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第69話  お仕置きしよう!

 風乙女ウインドメイデンである技術屋クリちゃんが製作した、荷車GTカスタムことダンシング愛人形ラヴドールと、エルモアとネピアの身体を張った体重移動によりダウンヒルレース勝利を手にした。


 ドライバー・パッセンジャー・マシン・メカニック・レースクイーン(ラヴ姉さん)の気持ちが一つになっての勝利。そして俺は願いを叶えるだけの段階へと移行する。エンターキーを押したら実行するファイルのように簡単な状況だった。


「はい~ 並んで下さ~い!」


 渋々並ぶ通勤快速マッドスピードの面々。こいつらを好きなように出来る特権を手に入れたのは、まさしくこの俺様である社会派紳士だった。


「ん~ どうしよっかなぁ~ まずは~ (チラリ)」

「ひっ!?」

「君だね。間違いなく君からだね。性悪チビエルフちゃん?」

「……いやぁ」

「ん~ ちょっと茂みの方へ行こうか? ね?」

「いやぁーーー!?」

「……淫獣」

「……淫獣はやめて下さい」

「……何するつもりよ」

「お仕置きです」

「お、お仕置きって何よ!?」

「ネピア嬢? こいつらは俺たちの大事な大事な仲間である、クリちゃんの工房を荒らし、挙げ句の果てにはレース用の車までも壊した大罪人だ。それ相応の報いは受けてもらう必要がある」

「だ、だからって、し、茂みで何するつもりなのよ!?」

「答える義務は無い。納得出来ないなら君も一緒に来るかね?」

「なっ!?」


(よし。これでネピアは黙らせた。後は楽しむのみ)


「あの~」

「なんでしょうか? エルモアさん?」

「茂みには皆いるみたいなんで、呼んでもいいですか?」

「えっ?」


 近くの茂みを見ても、誰かいるようには見えない。だが俺も感知してしまった。彼らの「気」を。するとネピアも感づいていたのか、声を掛ける。


「そんな所で見ていないで出てきたらどうなの?」

「す、すいません。ネピアの姐さん。そ、それに…… え、エルモアの姐さん……」


 茂みから出てくるエルフの大群。全てが同じような格好をしたギャングスタなエルフ達だった。


「彼らは?」

「ん? このフルオンで最大勢力のギャングスタよ。F-13って言うわ」

「F-13……?」

「FRIDAY-13って事よ」


(十三日の金曜日って事か? この異世界にもあったのか……)


「で、なんだってのよ?」

「えぇ…… 実はそいつらの事で……」

「どうしたんですか?」

「……エルモアの姐さん。す、すいませんでしたぁ!」


 すると一切の乱れなく土下座を慣行したギャングスタなエルフ達。彼らにも土下座という習慣があるのだろうか。そしてエルモアに対して怯えているようでもあった。


「どうして謝るのですか?」

「ひっ!? そ、その…… エルモアの姐さんが書いたグラフティアートを守り切れませんでしたぁ! すいませんっ! すいませんっ! 何卒、寛大なご処置をっ!? 家族…… 家族だけはぁ!? お助け下さいっ!」


(えっ? なんでこんなにエルモアが恐れられているの? しかも…… 家族だけはって……)


「安心して下さい。何もしませんよ」

「あ…… ありがとうございますぅ…… うぅ……」

「んで? ど~いう事なのよ?」

「はいっ! ネピアの姐さん! こいつら通勤快速マッドスピードのクソ共はエルモアの姐さんのグラフティアートに✕印をした奴らなんです」

「なるほどね。だってエルモア?」

「そう…… でしたか……」


(エルモア…… 絶対怒ってるよな…… けど…… 表情からは読み取れない……)


「そ、それに、こいつら通勤快速マッドスピードは好き放題して、このフルオンを荒らしまくっていたんです」

「あんた達なにやってんの? なんで潰さなかったのよ?」

「そ、それが…… こいつらいきなりエルモアの姐さんのグラフティアートに✕印したので…… 自分たちが、潰してしまっていいのか判断出来ませんでした……」

「なるほどね。その後もいいようにされたけど、私たちの事を考えて行動を控えたら、こいつらが調子に乗ったと……」

「その通りです。ネピアの姐さん。はらわた煮えくり返る思いでしたが、成敗はお二人に取っておこうと必死に我慢しました」

「そう。その気持ちには感謝するわ。けど、私はこいつらのような雑魚はどうでもいいわね」

「「「なっ!?」」」


 すると憤慨する、通勤快速マッドスピードの三人。


「な、なんだと!?」

「こいつぅ!? 人数引き連れてきた途端に粋がりやがって!」

「あ、あんたのようなチビなんか一瞬でやってやんよ!?」

「……チビ?」


(性悪チビエルフよりチビですので、間違いありませんネピア嬢)


 俺はそう思い、心の中で馬鹿にするも、ギャングスタの彼らの表情は青ざめていた。怒りの矛先がまるで、自分たちに向いているような恐れが見て取れた。


「チビにチビ呼ばわりされた所で痛くもかゆくも無いわ。雑魚相手に手を下す必要も無いしね…… 私はいいけど、エルモアはどうする? グラフティ汚されたでしょ?」

「私もいいよ。グラフティはもう直せたし」

「し、しかし、え、エルモアの姐さん……」

「……じゃあみんなで決めましょう。タロさん?」

「なんだ?」

「すいませんが、F-13の皆さんとネピアと私で、彼女達の処遇を決めます。クリちゃんとラヴさんと一緒に待ってて貰えますか?」

「あぁ。気にしないでくれ。じっくり考えて最高で最低の処遇にしてくれ」

「はい」

「そうね…… ふふっ」


(ネピアは楽しそうだな。エルモアはどうでもいいのかな?)


 最初は粋がっていた通勤快速マッドスピード奴らだったが、状況を理解し始めたのか今は怯えている。


「いや~ なんだか凄いねぇ~ あの娘たちどうなっちゃうんだろうねぇ~?」

「大分やらかしたみたいだし、フルオンには住めないんじゃないのか?」

「いなくなるかもしれない」

「いなくなるのか~」

「いなくなる?」

「はい。消えるって表現の方がいいかも」

「消えちゃうのか~」

「消える?」

「風前の灯火ですよ、今は。風が吹いたら消えます。その命と共に」

「「えっ!?」」


(マジかよ……)


「彼女らはやり過ぎた。地方から来てここの怖さを知らなかった。けど、知らなかったじゃ済まされない事をした」

「このフルオンを荒らしたから~?」

「それもあります。ですが決定的なのは…… エルちゃんのグラフティを汚した事」

「なぁクリちゃん。その…… エルモアとネピアって…… ギャングの一員なのか?」

「えっ?」

「そうだね~ なんか恐い人たちに恐れられてるもんね~ エルモアっちは~ 尊敬ってのもあるかもだけど、それはどちらかっていうとネピアっちの方だよね~」

「あはは、大丈夫ですよズーキさん。エルちゃんもネッピーもギャングスタじゃないですよ」

「でも、LEVEL UPPERSなんて呼ばれてたし……」

「そうそう! エルモアっちもグラフティだっけ? なんか絵を書いてるんでしょ~? それって何か意味があるからやってるんだよね?」

「何も聞いてない?」

「はい」

「うん」


 するとクリちゃんは俺たちにエルモアとネピアのここでの生活について話してくれた。


「もともと私たち三人はここより離れた里に住んでたの。それである事をする為にここに来た。私はただ付いてきただけなんだけど」

「ある事?」

「なに~?」

「レベルアップ」

「レベルアップ? それって経験値を稼ぐとかそういった?」

「経験値ってのはよく分かりませんが、戦いという経験を積む事で、その値が高まるのならそういう事です」

「ん~? じゃあエルモアっちとネピアっちは、ここに喧嘩を売りに来たってことかい?」

「そう。ネッピーはあの通り雑魚には興味なしって感じなのと、元々この案件に関しては否定的だった。だから、ある程度の強さを持った奴が、喧嘩を売ってきたりしたら応戦するって感じだった…… けど……」

「エルモアか……」

「エルモアっち……」

「エルちゃんはこの案件に肯定的だった。戦いをしたいっていうよりも、単純に身体が動かせる事が気に入ったみたい。それで、このフルオンに巣くう組織全ての存在を潰した。一人残らず」

「……マジ?」

「……ホント?」

「マジ」


(エルモン…… 俺の事は潰さないよね?)


「古参の重要人物だろうが、新参だろうが、組織を抜けた奴だろうが、一度でも組織に与した奴は全てエルちゃんの対象になった。どんなに雑魚でも、どんなに弱くても、経験が積めると信じて疑わない彼女は、地道なその作業に没頭した」

「……」

「……」

「そのね、もちろんだけど、一般人には一度も手を出していないのエルちゃんは。もちろんネッピーも。だけど、その行為が純粋に恐れられ、レベルを上げに来た人達って事で、LEVEL UPPERSと呼ばれるようになったってわけ」


 こうして二人の過去を二人の親友であるクリちゃんから伝えられる。その内容に驚愕するも、ネピアよりエルモアの方が恐れられている理由が判明した喜びは少なかった。なにせ今後の俺の人生を左右する程の戦闘力を持った二人の姉妹エルフと、一緒に住む約束をしているからだった。











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