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第74話  五人酒と洒落込もう!


 エルモアはクエルボを飲む前にいくつかの用意をしている。テキーラであるクエルボをショットで飲む前にかじるライム。メインであるショットグラスに注がれたクエルボ。そしてエルモアの人差し指と親指の付け根に乗せられた塩は、最後に舐める為だ。


「(パクッ)(クイッ)(ペロッ)」

「「「「 おぉ~ 」」」」

「フルオンで飲むクエルボはおいしいですね~」

「エルモアっちはテキーラ好きだね~」

「はい!」

「エルちゃんもお酒強いよね~ ネッピーもか~」

「クリちゃんはお酒強くないの?」

「わたしは二人程は強くないかなぁ」

「エルフはお酒に強いもんだと信じ込んでいたよ……」

「あはは。色んなエルフがいますよ~」

「そうだねクリちゃん? ささっ、こちらの清酒も美味しいですよ~ 本日は祝賀会ですから! さぁ! クイッと!?」

「(クイッ)」

「「「「 おぉ~ 」」」」


(このまま飲ませ続ければ……クリちゃんの乱れ姿をっ!?)


「ささっ。こちらも良い所が入りましたので……」

「あんたぁ?」

「……なんでしょうか? ネピア嬢?」

「さっきからクリちゃんばっかりに飲ませて…… あんたぁ全然飲んでないじゃない……」

「そ、そうかな?」

「エルモア?」

「サー!」


(あ、ヤバい……)


「ごめんなさいタロさん。私が気づかなくて…… 飲みたかったんですよね? クエルボちゃんショット連続飲みのベース増し増しが?」

「え、あ、いや……」

「……クエルボは楽しみじゃなかったんですか?」


 俺にクエルボのショットを手渡そうとしていたエルモア。悲しそうな表情をしながら一旦グラスを置き、片手でクエルボの瓶を持ってもう片方の手で寂しそうに撫でている。


「いっいやっ! そうじゃないんだ! 今日は風乙女ウインドメイデンの祝賀会だろっ!? だから主賓のクリちゃんにお祝いしたくてさっ!? それでだよっ! 飲みたいっ! あ~ クエルボちゃん飲みたいなぁ~!?」

「そうですかっ! そうですよねっ!? そうなんですよねぇ~! よかったね~ いっぱい飲んでもらおうね~」


(終わった…… クリちゃんの乱れ姿は俺の乱れ姿への流れ……)


 だが仕方ない。エルモアのルートに入る為に、避けて通れないのがこのテキーラショット連続飲みだ。それに今は少しずつエルモアとの距離が近くなっている。それが俺には本当に嬉しかった。


「はい! クエルボです!」

「あっ……あぁ……ありがとう (パクッ)(クイーッ)(ペロッ)」

(うぉ~ ベース増し増しだから倍の量かよぉ!?)

「「「「 おぉ~ 」」」」


 多めに切ってもらったライムを飲み終わった後に、もう一度かじりつく。先ほど舐めた、手に乗せておいた塩をもう一度舐めてクエルボのアルコールのキツさを逃がす。


「飲むねぇ~ ズーキくんはさぁ~ いいよ~ ラヴ姉さんも飲んじゃう!(クイッ)」

(ラヴ姉さんはいいからクリちゃん飲まないかな)

「私も負けていられないわね!(クイッ)」

「「「 おぉ~ 」」」


 アホのようなアホの為のアホの飲み方になるのは、人数が増えても一緒のようだ。それでもこの異世界で、このようなアホ騒ぎが出来る仲間がいるという事が誇らしい。


「でも本当に嬉しいよ~ いきなりいなくなったと思ったら、私がピンチの時に帰ってきてくれるんだもん」

「間に合って本当に良かったわ」

「ホントだね。タロさんに感謝です!」

「そう言えば二人は何してたの?」

「働いてたのよ」

「働いてた」

「その前は?」

「……」

「……」


 クリちゃんが当然のように二人に尋ねると、ネピアとエルモアは下を向いて黙りきってしまう。どうやら探られたくない過去があるようだ。俺と出会う前の事だろう。


「ズーキくんとしっぽりじゃ(むぐぅ!?)」

「(ラヴ姉さん!? 余計な事を言ってクリちゃんが勘違いしたらどうすんのっ!?)」

「(え~? 勘違いってなんだ~い? もしかして~? ……むむ? ズーキ君はクリちゃんの事が? )」

「(ラヴ姉さん? 借金と異種姦好きな貴女に朗報です。そう社会派紳士はクリちゃんと仲良くなりたいっ!)」

「あの~? ラヴにズーキさん? 何を?」

「ちょっと互いに魅力的な提案を……」

「そいつは飲めないねぇ…… 非社会派紳士よ……」


(この物言いっ!? 選択肢ミスったっ!?)


「あたしは純愛が好きなのさぁ…… 二人の親友としっぽり行こうなんて事ぁ外道のする事じゃないかい?」

「「「 !? 」」」

「ちょ! ラヴ姉さん!? 声! 声!?」

「声なんて聞かせる為に存在するんだ…… ひっそりと話す必要はない……」


(ヤバいっ!? ラヴ姉さん逆鱗モードだっ!? 純愛ベースに差し戻さないとっ!?)


「二人の親友だからこそ、この社会派紳士が行くべきではないのかっ!?」

「ほぅ? 逆鱗をさらに触れようとするとは…… そんなに止めて欲しいのかい……? 根っこの部分をさぁ……」


(ビビるな…… 俺はいつもこのやり取りを制覇してきた社会派紳士。ラヴ姉さんに純愛という事を上書きさせれば……)


「エルモアとネピアに対しての気持ちが純愛というなら、二人の親友に対しても純愛!」

「「「「 !? 」」」」

「クリちゃんだけではないっ! 三人とも含めて純愛なんだぁっ!?」

「「「 !? 」」」 

「くくっ。そうかい。そうきたかい」

「ふふっ。そうです。もちろんです」

「流石は名誉紳士ハイブリッド・ジェントルメン。二人を捨てて、一人を選ぶような真似はしないか……」

「社会派紳士として当然の理」

「社会派紳士に……」

「純愛ラヴ姉さんに……」

「「 乾杯 」」


(複数でも純愛なんだな……)


「あ、あんたは…… そ、その、クリちゃんとも……」

「なんだネピア? ネピアは自分だけを見てて欲しいか?」

「なっ!?」

「……考えておこう」

「なはっ!?」


(考えるだけだがな)


「あの~?」

「……なんでしょうか? エルモアさん?」

「自分だけを見てくれるんですか?」

「……」

「なら残された二人はどうなるんですか?」

「……」

「見てくれないんですか?」

「ぃぇ」

「見てくれるんですか?」

「ぃぇ」

「どっちなんですか?」

「……すいませんでした」

「はぁ」

「……考え無しの淫獣」

「……淫獣に何か付け足さないで下さい」


 惚けるクリちゃんを見つめる事は叶わず、質問攻めにされる社会派紳士ではあったが、エルモアとの距離感が少しずつ縮まっているという事実が、俺を安堵へといざなう。











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