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第66話  親友を助けよう!


「あなた達がやったんでしょ!?」

「へぇ 私たちがやったんだって?」

「ふ~ン。で証拠は?」

「そうそう! 適当な嘘つかれちゃ困るなぁ?」


 争いを聞いて裏路地に行くと、そこには三人の女エルフに喰ってかかっている一人のエルフがいた。


「なんの騒ぎ?」

「どうしました?」

「あっ! エルちゃん! ネッピー!」

「「クリちゃん!」」


(なんだ二人の知り合いか?)


「何があったの?」

「こいつらが…… 私の車を壊したんだっ!」

「だから~ 証拠が無いっていってんだろ~?」

「持ってこいよ~ 証拠ってヤツをさぁ~?」

「全く嘘つきには困ったもんだよ~」

「「「はぁ~はっはっはっ~」」」


(絶対悪役側だな。それにクリちゃんと呼ばれたエルフ少女。ネピアのようにちんちくりんではなく、ちゃんとした個体だ。これは社会派紳士の出番だな……)


「お前ら……証拠って言ってたよな?」

「あ? なんだお前?」

「妙ちくりんな格好しやがってよ?」

「キモ」


(くっそぉ! 三人目は俺の制裁議事録に強制参加だからなぁ!?)


「……」

「うわっ こいつ黙っちゃったよ……キモ」

「いるいる。こういったヤツは精神が弱いからねぇ~ キモ」

「キモ」


(よし。二人も追加だ。そして三人目。お前はこのフルオンでこの社会派紳士が自ら制裁してやろうぞ)


「証拠? 簡単な事だ……」

「キモ」

「キモ」

「キモ」


(ヒドいよ…… そんなに何回も言うなんて……)


「彼女…… クリちゃんの御姿を見れば分かる! お前らなんて足下にも及ばん! それにその全身から発せられる隠しきれない知性的な匂い《フレグランス》! お前らから発せられるの匂い《フレグランス》は恥性のみよ! アバズレはこの社会派紳士によって直接的な制裁を喰らうがいいっ! はぁっはぁ!」

「キモ」

「キモ」

「キモ」


(ネピア…… 良かったな…… 強制失禁の実刑を喰らうヤツが三人増えたぞ? 嬉しいか仲間が増えて?)


「キモっさんは黙ってな。いいかクリネックス? 明日のレースに参加出来なければお前のチームは解散だ? それは当初の約束だったからなぁ守ってもらうぜ?」

「あ~ でもぉ? 壊れちゃったんだっけ~?」

「残念ね~」

「レースすらも侮辱するなんて……」

「お前だろ~ 侮辱してんのはよ~ 車もないのにレースに参戦しようとするなんてさぁ~ まぁせいぜい明日まで頑張ってくれ」

「そっ あたし達は練習に忙しいからさ~」

「じゃあね~」


 そう言い放つと彼女ら大中小のエルフ三人組は裏路地から消えていった。


「……情けないところ見られちゃったね」

「ううん。そんなことないよ」

「ありがとネッピー」

「どうしたの? 何かあった?」

「うん。また迷惑かけちゃったね。エルちゃん」

「そんな事ないよ。迷惑なんて思ったこと一度もないから……ね?」

「ありがと…… その…… 二人は?」

「あ、え~とラヴ姉って言ってさ、友達になったの」

「ラヴさんでよろしいですか?」

「うん! もっと気楽にはなそ?」

「じゃあ、よろしくねラヴ」

「うん!」


(第一印象が今後の人生を左右するからな……ふぅ……おっちっつっけ~)


「全くなんなのあいつら…… ぶっ飛ばしてやろうかしら。まぁ、そのあたりの事も詳しく聞きたいからどっか店でも行こうか」

「いこう! いこう!」

「……」


(ネピアの野郎、この社会派紳士を無視するつもりか?)


「ネピア。タロさんのこと紹介しないの?」

「親友に淫獣を紹介する必要はないわ。捨て置きましょう」

「オラぁ! ネピアぁ!? なんつった今コラぁ!?」

「はっ! 事実を事実として認識したから騒ぎ立ててきてるんでしょっ!? 自分で認めたようなモンじゃない! はっはっはぁ!」

「俺が仮に淫獣ならお前はスケベエルフじゃないかっ!? ベースケなエルフがこの社会派紳士に対して淫獣っ!? それこそお笑いだよネピア嬢? はっはっはぁ!」

「……」

「……」

「……ふん。平行線のようね」

「……そのようだな」


 俺とネピアは互いに距離を取る。相手から視線を外さないように横へとジリジリ移動する。先に動くか、それとも相手の出方を見るか。だがその選択肢を選ぶ事なく、この件は終了する。


「あの…… お店行きましょう?」

「「はい……」」




 エルモアに促されて俺とネピアの対決は一時中断する。オープンなカフェテラスで緑茶とみたらし団子を頂く五人組。和洋折衷な状況ではあるが、このフルオンでは珍しくもないようだった。


「私の名前はクリネックスです。二人からはクリちゃんと呼ばれています。改めてよろしくお願いします」

「こちらこそ。その、もっと気楽にいこう。こっちもその方が楽だから」

「そ! 気楽にはなそ!」

「ありがとう」


 エルモアとネピアの親友であるクリネックス。見た目はとても可愛らしいのだが、格好は女の子然としたモノではなかった。オリーブドラブ色のツナギを腰のあたりで結びトップは白のタンクトップ。足下はベージュのエンジニアブーツ。髪型はセミロング程の髪を束ねて白いタオルを撒いている。首元にはドッグタグがアクセサリーとなっていた。背丈はラヴ姉さんよりほんのチョッピリ高いくらいなので、かなり小柄な部類に入るだろう。


「で、どうしたの? チームのみんなは?」

「辞めたよ……みんな……」

「あの三人が起因してるの?」

「……」


 誰しも沈黙は肯定だと思った。だがそうではなかったようだ。彼女は言いづらそうにして話だす。


「チームの娘がね……飲み会だって言って、誘われて行ったらコンパだったの……」

「「「「 コンパ? 」」」」

「他の四人はそこで彼氏ゲットしてチームから去った…… でもこんな技術屋然とした私は……うぅ」

「(ガタッ!)(ギュッ!)」


(ラヴ姉さんがいきなり立ち上がってクリネックスを抱きしめたっ!?)


「分かるぅ~! 分かるよぉ~!?」

「分かってくれる!? 分かってくれる!?」

「うん! ラヴ姉さん! 上手くいった試しなし!」

「ホント!? ホントなの!?」

「ホント! ラヴ姉さん! 嘘つかない!」

「「うわ~ん!!」」


(あぁ…… なんか二人して泣き始めちゃったよ…… それにしても女の子の涙っていい)


「それでもクリちゃんは一人で活動していたんだ?」

「うん…… いじるの好きだし…… でも、あいつらに車壊されちゃって……」

「話の途中ですまない。チームって?」

「あ、ごめんね。私、走り屋のチームで風乙女ウインドメイデンの頭をやってるんだ。レースっていうのは近くの山でやるダウンヒルレースの事。チームを賭けてそのレースをやる予定だったんだけど……」

「メンバーはいなくなって、車も壊されちゃったのか……」

「そうなの。だから凄い悔しくて…… でも、潮時かもしれないよ……」

「あたし! クリちゃん! 助けたい!」

「私はあんな雑魚どもに、クリちゃんがいいようにされているのが気にくわないわ……」

「クリちゃん。私たち今、ここにいるから……ね?」

「及ばずながらこの社会派紳士も力になろう」

「ラヴ…… ネッピー…… エルちゃん…… ズーキさん…… ありがとう……」

「よし。じゃあ作戦会議といこう。まずは情報が欲しい。エルモア、ネピア、二人は事情が分かっているな? ならドンドン俺に情報をくれ。ラヴ姉さんはクリちゃんと気持ちが通じ合ったな? なら同じ気持ちを共有している共有者として彼女の気持ちになって作戦に望んでくれ。そしてクリちゃん。まずは君の家に行こうじゃないか? ね?」


(よし。ごく自然な流れで自宅を拝見出来るな。いい匂い《フレグランス》しそう)


「……どうしてクリちゃんの自宅に行く必要がある淫獣?」


(若干…… 瞳が…… メラってるな……)


「……まずダウンヒルレースに参戦する為の最低条件は車だろ? その被害状況を確認したい」


(完璧…… 一寸の隙も無い模範解答…… そしてクリちゃんの自宅へ……)


「あの…… タロさん? クリちゃんの工房は自宅とは別ですよ」

「そうなのズーキさん。じゃあまず工房へ行きましょう」

「……はい」

「……淫獣」


 そうして俺とネピアはその場で取っ組み合い、エルモアによって仲裁されるといういつも通りな展開を、この精霊の国フルオンでもしていくのであった。











 次回投稿の16日から24日投稿分まで、20時08分を目安に投稿いたします。26日からは19時08分を目安に投稿しますので、よろしくお願いいたします。

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