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第61話  王都アドリアをバックレよう!


 正午を告げる鐘が王都アドリアを響かせる。その響きはやがて兵士たちの足音にかき消された。


聖幼人様ホーリーローリー~!」

幼気様いたいけさまぁ~!」

「おいっ! 急げ! 握手会は限定百人らしいぞっ!?」

「マジかよっ!? ジュニアアイドルとぉ~ 握手だぁ~!」

「俺絶対今日から手を洗わないぞぉ!?」


(んっ気っ持っちっ悪ぅ)


 予定数を大幅に上回る効果を見せたジュニアアイドルの握手会。今彼らに見えているのは希望なる未来。


(限定百人は誰の案だ? だがこの世界でも通用するらしいな。そしてそのような閃きをもった人に感謝します)


「ふぅ~」


 緊張しているのか、肺に溜まった空気を吐き出す。そうして何回か深呼吸を行い、これからの展開に期待をする。


(上手く……いくか……?)


 俺は作成したドローン嬢様が描かれいている、一枚の紙を見ていた。そこにはエルモアとネピアが、一生懸命書いてくれた文字が上下の余白に記載されている。

 下には歓楽街にある魅惑な名前の店舗名とその住所。そして上部に書かれているのは「12:00 ~ 待機中」の文字。


(ドローン嬢様に好意があるヤツは、あの場所に向かうだろう)


 そんな事を思っていると新市街に作成したビラが、陽動作戦に関わった者からばらまかれた。すると王宮辺りから駆けだしてくる人の波も見て取れた。


(よしっ! 食いついたな! 新市街の方も騒ぎになってきたな……後は真性どもにジュニアアイドルがそこにいない事に気がつかれなければ……)


 ドローン嬢様目当てで向かってくる男たち、彼らを誘導するように先頭を走る。俺の背中に貼り付けた一枚の紙が目印になるだろう。


(ちょっと焚き付けるか……)


「よっしゃーーー! 俺が一番乗りだあーーー!?」

「なんだとお!? くっそぉーー!?」

「負けねぇーーー!?」

「ドローン嬢様ぁーーー!?」


(やっべ! 大変な事にぃ!?)


 焚き付けてしまった俺が悪かったのだが、勢いを増して向かってくる男ども。その勢いは真性どもに勝るとも劣らずだった。


「ネピアっ! 連れてきたぞっ!」

「いやぁーーー!?」


 元々勢いがあった彼ら。俺たちの案内はあまり意味をなさなかったかもしれない。これなら仲良く港に向かっていた方が良策だった事を知るが、もう前進するしかなかった。


「オラぁ! ネピアぁ!? 真性どもとは違ったタイプの淫獣の群れだぁ!?」

「いやぁーーー!?」


 旧市街の雑多な道を、大勢の興奮した男どもが欲望の為に走り続ける。そうして走り続けていくと、ステッカー屋の向かいの店で作成してもらった看板を、前後に付けているエルモアが目に入ってきた。いわゆるサンドウィッチマンならぬ看板娘サンドウィッチウーマン


「エルモア~!!! もういいから逃げるぞ~!?」

「あっ! タロさん!」


 すると律儀にボディーランゲージで場所をアピールするエルモア。そのエルモアを看板ごと引っ張って、裏路地へ逃げる。


「おっし! 見事に成功!」

「でもさ! 私たち意味あったの!?」

「正直ないな!」

「えーーー!?」

「でも私! 楽しかったです!」

「よっし! ならやった甲斐があったな!」

「えーーー!?」


 真性どもの追撃も考えていたが、そういった事もなく俺たち三人は無事にバルバードさんの港へ辿り着いた。


「おう! 無事来たか! 行くぞっ! 乗れ!」

「「「 はい! 」」」


 すると船内には五人の船員がいた。


「アウロ! ノカラ! ヤコブ! フレイ! ベルギィ! どうしてっ!?」

「おうズーキ。久しぶりだな……嬢ちゃんたちも元気そうだな」

「あ、あんたら……」

「あの時のみなさん……お世話になりました」

「元気だったかぁ~?」

「ヒポとまた会えて嬉しいぜ!」

「心の友よ!」

「解放申請は出来たみたいだなぁ!」


 五人とも元気そうに俺たちに声を掛ける。まさかこの五人が船員だとは思わなかった。だがザンさんが言っていた事も気になった。


「そっちの嬢ちゃんは相変わらず漏らしてんのか?」

「漏らしてないわよっ!?」

「ははっ そうだったな。そう言ってたもんな」

「けどどうして? そうだ…… ザンさんが船員はお尋ね者だって言ってたぞ?」

「あぁ。あの商人いたろ? あいつさぁ、途中の道で仲間呼んでたんだよ。多分、奴隷だった嬢ちゃん達を売る相手さ。そいつらが色々つっかかってきてよ、生意気だったから潰してやったんだ。んで逃げたヤツは追わなかったんだけど、そいつが兵士と繋がりがあってさ……」

「それで手配されちゃたの? ぷぷぷ」

「嬢ちゃんは根に持つねぇ……あれからズーキの下着は履いたのか?」

「あんたぁー!? いい度胸してるじゃないのっ!? この最強最高の魔法士ネピア様になんたる物言いかしらっ!?」


 ネピアがいきり立ったところで、バルバードさんがこちらへやって来た。その目はこれからの旅路に希望を持っているような、光ある眼差しだった。


「よし、これから精霊の国へと出航する。港からの攻撃も視野に入れてくれ。だがビビる必要は全くない。その嬢ちゃんが言っていたように最強最高のメンバーだからな! 行くぞっ野郎どもっ!!!」

「「「「「「「「「 おう!!! 」」」」」」」」」


 船が動き出し、アウロ達も所定の位置についた。このバルバードさんの船は少人数でも動かせるように、魔工法と呼ばれる工法で作られている。そう嬉しそうに話すバルバードさん。そうして港から船を動かすと、ひょっこり身を躍らせるように現れたラヴ姉さん。


「おうおう! ズーキくんに、エルモアっちに、ネピアっち、そうしてアウロ兄ちゃんズ! ラヴ姉さん! ここに参上!」

「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」

「いや~ まさかアウロ兄ちゃんズと一緒になるとは思いもしなかったよ~ はは~ 元気だった? 兄ちゃんズ?」

「お前…… どうして…… 北の街にいたんじゃないのか?」

「いつの話ししてんの? まぁいいや。長旅だし、ゆっくりはなそ! ね!?」

「あ…… あぁ……」

「え、アウロ達は知り合いなの? ラヴ姉さんと?」

「あぁ。年は大分離れているんだけど、こいつが小さい時から俺らは知ってるよ」

「それにラヴ姉さん…… いいの? 戻れないかもしれないのに……」

「あ~ まっ、なんとかなるっしょ! それに異種……むぐぅ!」

「(ちょっとラヴ姉さん! 航海始まったばかりだよっ!?)」

「(へっへぇ~ これで一緒にいられるね!?)」

「……」

「……あの?」


 そうして勘ぐるネピアとよく分かっていないエルモアをよそに、精霊の国へとの航海が始まったのである。











 本日までご覧頂き誠にありがとうございます。明日からの新章は一日置きに投稿いたします。 お詫びになるか分かりませんが、第48話に出てきました「ヤンキー魔法少女」をスピンオフとして、明後日より同時間帯の辺りに投稿いたします。こちらは書き切っていますので、最終話まで毎日投稿いたします。

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