析に集中出来ないでしょ!」

「え……」


 気がつくとネピアはいくつかの魔方陣を展開していた。余程集中しているのか、額には玉のような汗が浮かび上がる。そのネピアの身体の周りも「気」のようなものが纏わり付き揺らめいていた。


「一応、防護結界は張ってあるけど…… 突き抜けてくる厄介なヤツもあるからね…… ふぅ……」

「ネピア……」

「ネッピー。そっちに魔源マナジーを送るね」

「ありがと…… 助かるわ……」

「ううん。私が優れてるのは量だけだから…… 魔法式の組み立ても、発動もヘタっぴだしね……」

「それもなにも、魔源マナジーあってこそよ……」


 するとクリちゃんは手のひらから一つずつ小さい魔方陣を展開し、ネピアにその手を向ける。筒状の揺らぎがネピアとクリちゃんを繋ぎ、魔源マナジーと呼ばれたモノを送り出す。


「……」

「心配しないで……」

「……ネピア」

「私だって同じ気持ちよ…… 絶対に姉さんを助けるから……」

「……すまない。それとラヴ姉さんもごめん。クリちゃんもごめん」

「いいさ。堪え忍ぶ時もある事を忘れるな社会派紳士」

「ズーキさんの気持ちは分かりますから大丈夫ですよ」

「ありがとう……」

「これは…… もしかして……」

「ネピア!? 分かったのか!?」

「まず落ち着いて」

「す、すまん」

「いい? まず慌ててもしょうがないって事が一つ。それとエルモアは大丈夫よ……」

「本当か!?」

「今はね……」

「今……? おい…… 本当に大丈夫なのかよ……?」

「言ったでしょ? 慌ててもしょうがないって…… けど……」

「……分かった。ちゃんと聞く。それに声を荒げたりしないし冷静に対処する。俺にも出来る事があるなら何でもする。頼む」

「分かったわ。ふぅ……」


 すると展開していた魔方陣が一気に収束した。先ほどのような突風は無いが、時折ここに吹く風が俺たちの髪を揺らす。


「いい? 慌ててもしょうがないの。じゃあ姉さんの所へ行くわよ」

「あ、あぁ……」


 慌てても変わらないのであれば、俺はエルモアに駆け寄りたかった。だがネピアはそれを制止するように俺に何回も伝えてきた。冷静じゃなかった俺を窘めるように。


(そうだ…… いきり立ったって変わるのならいくらでもしよう。だが、何か不測の事態が起きた時に、冷静に行動出来なければ被害を広げるだけだ…… 何も分かっていないのに無知と感情で現場を乱してはならない……)


 俺が混乱している間も冷静に対処していたネピア。その背中を追いかけるように一歩一歩と芝生を踏みエルモアへと向かって行く。近づくにつれて早くなる胸にインストールされた俺のポンプ。ドクドクと血液を送り出し身体に巡らしていくが、鈍い動きの俺の脳。頭に血が集まりやすい癖に中身えいようが無いからだと、己の不甲斐なさを一人呪う。










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