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第34話  淑女になろう!



 目覚めたのは屋根裏部屋でなく、木々に囲まれている自然の中だった。意識が戻りつつあるも、場所の確認のみで何が起こったのか完全に忘却していた。


「タロさん。大丈夫ですか?」

「……あぁ。俺……どうしたんだっけ……?」

「えっと……」

「……?」


 何か言いづらそうにしているエルモア。俺はそのエルモアの膝に収まるようにして仰向けになっていた。人の温もりを感じる膝。それを枕のようにして横たわっている。

 心優しきエルフの少女。名はエルモア。無償での膝枕に心が痛むものの心ゆくまで頭皮に感じる膝枕の愛を享受していた。しかしあまりにも行動的に頭をグリグリ動かしていた為に、エルモアが「あっすいません。起きますよね」と言って膝枕状態を解除してしまった。


「いや…… 謝らないでくれエルモア君。本当に感謝している」

「そうですか、それは良かったです」

「良かったのはこちらの方だ。久しくこの気分を忘れていたよ。本当にありがとう」

「いえいえ。そう言って頂ければ十分です」


 俺はなんだか晴れやかな気分でこの木々に囲まれた状況を楽しむ。天気も良いし風が少し頬を撫でる様子も心地よい。


(あぁ…… 幸せって…… こういう事を言うんだろうなぁ)


 珍しい木々に見とれながらも穏やかに感じていた俺の脳は激しく動き始める。記憶の巻き取りが終了した瞬間、俺は目標目がけでダッシュした。


「オラぁ! てめぇ! 思い出したぞっ! この俺様に鳩尾みぞおち喰らわしやがったなぁっ!? えっ!? 肉体言語で俺を落とすとはいい度胸じゃねぇか!」

「わっ!? 生き返った!?」

「てんめぇ! 今! 生き返ったって言ったよな!?」


 スルメを食べながら本を読んでいたネピアに組み合っていく。


「だいだいあんたが私を敬わないからいけないんでしょーが!」

「あぁっ!? ふっざけんなっ! どこをどうしたら敬えるんだよっ!? あっ!? 中身も見た目もちんちくりんな癖によぉっ!」

「はぁっ!? 中身も見た目もまんまレディじゃないのっ!? あんたの心と目が腐りきってるからそう感じるだけでしょう!?」

「いいかっ!? レディってのはお前みたいなロリフの事じゃない! 見た目は仕方ないとしても心なんだよぉ! 精神の姿勢なんだぁ! オラぁ!」


 するとエルモアが何か疑問を持ったような顔つきでこちらにやってくる。


「あの~ ロリフってなんですか?」

「……あぁ。それはな、幼いという意味とエルフを掛け合わせた独自特殊言語だな」

「 ? 」

「あぁ…… そのな? ロリっていう言葉があってそれが大まかにいって幼いって意味になるんだ。諸説色々あるが今回はそれでいい。それをエルフと足してロリフになる。こういった特殊言語は色々あるが通常モードで生きる場合は必要ない」

「はい。それでネピアの事をロリフって言ったんですよね?」

「あっ、あぁ……」

「なら、私もロリフなんでしょうか?」


 ネピアが冷め切った目で俺を攻撃してくる。エルモアを巻き込んでこのような講義をしている事に目線で抗議しているのだろう。俺だってネピアと違い淑女であるエルモアにこんな話はしたくなかった。


「まっ、まぁ…… 広義的な意味で捉えればそうなんだが、狭義的に考えると多少の侮蔑的思想が含まれる事もあると考えている。正直俺はネピアに対してそういう意味で使用している」

「……」


 何かを考えるように人差し指を顎に当てているエルモア。その後ろにはスルメを咥えつつ片手に本を持ち、もう片方の手で呆れたように頭をかいているネピア。


「私…… ロリ…… エルフ……」

「あの~ エルモアさん? その辺りで特殊言語はお開きという事で……」

「ネピア…… ロリ…… エルフ…… 姉妹シスターズ …………っぁ!?」


 何かに気づいたエルモアは、その場で足を大きく開き右足が前に出るようにしながら上半身を前に倒し顔を起こす。右手は地面前方に手を下げて開き、左手は天をかざすように後ろ斜め上に手を上げる。そのポーズと合わせてエルモアの高らかなる声がこの森に響く。


「ロリフターズ! 私たちっ! ロリフターズ参上っ!」

「(えっ!?)」


 ネピアが驚いたように軽くこちらに目線を投げてきた時、俺はその光景を美しくも思った。二人のロリフが今まさにここに参上したかのように見えたからだ。

 そして俺も心底驚く。以前に一度ではあるが、同じ結論ロリフターズに至った社会派紳士であったからだ。


(ふふっ…… 淑女エルフで特殊言語運用管理者になれる素質をもった類い希なる高貴な存在。それが君だよエルモン)


「ふふっ こういう事だったんですねタロさん」

「ふふっ そういう事だったかもだなエルモア」

「あの? ねぇ? エルモア?」

「ふふっ」

「ははっ」

「「はぁーーーっはっはっはっはっはっ!! はぁーーーっはっはっはっはっはっ!!」」

「え…… 姉さん? ねぇ…… 戻って…… お願いよぉーーーーーっ!!!!!」


 ネピアの魂の叫びも虚しく語呂が良かったのか大変気に入ってしまったエルモアだった。




 あれから色々なポージングを考えて実行していたエルモアに声をかけてようやく仕事に入る俺たち三人。

 名残惜しそうにその場から離れるものの、上半身の動きや手さばきは未だに動いて更なるポージングを研究し続けている。


「ねぇ……私が悪かったから……お願い、姉さんを元に戻して……ね?」

「戻すも何もエルモア自身が選んだ道だ。例えそれが茨の道であったとしても俺にはどうする事も出来ん。悪い事は言わない。諦めるんだ」

「返してっ!? ねぇ!? 返してよぉーーーっ!?」

「この世に言語がある限り……咲かせて見せよう言語華。咲いた華ならいつか散る……散らせてならぬは言葉の葉。たとえこの身が朽ちようと……我ら姉妹は不滅也。ロリフターズっ! ここに見参っ!」

「もう…… 戻れない。彼女は…… すでに全身を蝕まれている…… 特に…… 脳が……」

「いやぁーーーーーーっ!?  っ!? ……っ……」


 ネピアが絶叫し終わった後に、いつかのように意識のブレーカーが落ちる。彼女はストレス振り切れると安全装置が働き眠りに落ちる仕様になっている。

 眠りに落ちたネピアはそのまま倒れて動かなくなる。それを見ていたエルモアはすぐ駆け寄って介抱していた。


(本当に素晴らしい存在だよ…… 君はね。ふふっ)


 それから俺も近くに二人の近くに陣取って、ネピアが起きるまでエルモアと堅い友情を確かめあったのであった。











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