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第161話  アドリード王国を救おう! その9



 だらけきっていた俺たちの前に姿を現したリーダー二人。その姿を見た瞬間声を上げたのは社会派紳士ではなく、ロリフターズが二匹だった。


「アクトゥス!?」

「アルマートゥスさん!?」

「無事に出国出来ましたことは聞いていました。けど、またお逢い出来ましたね」

「せっかく戻ってきたのだから、おおみかんの収穫時は助けてもらいたいね」


 アクトゥスさんは奴隷解放申請の時に役所で、アドリード王国から早めに出国するように、己の立場も顧みず情報を流してくれた恩人だ。

 アルマートゥスさんは、俺たちがまだ精霊の国へロリフターズを帰郷させる為に、お金を貯めていた時に働いていたおおみかん農場の主。

 懐かしい出逢いに心暖かくなるが、彼らは酷い状況へと追いやられていた。


「なんて言ったけど、おおみかんの農場はヤベーゼの一声で所有権を奪い取られたんだ」

「そんな!?」

「そして私はアルマートゥスの件に異議を申し立てたら、役所をクビになってしまいました」

「アクトゥスさん…… そんな事が……」


 するとシャーロットさんが、フードを取りながら謝罪した。


「申し訳ございません。我が力及ばず、王都民の皆様にご迷惑をお掛けしています」

「「 シャーロット王女様!? 」」

「はい。王都奪還の暁にはアドリード王国の民の皆様が、安心して暮らせるように奮励いたします」

「ご無事でいらっしゃいましたか…… なら我々の仲間の士気も上がりましょう」

「流石はエルモアさんとネピアさんの奴隷解放申請を行ったズーキさん。あなた方は本当に素晴らしい力をお持ちです」

「いえいえ」

「まっ 最強最高の魔法士ネピア様にとっちゃ大した事はないわ」


(確かアクトゥスさんはネピアがモレモノだって事を知らない筈だよな…… 後で真実を告げておくか……)


「(ギロッ!?)」

「……すいません」

「なに謝ってんすか? ネピアさんに?」

「……色々あるんだよ」

「はは。相変わらず仲が良さそうで安心した。でだ、一応ザンさんの使いから連絡があってね。秘密の洞窟から来た者に指揮をとってもらうように言われた。君たちで本当に安心したけどね」

「名前とか聞いてなかったんですか?」

「楽しみにしていろ……との事だったよ」


(流石はザンさん……)


 一同は来客と共に漫画を仕舞う。近くに腰掛けるアクトゥスさんとアルマートゥスさん。


「これから夜に旧市街の奥にある、大きな建物内で明日の王都奪還作戦の集まりがあります」

「そこで作戦を皆に伝えて欲しい」

「……分かりました」


(ヤバい…… マジで考えないと……)


 何も考えていなかった訳ではないが、旧市街の皆の前で話すほどに、作戦を練っている訳ではなかった。


「それでですね。実はお願いしたい事がありまして……」

「お願い?」

「ご無礼をお許し下さい、シャーロット王女様。どうか皆の前でお姿を表して欲しいのです」

「構いません。元よりそのつもりです」

「おぉ。王女様がいらっしゃれば、士気はうなぎ登りだ」

「それと……」


 チラリとエルモアとネピアを見るアクトゥスさん。だが、どうにも言葉に出来ないようであった。するとアルマートゥスが代わりに話し始める。


「あ~ 実はね? 君が精霊の国へエルモアさんとネピアさんを送った事は旧市街では皆が知っている」

「はい。皆さんに助けて貰わなければ、あの時に脱出は出来なかったと思います」

「それで、宮殿の正門前で握手会をするってブラフを流したよね?」

「はい」

「パイセンは何考えていたんすか?」

「……色々と考えていたんだ」

「あの効果は半端なかった。特に宮殿の兵士にはね」

「(ビクゥ!?)」


 ジュニアアイドルと偽り、その名を利用し兵士を引きつけた。お陰で俺たちは兵士に捕まる事無く、バルバートさんの船で出航する事になる。だが、言葉の通り身を使ったネピアは怯えていた。


「実は君たちの事を見ていなかった旧市街の人たちにも、その話は触れ回ってね」

「……話は分かりました。ジュニアアイドルのマネージャーとして許可しましょう」

「「 !? 」」

「ちょ、ちょっと私に何をさせる気!?」

「……握手ですか?」

「……」


(握手か…… ん~ 何かもっと実のある…… そうか!?)


「ネピア? エルモア?」

「(ビクゥ!?)」

「はい」

魔源マナジーはどれ程で回復する?」

「? 寝れば大体元通りだけど……?」

「エルフは大体そうか?」

「そうですね」

「エルモアは時間指定で魔法を発動出来るか?」

「簡単なのでしたら……」

「よし。明日の正午に発動するように頼む」

「なにすんのよ?」

「精霊の加護を…… 軽いおまじないみたいのモノを、ジュニアアイドルのファンにかける」

「……なるほどね。防御結界じゃないから運要素も含む事になるけど、攻撃の回避率は多少上がるでしょうね」

「握手の方が疲れないかもしれませんね……」

「どうせやるなら意味があった方がいい」


(エルモアには指一本触らせない)


「パイセンは本当に変な事を考えるんっすね~」

「流石はズーキくん!」

「エルちゃん! ネッピー! 頑張ってね! ファンのみんなが応援しているよ!」

「良かったですよ。これはどうも言いにくくて……」

「とりあえず細かい事は後で打ち合わせよう。一度、旧市街の皆に今夜の情報を流してくる。何せ数が多い。それではシャーロット王女様、並びに皆様、一旦失礼します」


 挨拶をするとアクトゥスさんとアルマートゥスさんは旧市街へと身を躍らせた。


「エルモアさんとネピアさんはジュニアアイドルだったんすね~」

「ち、違うわ……」

「……違います」

「違わない! ジュニア! アイドル!」

「キノコの里からアイドルが誕生するなんて~ 凄いね~ 流石はエルちゃんネッピー!!!」

「ん~ ゴホン!」

「何よ気持ちの悪い咳払いなんてして……」

「タロさん。あまり私こういった事は……」


(俺だってエルモアにはさせたくないっ! 俺だけのアイドルでいて欲しいんだっ!?)


「……他人事かね? クリネックスくん?」

「へ?」

「ジュニアアイドルには三匹目のアイドルがいた」

「……へ?」

「その名もクリネックス!!!」

「えーーー!?」

「いい! ラヴ姉さん! 推しちゃう!」

「ファンも一人増えた所でこれから作戦会議をする…… ふふふ……」


 心底気持ち悪そうな目で俺を見るネピア。信じていたのに裏切られたような目をしているエルモア。何故か巻き込まれてしまった事に動転しているクリちゃん。そして社会派紳士はラヴ姉さんですら逃す気はなかった。


「あ~ 状況によってはラヴ姉さんもエルフ耳付けて参加してもらうから」

「ん~ けどあたしの事を知ってる人いるよ?」

「手拭いで口元を隠せばいけるだろう」

「魔法は?」

「そうだな…… 魔法はエルフ三姉妹に任せるとする。もし、状況が混乱しそうなら、ラヴ姉さんにフォローしてもらう」

「お~け~」

「ふふふ。なんだか凄い楽しそうですね。私はファンとして皆を推しますね」

「「「 !? 」」」


 もしかするとシャーロット王女様は、ヤベーゼが嫌いなのではなく、男と添い遂げるのが嫌いなのではないだろうかと、エルフ三姉妹と社会派紳士は勘ぐる。そしてクリちゃんはラヴ姉さんを取られないか心配する。











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