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第170話  アドリード王国を救おう! その18



  奥へと奥へと進んでいく。途中俺たちを妨害する敵はいない。中央を突破してきた筈であったが、後方からレジスタンス達がついてきていなかった。


(どういう事だ? また守りを再開して、分断されたか?)


「……誘い込まれてます」

「また空間転移魔法か!?」

「違うわ。その感じはしないわね。多分、王の間で私たちを待っているんだわ」

「ラヴ姉さん! 誘い込まれちゃう!」

「パイセンどうするっすか?」

「どうもこうも、じいさんもいるし、誘いに乗ってやろうじゃないか」

「おじいさん魔源マナジーの保有量凄いですね。私も保有量は自慢だったんですが、勝てないです」

「後で秘訣教えちゃる。お主が推察した通りじゃよ。いくつか身体に貯蔵出来る魔法式を組んでの。それに貯め込んでるだけじゃ」


 いつの間にか仲良くなっていたDr.ヤーブーとクリちゃん。孫娘を見る様な感じなのだろうか。その秘訣はこれからの行動如何によって享受出来るか変わってくる。


 俺たちの行く手を遮る大きな扉。豪華絢爛だが悪趣味でもある。シャーロットさんが顔をしかめていたので、最近変えられたのだろう。俺たちが扉を開けるのを躊躇していると廊下に声が響く。


『入りたまえ』


 そう言われては仕方ない。ロリフターズに目配せし、罠の類いを確認する。扉自体に結界が張られている以外は問題ないとの知らせだ。俺たちの状況を知ってか、Dr.ヤーブーが先頭になり王の間へと入る。


「これはこれはシャーロット元王女様…… ご無事で……」

「シャーロちゅわん! ちゅわん! ぶっぶ~!」

「白々しい事は仰らないで下さいますか? 私を亡き者にしようと空間転移魔法まで使用した者が」

「ぶぅ!? パネーゼ! 弟よ!? そんな事をしたぶぅか!?」

「……」

「答えるぶぅよ!?」

「恐れながらヤベーゼ様。弟様であるパネーゼがした事は間違いないようなのじゃ」

「ぶっぶ~!?」

「……」

「どうかヤベーゼ様。このDr.ヤーブーとシャーロット王女様をご信じ下さいの」

「ヤーブーっぶ…… ぶぅ…… 本当なのか弟よ!? 弟でも許さんだぶぅ!?」

「くくっ ははっ」

「何が可笑しいぶぅ!?」


 ヤベーゼはパネーゼに詰め寄ろうとする。上下左右に揺れる腹を踊らせながら、パネーゼに掴みかかった瞬間、ヤベーゼはパネーゼに突き飛ばされていた。


「近寄るな。豚め」

「ぶっぶ~!?」

「本性をあらわしおったな…… パネーゼよ!!!」

「本性? 笑わせてくれる。私は変わらん。この頭脳と魔法力があれば、性分など変える必要はない」

「まっ 手っ取り早くて助かるわ。さぁ悪の最後らしく御演説でもしたらどうなの?」

「この間の蛮族娘か…… どうやってあの国から出てきた?」

「はん! あんたに教えてやる義理はないわね!」

「まぁいい。お前程度の魔法技量では元に戻る事は出来んだろう。別の者か」

「なんですって!? いい度胸じゃない!!! 今すぐにぶっ飛ばしてやるわ!!!」


 パネーゼとネピアの間に割って入るDr.ヤーブー。何か思う所でもあるのか、ヒポを撫でながら、一緒に前に向かっていく。


「ヤベーゼ様をどうするつもりじゃ?」

「決まっている。用は済んだ」

「亡き者にするのかの?」

「ぶっ!?」

「私はそんな事はせんよ。それをしてくれるのはお前達だからな。私が手を下すまでもない」

「ぶっぶ~!? ヒドいぶ!? 弟よ!? 助けてぶぅ!?」

「臭い息をまき散らすな。家畜め。いや……家畜ならまだ役に立つか…… はぁーーーはっはっはっ!!!」

「ぶぅ~!?」

「Dr.ヤーブーよ。ここは私の神聖なる王の間。家畜を連れ込んだ罰を受けねばならぬな」


 ヒポの事を嫌悪感丸出しで眺めるパネーゼ。それと相反してヒポをなで続けるDr.ヤーブー。


「パネーゼよ。お前さんの悪い所は、そうやって自分以外を見下し、可能性のあるものまで、一緒に捨ててしまう事じゃ。お主の研究はいつもそうじゃったの」

「偉そうに。貴様がその家畜の研究で得たモノがあると?」

「そうじゃ」

「くっくっく、はぁーーーはっはっはっ!!! なら見せて見よ!!! その家畜で研究した、下らないモノをなっ!!!!!」

「見せてやるともっ!!!!!! 行くぞいっ!!!!!!!!」


 パネーゼは防御結界も張ろうともせず、馬鹿にするようにDr.ヤーブーを見下ろしている。そのDr.ヤーブーは詠唱しながら、幾多の術式を武術組み手ようにして作り上げる。その動作を素早く終了させると、今度は両手を合わせて唸り続けている。Dr.ヤーブーから漏れ出す莫大な魔源マナジーに呼応して、ヒポの口が大きく開く。その大きなヒポの口から、多重魔方陣が円錐を型どり形成されていった。


「な…… な…… な……」


「儂は研究結果を出せなかったのではない……」


「ま…… まさ…… まさか……」


「出さなかったのじゃ……」


「はぁぁ…… はぁぁ…… はぁぁ……」


「この力がむやみに使われないように封じたのじゃ!!! 行くぞい!!!!」


「あぁぁぁぁ…… はぁぁぁぁ…… あああああっーーーー!!!!!(バッ!)」






魔法馬まほうばじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』






 Dr.ヤーブーの掛け声と共に、ヒポの口から飛び出す多重円錐魔方陣。それが竜巻のように、そして絡みつく蛇のように逃げ出したパネーゼを捕らえる。ヒポが口を上向けると、竜巻のようになった多重円錐魔方陣も合わせて宙を舞う。パネーゼは人を縦に引き延ばしたように変形していた。


 既に身体を引き延ばされたパネーゼは、ヒポの口に吸い込まれようとしている。懸命にもがき脱出を試みようとするパネーゼ。だが徐々に引き込まれていく。Dr.ヤーブーは苦しそうに両手を前に出し、魔源マナジーを放出させていた。



「わぁぁあああぁぁーーーーーーーーーー ぐぉぉおおぉぉーーーーーーーーーー あぁぁぁあああああぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!?」



「弟よ!?」



「兄じゃぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあぁあああぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  たぁぁぁああああぁぁぁぁすぅぅぅぅううううぅぅぅぅけえぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇええええええぇぇぇぇぇててててええええぇぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!?」



「つかまるぶぅパネーゼ!!! ぐぅぅぅぅうううぅぅぅぅ!!!!!!!!!」


「馬鹿めっ!!!!!!?(グイッ) はっはぁ!!! 私の代わりに吸い込まれるがいいわっ!!! はぁーーーはっはっはっ!!! はぁーーーはっはっはっ!!!」


「弟よよよよよよよよぉぉぉぉぉぉぉぉああああああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっーーーーーーーーーーーーっ…………………………………………」


『なっ!? ヤベーゼ様を身代わりにして…… ぐぅ……(バタッ)』


 あろう事かパネーゼは助けにきた自身の弟である、ヤベーゼの手を引き込み身代わりにした。ヤベーゼが魔方陣に吸い込まれる反動を使い、パネーゼは脱出したのである。そして場に倒れるDr.ヤーブー。ヒポも同じように動かなくなってしまった。


「ふぅ…… ふぅ…… ふぅ…… Dr.ヤーブーめ…… ははっ だが死におったか……?」

「……あんた最低ね」

「……助けにきてくれた弟さんを身代わりにするなんて」

「……最高だろう? 最後の最後に役に立ったんだ。くくっ。貴様らにヤベーゼ王、暗殺事件の犯人になってもらおうかと思っていたが、その必要はなくなった」

「パネーゼ! もう止めて下さい!」

「順調に事が進んでいる。ここで止まる理由はわからんな」


 パネーゼは呪文の詠唱を始めた。防御結界を張るエルモアとネピア。


「安心しろ。召還呪文だ」

「召還呪文ですって!?」

自動銀兵オートアーマーだ。コイツの相手をしてもらおう。それではメインの舞踏会がコロシアムで行われるのでな。先に行っているぞ。生きて出られたらな。はぁーーーはっはっはっ!!!」


 転移魔法ても使ったのか、姿を一瞬で消すパネーゼ。替わり登場したのは、アン様をゆうに超える自動銀兵オートアーマーと呼ばれた人型の鎧が、俺たちの新たな相手となった。











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