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第166話  アドリード王国を救おう! その14



(これからどうするか……か……)


 明日の戦いに勝利しなければ、戦いは終わらない。北方にあるバーストナードに拠点を移すのか、それとも、ここでレジスタンス活動をしていくのか。そんな事を考えていると、皆の考えと随分違う事を考えていたんだと知る。


「あたしは~ クリちゃんと一緒にいるよ~」

「ホント!? じゃあ一緒にここで働こうね!」

「あいさ~ また酒場で働くか~」

「そういやラヴ姉さんと初めて逢ったのも、酒場だったな」

「そうだね~ あの時に初めてエルフと逢ったんだよ~」

「あ~ 奴隷解放申請した後ね。あれは首も肩もこって大変だったわね」

「本当に助かりましたタロさん」

「いえいえ」

「いえいえいえ」

「それで二回目にズーキくんに逢った時は仕事クビだったね!」

「あ……コロシアム建設の時か……はぁ…… 精神的にも肉体的にも参ってたよ」

「だからラヴ姉さん癒やした!」


(懐かしいなぁ)


「でもエルちゃんとネッピーが奴隷だったのは驚きだったね~ エリエールさんが言っていた奴隷までの流れは本当なの?」

「……」

「……」


犯罪鼠達クリミナーズの誕生秘話だな)


「まぁ話してくれなくてもいいけど」

「だ、だって……恥ずかしいし……」

「ごめんねクリちゃん」

「どっちにしてもバレてるんだからいいんじゃないのか?」

「バレてない!」

「バレてるだろ?」

「真実は一つとは限りません」

「ちなみにどんな真実があるんだ?」

「……」

「あるんですかエルモアさん?」

「いえ」

「ないんですかエルモアさん?」

「いえ」

「どっちなんですか?」

「……すいません」

「はぁ」


 あまりエルモアを追い詰めてもしょうがないので、話を切り替える事にする。


「クリちゃんは、ずっとエルモアとネピアと友達だったんだよな?」

「はい。生まれた日が近かったんです」

「……それだけは信じられないんだけど、同い年なんだよね?」

「そうです。あれ? まだズーキさんに話してないの?」

「……」

「……」

「意外に秘密主義だね。それでネッピーが適当な事を言ったらズーキさんに……」

「いやぁーーー!? もう忘れさせてーーー!?」

「あぁ…… なんだっけ? 完全自立型高機動戦闘幼兵だっけ? ぷぷぷ」

「あんたぁー!? あの時は衝撃を受けてたでしょ!? 私の設定に!?」

「あの時はな。確かに己の心を大いに乱した」

「「「「 !? 」」」」

「て、ていう事は、あの時にはやっぱり?」

「? どういう事だ?」

「覚えてないん?」

「あ~ 確かに衝撃を受けて……それで……あぁ! そうだ! ネピアの穴か!」

「「「「 !? 」」」」

「確かに興奮していたな。我を忘れる程に」

「じゃ、じゃああの時の事はあまり覚えて?」

「ん~ そこまでじゃないけど、ネピアが倒れて心配した所までは覚えてるな。ハッキリと」

「と、いう事は、ネッピーに膝枕してからは記憶にないと?」

「気持ちよかった」

「「「「 !? 」」」」

「それだけは覚えているな」


(膝枕・してもされても・気持ちいい)


 何が彼女をそうさせたのか分からなかったが、とち狂ったネピアは清酒を立て続けに三杯一気飲みする。そして据わった目をしながら俺に言い放つ。


「記憶を消去しろ」

「はい」


(瞳が青白く燃え上がっている。綺麗なんだけど、状況としてはマズい)


「で? 瞳は燃え上がるし、クリちゃんとの体格差はあるし、何か秘密でもあるのか?」

「そのですねタロさん」

「はい」

「私たちの瞳には、ブラッドレイン家代々の魂のかけらが封印されているんです。もうお亡くなりになられている、おばあちゃん達の魂のかけらです。それがブラッドレイン家の証とも言えます」


(そう……だったのか……)


「私と姉さんは、生まれた時はちょっとね弱かったのよ。そのままだと、成長どころか、生きていけるかどうかも分からなかったみたいなの。それで、母さんが赤子の時に魂の移行術式を赤子用に組み立ててね。それで私たちは今も生きてるって訳」

「成長が遅いのも、そういった事が起因しているのか?」

「はい。成長というエネルギーを全て生きる為に使っているそうです。もう身体も強くなりましたので、成長出来てもいい頃なんですけど」

「なるほど。身体は本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。心配しないで」

「本当か?」

「悪い事ばかりじゃありませんから。成長というエネルギーを戦闘に昇華できます。お母さんにはまだ勝てませんが、お母さんが私たちと同じ年齢の時より戦闘力はあると思います」

「そういう事。ね? だから悪い事ばかりじゃないでしょ? 明日の王都奪還作戦でも役に立つわ」

「でもさ。それって成長のエネルギーを使って戦闘力が増しているんなら、成長する分が少なくなってるって事だろ?」


 ごく当たり前の感想を述べてみると、エルモアとネピアが顔を見合わせていた。


「……姉さん」

「……ネピア」

「「(ギュッ!)」」


(マジで気が付いてなかったのか!?)


「明日は戦闘しません」

「え!?」

「漫画読んでるわ」

「ちょっと!?」

「「 あははははははは 」」

「え!?」

「冗談よ冗談」

「ちゃんと成長しますよ」

「ラヴ姉さんもひっかかっちゃったぞ~ あはは~」

「クリちゃんは知っていたのか」

「はい。瞳に封印されているブラッドレイン家の魂が、ちゃんと成長する分を残しているみたいなんです」

「へぇ~ 先祖代々の守り神ってところだな」

「そうね。私の場合は怒ったりするとすぐに出てくるのよ。ひい婆ちゃんが怒りやすかったって聞いてるから、その魂のかけらが多く含まれているのかもね」


(確かに。怒ると口調変わるもんなぁ)


「その時はどんな感じなんだ?」

「そうね。私であるんだけど私でない。私でないけど私。みたいな?」

「みたいな? って言われてもピンとこないな。口調が変わってるって自覚ある?」

「マジで?」

「マジ」

「それが、ひい婆ちゃんなのかもね」

「俺がネピアを怒らせるから、怒ってくれてるのかもな」

「私も口調変わってますか?」

「いや、エルモアが怒った時を見た事がない。それに瞳が青白く燃え上がるのもないなぁ」


(めっ! ってされた事はあるけどな)


「エルっちは優しい!」

「エルちゃんは優しいね~」

「私は……?」

「優しいぞ」

「ほ、ホント?」

「あぁ」


 何気なしに言った言葉に喜んでいるネピア。ネピアは俺とよく突っかかるが、それは俺がネピアに余計な事を言っているからだ。と、レイカさんのいた不思議な森一丁目のアミューズメントで知った。だが、どうしても言い合いになってしまう事がある。そして心配性なのはエルモアと一緒だ。姉妹なんだから当然とも言える。


「(どう思うラヴ!?)」

「(あ~ 来ちゃったね~ これ三角関係スタート日だよ~)」

「(だよね!? だよね!? あ~ 女王様~ ありがとうございます~)」


(ラヴクリも仲がいいよなぁ~)


「でも話してくれてありがとうな。全て話せって訳じゃないけど、込み入った話を聞けるとエルモアとネピアと近くなった気がして嬉しいよ」

「今まで、はぐらかしてごめんね」

「(ネッピー素直バージョン!?)」

「(優しいって褒められたからね~ 素直には素直で返す優しい娘!)」

「いいよ。けど、謝ってくれるなら身体の調子の悪い時とかは絶対に言ってな」

「……うん」

「エルモアもだぞ?」

「サー!」


(もしかして…… 戦闘行動の時とか…… こういった時のエルモアは歴代のおばあちゃんの誰かなのか?)


 そんな事を思うが、どうにもエルモアが好きでやってるようにも思える。ノリノリである。体術好きだから軍隊っぽいのがお気に入りなのか。身体動かすの好きだって言ってたしな。


「よし! 話してくれてありがとう一気するぞ!」

「サー! ライムとクエルボちゃんをどうぞ!」

「あ、あぁ(パクッ クイッ)」

「「「「 おぉ~ 」」」」

「あれ? 塩は?」

「どうぞ」


(エルモアの人差し指と親指の付け根に塩がのっている。これも懐かしいなぁ屋根裏部屋の時だ)


「(ペロっ)」

「こそばゆいです」


(くすぐったがってる。かわいい)


「清酒もあるよ~ どんぞ」

「懐かしの覇王か。これうんまいんだよなぁ~(クイッ)」

「うんまいよ~」

「……クエルボは美味しくなかったですか?」


 俺にクエルボのショットを手渡そうとしていたエルモア。悲しそうな表情をしながら一旦グラスを置き、片手でクエルボの瓶を持って、もう片方の手で寂しそうに撫でている。


「いっいやっ! そうじゃないんだ! この懐かしい刺激にやられていたんだ!  ギルディアンのルームサービスでは在庫があまりなかったろ!? 飲みたいっ! あ~ クエルボちゃん飲みたいなぁ~!?」

「そうですかっ! そうですよねっ!? そうなんですよねぇ~! よかったね~ いっぱい飲んでもらおうね~」


(終わった…… けど本当に懐かしい…… こうやって酔いつぶれるまでアドリアでも飲んでいたよなぁ…… 精霊の国でもかぁ……)


「はい! クエルボちゃんショット連続飲みのベース増し増しセットです!」

「あっ……あぁ……ありがとう (パクッ)(クイーッ)(ペロッ)」

(うぉ~ ベース増し増しだから倍の量かぁ!? 久々に飲むとくるなぁ~!)

「「「「 おぉ~ 」」」」

「タロさん…… やっぱり美味しくないからワンショットしか……」

「いっいやっ! そうじゃないんだ! 久々の衝撃的な味わいにまどろんでいてね!じゃ、じゃあ残り二つももらおうかな? (パクッ)(クイーッ)(ペロッ) (パクッ)(クイーッ)(ペロッ)」

「「「「 おぉ~ 」」」」

「タロー!  モコ殺しもあるよ~!」

「オッラァ!? 上等だぁ!? あるもん全部もってこ~い!」

「「「「「 あはははははは 」」」」」

「チョリーッス!」

「「「「「 チョリーッス(ッス)!!!!! 」」」」」

「ちなみにチョリーッスは聖夜から教わったからな!」

「マジで!?」

「流石は聖夜さんです!」

「ね~ね~! じゃあ聖夜っちの所に行こ~!」

「シャーロットさんとも一緒に飲みましょ~!」

「「「「「 チョリーッス(ッス)!!!!! 」」」」」


 俺たち五匹はとち狂った酔っ払いとして、旧市街を練り歩いた。いつの間にか一人、また一人と増えて、シャーロットさんと聖夜を迎えに行く時は大変な大所帯となっていった。











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