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第86話  アミューズメントしよう! その5



「それでは次のアトラクションです。再放送オンデマンドの間をお楽しみ下さい」

「……」

「……あの?」

「あ~ 一人あたり百クイーンだったわよね。はい五百クイーン」

「はい。ありがとうございます。その……」

「いいのよ。放っておいて。自業自得なんだから……全く……」

「……」

「ほらっ! 行くわよ!」

「……」

「返事しろっ!? 淫獣!?」

「……もうやる気ない」

「いいからさっさと入る!(グイッ)」

「あ……(ずるずる)」


 正直もうどうでも良かった。エルモアとの仲を取り戻す為に始まったイベントのつもりが、エルモアとの距離を引き離すものに変わってしまったから。


(あぁ…… どうして…… 俺はまた余計な事を…… うぅ……)


 以前より明確に離れた俺とエルモアの距離。それは心の距離だけでなく、俺の身体とエルモアの身体という現実的な所にも現れている。


「ここは……」

「なんだろうね」

「大きくて平べったい黒い石が貼り付けてあるさ~」

「……」

「……」

「……あまり追い詰めたくないけど」

「……」

「……警戒心は増し増しよ」

「……ぅ」

「……今言う事ではないかもだけど、大きな出来事がないと気持ちを切り替えられない可能性だってあるわ」

「……ぅぅ」

「……いきなり距離を詰めたりしないで、徐々にいきなさい。だけど今はそっとしてあげなさい」

「……はぃ」

「……大丈夫よ。またエルモアには話してあげるから」

「……ありがとう」

「全く……」


 ネピアの気遣いよりもエルモアが離れていってしまった事実の方が勝り、鬱屈とする気持ちと共に膝を組んで座る。前方には磨き上げられていないマットで黒い長方形な石が、壁一面に貼り付けられている。一枚物なのか繋ぎ目は見当たらない。


(まるでノングレア処理しているモニタのようだ……)


 不思議な森一丁目の館長であるレイカさんが言っていた「再放送オンデマンドの間」を思い出す。このモニタ然とした石に何か映るのだろうか。


『お待たせしました。これから前方にある黒石に今までの旅の記録が映りだし、それを鑑賞して頂きます。ここでは各々の視点からの映像になりますので、自分が実際見ていた状況とは違って見えるかもしません。それを是非感じて頂き、自分の行動がどうだったか第三者の視点で見る事が出来ます。それではまずこちらからどうぞ……』


 部屋の明かりが消えたと同時に映り始める。皆その映像に意識が向けられていた。俺は一度映像から目線を外しエルモアを見つめる。すると目線に気がついたのかエルモアも俺を見つめる。だがそれも一瞬。怯える小動物の様にラヴ姉さんの横に隠れてしまう。


(はぁ…… 駄目だ…… ネピアが言っていたようにそっとしてあげないと……)


「……大丈夫よ。なんとかしてあげるわ」

「……すまん」

「……ほら、せっかくだし見ましょう」

「……そうだな」


 どうやら映像の場所はアドリード王国で、俺とエルモアとネピアが初めて逢った時のようだ。最初に黒石モニタに映るのは、あの卑しい商人で懐かしくもあった。



『おい。これはどういうこった? 奴隷なんて話は聞いてないぞ? おいっ!』

『ひっ! いやぁ……これはぁ……その……』



「これって…… アウロ視点で見てるのか……?」

「そのようね。でもいったいどうやって……」


 俺たちとアウロが初めて逢った時の状況が、アウロの視点で上映されている。プライバシーも何もあったもんじゃないなと思っていると、覚えがあるシーンへと移行していく。当時はまだ奴隷だったロリフターズが檻に入れられている。そしてその前に向かっていた社会派紳士。そしてネピアの怒鳴り声と共に、アウロの視線がロリフターズのいる檻へと動く。


『……っ大丈夫なわけないでしょっ! 誰よっ! この檻とこの私に衝撃を与えたのはっ!』

『あの~ すいません。彼がちょっと怒ってしまいまして……それでその商人を吹っ飛ばしまして、このような状況に……』

『あんたっ!? 衝撃を与えたのはあんたの仲間ねっ! 日の出る前からこんなところに押し込まれて……すっごい我慢してたんだからっ!』

『はぁ……それはどうも大変な事で。それで何を我慢していたんですか?』

『トイレに決まっているでしょっ!?』



「……なつかしいな」

「……思い出したくない」


(これが尿漏れエルフ誕生の歴史的瞬間だもんなぁ)


「え、エルちゃんとネッピーが…… 奴隷……?」

「「 あっ!? 」」

「え~ 知らなかったのか~い? クリっち~?」

「聞いてない。……だから隠しておきたかったの?」

「「 …… 」」

「……別に全てを話すのが親友とまでは言わないよ。けど、私はそんな事を気にしないのに」

「ご、ごめんねクリちゃん」

「ご、ごめんクリちゃん」

「……いいよ。無事帰ってきたんだから」

「「 クリちゃん! (ギュッ!)」」


(三匹で抱き合ってる。恥ずかしかったのかな……奴隷だった事を話すの…… けど、これでクリちゃんとの秘密雑談個室プライベートプレイが未遂に終わったな…… はぁ…… いいことないなぁ……)


「あーーー!?」

「「「「( ビクゥ!? )」」」」

「何よラヴ姉? 驚い……」

「ラヴさんどうし……」

「ら……ヴ……」

「……」


 ネピア、エルモア、クリちゃんが映像を再度見始めた時に、ちょうど勢いよくトランクスとスラックスをズリ下げる社会派紳士。アウロ視点だと後ろ姿になるので現れる俺の白いケツ。靴も同時に脱ぎ捨てていたので下半身は全て未装備の生まれたままの姿。ただし上半身のみスーツを着用しているので、当事者である俺も異様な光景だと認識してしまう。



『ちょっと!? 何する気っ!? いやっ! 来ないでっ!』

『どうぞ……』



「こんな行動的なズーキくん初めてみたぁ~ すご~いぞ~!」

「え、え、え? どうしてズーキさんは、下半身だけ、は、裸に?」

「……誤解しないでもらいたいのだが。続きを見て貰えれば分かる」

「……続きを見たって分からないと思うけど」

「今考えればタロさんはエルフである私たちを喰らおうとしていた…… 事前準備キャストオフして……」



『……申し訳ない。女性に対して気遣いが足りていなかったようだ』



「え? なんで自分の下着をネッピーに? え? どうして下着を裏返しに? え?」

「ほら……」

「たしかにこの視点だと…… し、しかし俺は……」

「こうして渡したモノを受け取ろうとした瞬間に喰らう! それがタロさんのエルフゲームのやり方である四十八手が一つ…… 受取事後承諾《ギフト&ゲット》……」



『いらないわよっ! なんであんたのパンツなんか履かなきゃいけないのっ!? あんた頭おかしいんじゃないっ!?』

『だって……漏らしたんだろ? 風邪引くぞ……ほら』

『漏・ら・し・て・な・い! あれは涙みたいなものよっ!』



「え? ネッピー? その……?」

「も、漏らしてません」

「でも、涙って……」

「涙は涙よね? クリちゃん?」

「う、うん。そ、そうだね」

「分かってくれて嬉しいわ。でもどう思う? この行動について?」

「正直どうしてこうなったか…… 裸で自分の下着を持って歩いてこられたら私…… しかもこの時に初めて逢ったんだよね?」

「ほら……」

「う…… 俺が…… おかしい……?」

「善人気取りの人間を装い、私たちロリフターズが油断した瞬間に喰らう! それがタロさんの特徴的プレイスタイル…… 紳士喰ロリフイーターい」


(あれ……? でも…… 俺は…… 本当にネピアの事を心配して…… 下着が濡れたままだと風邪引くと思って…… けど…… これじゃあ…… ただの…… へ……)


 辿り着きたくない事実に行き着く前に映像が終了。部屋の明かりが付き悪夢から現実へと引き戻される。そしてこの瞬間からネピア正規ルートである、嬉し漏れ増しルート(仮)または(尿)へと進むであろう道筋に、雫が垂れ始め道しるべとなる。











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