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第125話  実家に帰ろう! その16



「みんな行くわよ!」

「行こう!」

「あいよ~」

「巻き込まれる前に!」

「おばちゃん頑張れ! 砂魚とばをいつか買いにきます!」


 実家から飛び出した時のように、海岸の砂浜に向かって走る。一度、視界と脳がブレるような感覚をもう一度体験する。それは魔法で森がカモフラージュされているからだ。


(これがあったって事はもうすぐだ!)


 木々をかき分けるようにして砂浜へ飛び込む。何事かとアウローズたちが怪訝な目をして俺たち五匹を迎え入れる。


「バルバートさんは!?」

「旦那? 旦那はいるけど、どうしたってんだ?」

「バルバートさ~ん!」

「……どうした慌てて」

「出航! バルバートおっちゃん出航!」

「早く出航しないと血の雨が降ります!」

「な、なんだ? お前達何かあっ……」


 その瞬間強烈な爆発音と共に森の一部から煙が出る。それを見たバルバートさんは状況を察知し、船員であるアウローズに指示を出す。


「お前達! 仕事だぁ!」

「「「「「 お~! 」」」」」


 手際よく出航の準備に入るアウローズ。俺たち五匹も流れるようにして乗船する。そしてまた鳴り響く爆発音。


「ズーキ! 後で説明してもらうからなっ!」

「アウロ! あぁ! 任せとけ!」

「マジかよ…… エルフとつがいにになる俺の夢が……」

「ヤコブあんた…… そんな事を考えてたの……?」

「俺も…… もしかしたら、もう一回やり直せるんじゃないかって……」

「ベルギィさん…… ごめんなさい……」

「いいんだよエルモアちゃん。これも俺の運命さだめさ……」

「おっ でも新しいエルフちゃんがご登場だぞ?」

「お世話になります。クリネックスです」

「フレイ。ちょっかい出すと娘さんに嫌われるぞ?」

「しないってノカラ」


 上陸して一週間も経ってないのに、仲間達との他愛ない会話がこんなにも安心するとは感激だ。社会派紳士は仲間を集う。


「出るぞーーー! 出発でっぱつだーーー!」

「「「「「 おー!!!!! 」」」」」

「「「「「 お~!!!!! 」」」」」


 ネピアが魔法で帆に風を当てる。ゆっくりとだが次第に速度に乗っていく。あわただしかった出来事ではあったが、今思うと思い出の連続でもあった。


「あ……」

「あれ……」

「エリエールさん……」

「キノコ鍋美味しかったよ~!」

「行ってきま~す!」


 エリエールさんは仁王立ちするように娘達とその仲間を暖かい目で見守っているように感じた。側には膝を立てて座るコットンフィールのおばちゃん。互いに無事のようだった。


「ほら…… エルモアもネピアも……」

「は、はい…… お母さ~ん! 行ってくるね~! 絶対レベルアップして帰ってくるからぁ~!」

「母さ~ん!  最強最高の魔法士になって帰ってくるね~! それと絶対漫画捨てないでね~! 」


(ネピアに同意)


 ロリフターズの母という事で群がるアウローズ。妻帯者であるアウロとノカラですら見惚れる程の美人妻。各々、興奮冷めやらない状況で話し合っていた。


「ず、ズーキ?」

「ん?」

「あの美しいお母様のお名前は?」

「エリエール様」

「「「「「 お~ 」」」」」

「様ってのがまたいいなぁ~」

「久しぶりに見惚れちまった」

「俺も妻がいるのに……」

「あぁ…… 精霊の国に上陸出来ていたら……」

「ヤコブはどっちにしても三ヶ月だろ? いや三秒だな?」

「お前だって期待してただろ……」

「俺が悪かったよ……」

「いいさ……」

「ヤコブ……」

「「(ギュッ)」」


(おっさん同士の抱合だけどある意味美しいかもな……)


「んでどうしたってんだ? ズーキ?」

「あぁ…… エルモアとネピアの実家に帰ってたんだ」

「それであんな風になるのか……?」

「強く気高い美人妻……」

「最強最高か……」

「はぁ~」

「奴隷ってのがバレちゃってね」

「エルモアちゃんとネピアちゃんが奴隷だったって事が原因?」

「そっ それだけじゃないんだけどね」

「お母さんは家名を汚す者を一番嫌うんです。それに見合った行動をしていないと…… 血の雨が降ります……」

「そ、そうなんだエルモアちゃん」

「ち、ちなみに家名は?」

「ブラッドレインです」

「「「「「 …… 」」」」」


(黙るしかないよな……)


「あ、そ、そうだ。新しいエルフの娘がいたよな? クリネックスちゃんだっけ?」

「本当にお世話になります」

「私の親友なんだから変な事したらぶっ飛ばすわよ」

「し、しないって」

「特にヤコブ」

「お、俺かよ!? フレイとベルギィだっているだろ!?」

「あんたが一番ちょっかい出しそう」

「隊長だってノカラだってエリエール様に見惚れてたんだぞ!? 俺だけじゃない!」

「大丈夫ですよヤコブさん。信じてますから」

「エルモアちゃん…… エルモアちゃんだけだよ、俺の事そう言ってくれるのは……」

「あ~ エルモアに近づかないでもらえますか?」

「てめぇ! ズーキ! 話がまとまり掛けたところで!」

「あはは~ ヤコブ信用無し!」

「うるせ~ラヴ! この金無し!」

「うわ~ん! ヤコブがいじめるよ~!」

「ラヴ姉さん? 百万クイーン絶対に返してもらいますからね?」

「そんなぁ~! うわ~ん!」

「そんなって…… ちなみに金利分増えてますから……」

「ヒドいよ~! うわ~ん!」


 いつも通り甲板に膝をついて両拳をバンバンと打ち付けているラヴ姉さん。それを慰めるクリちゃん。ラヴ姉さんは変わらずバンバンしながら、疑似エルフ耳をピコピコ器用に動かしながら悲しみを盛大にアピールしていた。


「おいラヴ」

「うぅ……」

「なんだその耳?」

「いいでしょ!? 疑似エルフ耳! 似合ってる!?」

「「「「「 …… 」」」」」

「何か言ってよ~!」

「あぁ…… 別に違和感ないというか……」

「普通だな」

「そうだな」

「見新しい感じはしないな……」

「ピコピコ動いていたから気になっただけだぞ?」

「ここでもヒドい扱ぃ~! 二つで一万クイーンもしたのに~!」

「……お前三百クイーンしかもってなかったろ?」

「ズーキくんくれた! 二万クイーン!」

「あげてません」

「うわ~ん! ヒドいよ~!」

「ヒドいのはどっちですか…… 全く……」


 舵を取っていたバルバートさんが甲板に降りてくる。どうやら航海は今のところ順調のようだ。鋭い眼差しで俺たち五匹を見る。


「で…… どこへ行くんだ?」

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」


 考え無しの五匹は勢いだけで生きている。だが勢いがあったからこそ今現在、生き延びられているという事実。生命の尊さや儚さを考えると、不意にスコッティさんの顔が透き通る空に浮かび上がった。











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