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第172話  アドリード王国を救おう! その20



 自動銀兵オートアーマーを倒した聖夜は、シャーロットさんと一緒になってこちらへ歩いてきた。途中倒れているクリちゃんに身体から溢れ出る「気」を分け与え回復させていた。


(そんな事も出来るのか……)


 同じように倒れているラヴ姉さん、エルモアとネピア、そして俺にも「気」を与えて全回復させる。Dr.ヤーブーとヒポにも施したが、Dr.ヤーブーとヒポはそれでも疲れているのか、互いに寄り添っていた。


「凄いじゃない聖夜!」

「本当に凄いです! それに格好いいです!」

「聖夜っちは王女様を守る気士だね!」

「はぁ~ 素晴らしい~ 王女様を守る気士~ あぁ~ ありがとうございます、ありがとうございます。お父さんお母さん産んでくれてありがとう!」

「ありがとうございます聖夜さん。そんな力を持っていたなんて存じておりませんでした」

「……俺の力を解放してくれたのは鈴木さんですよ。鈴木さん。本当にありがとうございます」


 口調の変わった聖夜。だが俺にはどうでもよかった。


「ずるい……」

「え?」

「ずるいよ~! 聖夜も紺野さんもずるい~! なんで俺だけパワーアップしないの~!(バンバン!)」

 

 ラヴ姉さんがいじけるように、俺も盛大にいじける。周りにどう思われようが関係がなかった。今ならラヴ姉さんの気持ちも分かる。


「ぱ。パイセ~ン? ちょ、ちょっと落ち着いて下さいっすよ~?」


 口調が元通りになった聖夜。だが溢れ出る「気」。そして格好は神々しいままであった。


「うぅ……」

「確かに紺はあの強大なエネルギー波を撃てる戦士。そして聖夜は聖気士パラディン。あんたは只の淫獣……ぷぷぷ」

「ぷっ」

「うわ~ん!(バンバン!)」


 ネピアにも聖夜にも笑われて悲しみに打ちのめされる社会派紳士。


「ま、まぁでもパイセンのお陰で吹っ切れたんすよ。小さいからずっと、イヴって呼ばれてたっす。凄い嫌だったんすけど、自分は怒る事が出来なくって、ずっと貯め込んでいたんす」

「聖夜……」

「寺の息子なんであまり詳しく知らないっすけど、教会だと聖なる夜は24日の夜から、らしいんすよ。一般的には25日って認識っすけどね。それでもイヴって呼ばれるのずっとずっと嫌だったっす」

「そうか……」

「けどスッキリしたっすよ。パイセンのおかげで。今までの分を怒って、それをコントロールして力に変えられたっす。でもパイセンはどうして自分のあだ名を知ってたんすか? 一度も話してないっすよね?」


 皆にじいさんから貰った手紙の事を話す。するとネピアはこう言い放った。


「じゃあアンタの功績って訳じゃないわね」

「うわ~ん!(バンバン!)」

「そうですね」

「エルモアもヒドいよ~!(バンバン!)」

「ただの淫獣!」

「ラヴ姉さんまで~!(バンバン!)」

「い、淫獣……た、確かに…… ちょっとズーキさんは思う所が多すぎてフォロー出来ないですね……」

「(バンバン!)」


 リア充と化した聖夜はシャーロットさんと楽しそうに話している。それに加わる乙女達。俺はもうふて腐れる事に決めた。


「……」


 だが、一向にして構ってくれない。神聖なる聖気士パラディンには真性なる構ってちゃんは勝てなかった。


(もうどうでもいいや…… どうせ俺は紳士になりきれなかった淫獣なのさ……)


 なら本当に淫獣らしい事をしてやろうかと考える。すると俺の気分は高揚し、バッドトリップしたステータス異常を持ち直す。


(くくく…… ネピア…… まずはお前からだ……)


 アドリード王国でネピアと出掛けた際の事を思い出す。こいつは俺と二人きりで宿に泊まる事はないと断言していた。もしそういう事になったら、何でもいう事を聞くとも言っていた。


(あ~んっ気っ持っちっい~! って言わせてやっからな!? あっ!? オラぁ!?)


「タロさん?」

「……はい」

「何を考えていました?」

「ナニも考えていません」

「本当ですか?」

「はい」

「本当ですか?」

「はい」

「本当ですか?」

「……すいません」

「……タロさん?」


(めっちゃ見られてる…… ヤバい…… エルモアが読心術を使えてもおかしくない……)


「……大丈夫ですよ」

「……」

「私はタロさんと一緒にいますから」

「エルモア……」


 俺は情けなくなった。こんなにも思ってくれているのに、淫らな妄想ばっかりしている自分に。


「よし! パネーゼが言っていた舞踏会に向かおう!」

「まっ、あんたはアンタで役に立ってるから安心しなさい」

「ネピア……」


(すまんネピア…… 妄想の中での非道は詫びる……)


「そうだよ~ だってラヴ姉さんの借金無くしてくれた恩人さぁ~!」

「あ、あぁ……」


(今度の妄想はラヴ姉さんにしよう……)


「ズーキさんだって、ちょっと?エッチな所を除けば問題無しですよ!」

「ちょっと……だよね?」


(ラヴクリでもいいか……)


「ほらパイセン。みんなをまとめてきたのはパイセンなんじゃないっすか?」

「聖夜……」

「ズーキさんの信頼あってこそですよ。さぁパネーゼの所へ!」


(慰めだって関係ない。こうやって言ってくれる仲間が俺にはいるんだ)


「よし! 向かうは宮殿外のコロシアムだっ!!!」

「「「「「 おぉ~!!!!! 」」」」」


 俺たち王都奪還作戦、遊撃即応部隊のメンバーは一路コロシアムへ目指す。Dr.ヤーブーとヒポは未だ回復しきっておらず、後で合流すると約束した。ヤベーゼを取り込んだヒポを心配したが、あの術は魔法馬まほうばの持つ隠された膨大な魔源マナジーを解き放ち、媒体として相手を別世界へ封印するというものだと言う。


 そして俺は思いを馳せる。なんの因果か一日とはいえ、建設に携わったコロシアムで最終決戦が行われるからだった。先を急ぎながらも戦力の確認をする為に聖夜に質問した。


「聖夜は気でこれからも皆を回復出来るのか?」

「回復も出来るっすけど、思いの外に気を使うっすね。戦闘に特化した方がよさそうっす」

「じゃあ回復は他で回そう。実際エルモアとネピアが攻撃に回って、クリちゃんと俺が回復って感じだったしな。さっきの戦闘も」

「そうね。私と姉さんは互いにフォローしながら戦闘に望むわ。とは言っても、さっきはやられちゃったけどね。ごめんね姉さん」

「ううん。私こそフォローが遅れちゃった」

「いや、あの時は俺の事を思って、ネピアの行動が変わってしまったんだ。もう戦況を確認する時には油断しないよ。俺こそごめんな」

「でも、ズーキさんはラヴの事を考えていたんじゃないんですか? 私も回復弾で多重回復出来るかなって考え始めていましたから」

「いいじゃん! いいじゃん! こうやってみんなでフォローし合おう! ね!?」

「ラヴさんの言う通りっすよ! 助け合いの精神でいくっす!」

「素晴らしい仲間達に合えた事を女王様に感謝いたします……」


 極限の戦闘から生まれてた結束感。俺たちに出来る事は互いを尊重し助け合う精神だ。気持ちと作戦が一致する。自ずと気持ちが駆ける足に伝わる。


 宮殿からコロシアムに直接抜けるルートを、シャーロットさんに案内してもらい、俺たちは高位の者達が観戦するであろう、高い位置にある場所からコロシアムである闘技場を見下ろしていた。

















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