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第80話  不思議な森一丁目に入ろう!



「……」

「……」

「……」

「……」

「チョリ-ッス!」


 俺たち五匹は不思議な森を歩きで進んでいる。ご丁寧に看板がありアミューズメント施設である「不思議な森一丁目」の道筋が記されている。


「……」

「……」

「……」

「……」

「うぇ~い!」


 一人テンションマックスのラヴ姉さんを抜いて、残りの四匹は先ほどのやり取りを引きずりながら歩いている。


「……クリちゃん?」

「(ビクぅ!?)」

「……そんなに驚かないで欲しいな」

「は、はい」

「体調は大丈夫?」

「はい。寝たら少しスッキリしました」

「そうか。それは良かった」

「ありがとうございます」

「……」

「……」


 何故かエルモアまでネピアのように黙りきっている。膝枕の件で何か思う所があるのかもしれない。なにせ聖修道女グッドシスターな彼女の事だ、俺の気持ちを気にしてくれているのであろう。


「……エルモア?」

「……」

「エルモア?」

「は、はいっ!」

「そんなにかしこまらないでくれよ。エルモアは体調大丈夫か?」

「……はい、ありがとうございます」

「……なんだか大丈夫そうに感じないけど」

「……大丈夫です」

「はぁ」

「……」

「……」


(なんだか体験版エルフゲームの時から距離を感じるよなぁ…… はぁ…… エルモアには近くにいてもらいたいもんだ……)


「……ラヴ姉さん?」

「チョリ-ッス!」

「……調子良さそうですね」

「もちのロンさっ! ラヴ姉さん! 最っ高!」

「……ですよね」

「うぇ~い!」

「はぁ……」


 そのまま会話を終えると無言のまま進む五匹。一匹は時折、周りを見ながらテンションを上げて楽しんでいる。


「……」

「……」

「……」

「……」

「気持ちぃ~ あぁ~ 森は気持ちぃ~」


 ひたすら看板を見つけながら奥へ奥へと進んでいく。何事も無く進んでいると、なにやら気分の悪い目線が俺を突き刺す。あろう事か、この社会派紳士に対して敵視しているのだ。何が彼女をそうするのだろうか。


「……」

「……」

「……なんだよネピア?」

「……」

「……何も無いならその目線は止めて下さい」

「……」

「止めろって言ってんだろっ!? あぁっ!?」

「……」

「……すいません。無言は本当に恐いので止めて下さい」

「……」


(くっそネピアの野郎…… ここまで社会派紳士が頭を下げているのに一向に突き刺すような目線を止めない…… 何が不満なんだ……? ……そうかっ!?)


「オシッコは大丈夫…… おわっ!?」

「(ゴォォォ!)」

「危ねぇな!? いきなり何するんだよっ!?」

「……」

「……なぁ」

「……」

「……ネピア嬢? お願いですから、お話して貰えませんか?」

「……なに」

「……喧嘩売ってる訳じゃ無いからな? 本当にトイレ大丈夫か?」

「……大丈夫よ」

「でもあの時……」

「(ゴォォォ!)」

「わ、分かったよ。お前が大丈夫ならそれでいいよ…… はぁ……」


 あまり良い状態と言えないパーティーだったが、歩きを止める訳にもいかず目的地へ進んでゆく。まだ昼過ぎというのに深い深い森は明るさを失っている。だが前方に見える日だまりの場所。そこに「不思議な森一丁目」とおぼしき建物が目に入った。


「あれか……」

「そのようですね……」

「あれ受付じゃないかな?」


 クリちゃんが指さした所を見ると、受付らしき構えのモノが建物から飛び出すように構えていた。近くに寄ってみるものの、中にはエルフは見当たらない。


「すいませ~ん! 誰かいますか~?」


 声を掛けるも何も反応はない。だが建物の見てくれを見ても廃墟と化しているような感じは微塵にもなく、それなりに管理がされている体ではあった。今度はもっと大きな声で呼びかける。


「すいませ~ん!」


 すると、受付の奥から大きな物音と共に、誰かが慌てて走ってくるような音が聞こえてきた。そうして現れる、いかにも魔法士然とした格好の娘が、ずり落ちる三角帽子を手直ししながら驚愕した顔つきで受付に滑り込む。


「あ、あの~?」

「お客様っ!? お客様ですかっ!?」

「そ、そうですけど」

「本当!? 本当ですかっ!?」

「あ、はい」

「(お、落ち着きなさい私…… そう…… 冷やかしに違いない…… 今までだって…… うぅ……)」

「あの大丈夫ですか?(色々な意味でな……)」

「……はぃ。でも入館の条件がありまして…… 人間の…… はっ!?」

「はい。人間ですよ」

「(パカっ)人間だ~い! うぇ~い!」


 疑似エルフ耳を取り外し満面の笑みで魔法士娘に近づくラヴ姉さん。すると希望の光が差したように、彼女の顔もみるみる笑顔となる。


「キターーー!?」


(大丈夫かな? この娘さん?)


「はぁ…… 苦節(ごにょごにょ)年…… 命を賭し時空を超え多世界を逃げ回り、匿って貰う事を条件にこの仕事について…… ようやく自分の人生を再度歩める事に…… うぅ……」

「はぁ」

「大丈夫か~い?」

「いくら年を取らない魔(ごにょごにょ)になったとはいえ…… 気持ちは年を取っていく…… けど今っ!? 完全に女子中二学生の気持ちに戻ったかもっ!?」


(女子中二学生?)


「あぁ~! 女王様っ!? 本当にありがとうございます! あなた様のおかげであの忌まわしい過去とも決別して好機チャンスを与えて下さった事に感謝します!」

「女王様?」

「はい! 女王様が私たちを匿って……」

「匿って?」

「……聞かなかった事にして下さい」

「はぁ」

「そうだ!? みんな~!? 来たよ~!? 私たちの未来が~ キターーー!?」

「なんなんだ一体?」

「気になる話ではあるけど、相当な喜び具合ね……」

「そうですね。彼女の言っている事は本当ですね」

「そうだね。精霊がそう言っているというのもあるけど、魂の叫びって感じかな」


 彼女らエルフ達は精霊の加護を受けて生きている。その精霊達がどういった風に話しかけてくるのか、または伝えてくるのかは知らないが、意思疎通のようなものがあるらしい。すると受付の奥から彼女を合わせて三人ほどの声が聞こえてくる。


「嘘だろう!? 本当なのか!?」

「本当! 私だってビックリしたよ!」

「長かったね…… けど…… これでアイツらが管理してない新しい世界へ行ける……」

「本当だな…… ここも女王様が目を光らせてるから大丈夫とは言え、この仕事をこなさない限り軟禁状態だったもんなぁ……」

「でももうそれも終わりだよ! 新しい人生のスタート!」

「もう濡れ衣を着せられ、異世界パトロールに追われる事のない世界に行けるんだぁ…… 夢みたい……」

「お前達はどうするんだ? この世界から別の世界に行くのか? 女王様にお願いして?」

「うん。多分私は行くかな。人助けが仇になってこんな事になったけど、やっぱり私は誰かの役に立ちたい」

「ふふっ。あんたらしいよ。なら私もそうしようかな」

「ははっ。俺たちは似てるからな。また後悔しても、しない事で後悔したくない」

「けど何か考えてる? 具体的な事?」

「う~ん。もう炭素生命体である人間やめて鉱物生命体にでもなろうかと」

「いいなそれ!? 俺もそれにしよう! 意思をもった伝説の武器になるわ!」

「あはは。凄い考えだね。私も人間はやめて妖精さんでもなろうかな。そうして他の種族を助けてあげるの」

「メルヘンだね~」

「メルヘンだ~」

「あはは」


 自分が一度も考えた事の無い人生を考えいてる彼女達。俺は彼女らがどれだけ辛い思いをしてきたのかは分からない。だが彼女の言うとおり、誰かの役に立ってみたいとも思った。そしてそれが今、現実として彼女らの役に立つ一人の人間としてここにいる。そしてラヴ姉さんも一応いる。











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